消費者のビール離れが続いています。
ビール大手5社が10月12日に発表した発泡酒などを含むビール類の7月から9月までの出荷量は1年前と比べて4.2%減少しました。この期間としては7年連続で過去最低を更新しました。
内訳はビールが4.3%、発泡酒が7.4%、第3のビールが2.8%とそれぞれ減少しています。
何故これほどまでに減少しているのでしょうか?
実はビール業界にとっては今年は例年にない厳しい逆風が吹いていました。
ビール不振のワケ【安売り規制】
過度な安売りを規制する改正酒税法が6月に施行。ビール類の店頭価格は1割ほど上昇しました。
ビール不振のワケ【天候不順】
8月は記録的な長雨。9月は台風に見舞われた日本列島。
ビール業界にとって書き入れ時の夏場に苦戦を強いられました。
ビックロ ビックカメラ新宿東口店
Wパンチとなったビール売り場。
ただ、こちらの量販店ではさほど売り上げに影響はなかったといいます。
そのワケを大宮友紀店長は、
こちらが拡大した海外ビールのクラフトビール。
ビックカメラでは8月に取り扱うクラフトビールや海外ビールを倍の約200種類に拡大しました。
売れ筋はフルーツ味のビール。
カラフルな瓶が女性に人気です。
海外ビールの価格は国産ビールの2倍以上と値は張りますが売れ行きは好調といいます。
拡充したクラフトビール、海外ビールを全面に打ち出すことで単価が上がっている。
ブランド別販売量
ビール大手4社の主力商品、キリンの一番搾り、サントリーのザ・プレミアム・モルツ、サッポロの黒ラベル、そしてアサヒのスーパードライ。
これらの4月から9月の販売量を1年前と比べると、今年の5月は改正酒税法施行前の駆け込み需要がありキリン以外の各社は売上・販売を伸ばしています。
ただ6月に法律が施行されると販売価格も上がったことで徐々に下がっていきます。
そこから先は全体的に横ばいの状態、伸び悩みの状態が続いています。
業界2位のキリンビールは今年一番搾りをリニューアルして8月下旬頃から店頭に並び始めています。その影響もあって伸び始めています。
一方、シェアトップのアサヒビールは前の年よりマイナスが続いています。
ビール各社の販売量が落ち込んだ分がどこに回っているかというと、それがRTD、いわゆる価格の安いチューハイ・ハイボールに人気が集まっています。
RTDの市場推移は右肩上がりですで5年前に比べると1.5倍に伸びています。
このビール類をめぐる環境の変化、消費者は実際にどう感じているのか?
晩杯屋 武蔵小杉本店
都内を中心に展開する居酒屋チェーン。
その最大の売りは安さ。お酒は250円から、また、つまみのメニューには100円台のものがずらりと並びます。
注文を紙に書いてもらうことで人件費を削ったり、おしぼりを有料にしたりとさまざまな工夫で価格を抑えています。
そしてこの店で一番人気の飲み物が「焼酎の緑茶割り」。
その理由は価格にあります。緑茶割りが290円なのに対し生ビールは410円。ビールは原価が高いため価格を下げることは難しいといいます。
お客様に最近のお酒事情を聞いてみると、
外ではビールを飲むが家ではチューハイ。奥さんがビールは高いからチューハイにしなさいって言う。
私はビールが得意ではない。周りの若い人はハイボールとかレモンサワー。
「何を飲んでいる?」
チューハイ。プリン体がないから、僕は痛風なので。
アサヒビール株式会社
こうした中、アサヒビールは業務用のスーパードライなどを来年3月から値上げすると発表。
ライバルもこれを追うという見方が強まっています。
晩杯屋で取り扱うのはキリンビールですが、仮に原価が上がっても工夫を重ね価格は維持すると決めています。
晩杯屋を営むアクティブソースの鈴木悠理総務部長は、
酒税法の改正で6月に原価が上がったが弊社は値上げをしなかった。今後も企業努力を続けてお客様に喜んでもらうために頑張りたい。
お酒の多様化が進む中、ビールの行く末はいかに?
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