先週、みずほフィナンシャルグループが傘下のみずほ証券を通じて楽天証券へ2割出資することが明らかになりました。出資金額はおよそ800億円と見られていて、7年ぶりの大型投資となります。実は今回の例だけでなくここ最近、メガバンクが相次いでネット系金融に出資し、関係を深める事例が増えています。いま金融業界で何が起きているのでしょうか、追跡取材しました。
メガバンク"ネット証券"と提携
全国230ヵ所にリアル店舗を構えるみずほ証券。そのルーツは150年前に遡る老舗証券会社です。
宇井五郎記者

みずほグループの楽天証券への出資、その狙いは対面とオンラインのハイブリッド型のコンサルティングサービスにあるといいます。
どういった形を目指すのか、みずほ証券渋谷支店を取材します。
1階はATMが置かれている銀行ですが、柱の裏には「みずほ証券」「みずほ信託銀行」などグループ会社が1つの拠点に収まっているのが特徴です。
なので遺言信託や遺産整理業務などいろいろな商品が置かれています。
グループ内に銀行や信託銀行も持つみずほ。そして、最大の特徴ともいえるのが対面での投資相談です。
投資歴およそ30年という女性。時々相談に訪れるといいます。
みずほ証券 営業担当
弘澤緋色さん

投資信託は9月に結構下げて、現状ではマイナスのものが多い。
連続増配企業"配当貴族"といわれる銘柄で運用していくのも一つ。
みずほは今後、楽天証券の顧客にも対面でのコンサルティングを行うことを検討しています。
お客さん

対面で紹介してもらって内容を聞くと自分の知識が浅いことが分かる。
一度、証券会社の人と話をする機会を持つのはいいことだと思う。
一方、みずほ証券と対称的な存在といえるのが店舗を持たないインターネット専業の楽天証券です。
楽天
三木谷会長兼社長(当時)

新しく楽天証券としてスタートすることになった。
積極的な投資家以外にも幅広い層を顧客として取り込んでいく。
楽天は2003年にDLJディレクトSFG証券を買収。翌年、楽天証券が誕生しました。
取引手数料の安さなどを武器に利用者数はおよそ20年で急激に増加。口座数で見ると楽天証券は同じくネット証券のSBIとともに野村證券をすでに上回っています。
街の人は…
番組スタッフ
証券口座は何を持っている?

40代

ネット証券。人と話をしたりするわずらわしさがない。
40代

ネットだと好きな時間に申し込みたいときにすぐできる。
窓口だと時間の制限がある。
若い世代では圧倒的にネット証券の利用者が多く、その流れは年々加速。最近では高齢者層でもネット取引の割合が増えているのです。
異なる強みを持つみずほと楽天の提携。狙いは対面とオンラインのハイブリッド型のコンサルティングサービスだといいますが、専門家の分析は…
金融が専門
東洋大学
野崎浩成教授

みずほFGの「銀行も持っているし、信託銀行も証券会社も持っている。非常に豊富な商品群があって提供できますよ」というのがメガバンクや大手証券など既存のプレーヤーの発想。
シナジーに関しては双方にそれほど大きいものはなかなか感じられない。
先週発表されたみずほフィナンシャルグループによる楽天証券への巨額出資。その2社のシナジーに疑問を投げかけるのが東洋大学の野崎教授です。
金融が専門
東洋大学
野崎浩成教授

提携の一つの眼目として示されているのがデジタルとリアルの融合、ハイブリッド型のモデルといわれている。
ただ楽天証券はIFA=独立系アドバイザーのアドバイスを受けられるので、すでに融合している。ハイブリッド型に。
楽天証券にはすでにファイナンシャルアドバイザーへの相談サービスがあるため相談のニーズは低いのではないかというのです。
それを知りつつも、なぜみずほは楽天証券に出資したのでしょうか。
金融が専門
東洋大学
野崎浩成教授

SBIグループと三井住友FGとの提携が起爆剤となった。
実は同じくネット証券大手のSBI証券には今年7月に三井住友フィナンシャルグループが出資。
また三菱UFJフィナンシャルグループにはネット証券のauカブコム証券もあり、みずほには焦りもあったのではないかといいます。
一方、楽天側が出資を受け入れた理由については携帯事業への巨額投資との関連を指摘しました。
金融が専門
東洋大学
野崎浩成教授

楽天グループ全体で考えると財務健全性に対するサポートとして、外部からは「みずほがちゃんと後ろについている」と認識される。
みずほと楽天の今回の資本提携。同床異夢との否定的な味方を超えてシナジーを生み出すことはできるのでしょうか。