
益子焼
栃木県・益子町。週末恒例の青空市が開かれていました。
ズラリと並ぶのは益子焼。
益子焼は江戸時代から受け継がれる伝統工芸。ゴツゴツとした土の風合いを生かした素朴な印象が特徴です。
一方で最近では作家による独創的なデザインも誕生。新しいファンを魅了しながら日々変化を遂げています。
しかし海外の安い食器に押され売り上げはこの20年で3分の1以下に落ち込みました。
益子町
3月23日、益子町の施設に陶芸家や町の職員たちが集まっていました。
町を上げた挑戦が大きな壁に直面していたのです。
継続してアメリカで本当に商売をしていくのかどうか。
近年、世界は和食ブーム。そこに目をつけた益子町はアメリカへの輸出に活路を求めようとしています。
2017年2月にはニューヨークで初の商談会を開催。関税がなくなるTPPは追い風のはずでした。
しかし就任早々、トランプ大統領はそのTPPからの離脱を決めたのです。
アメリカの労働者にとって素晴らしいことだ。
益子町で輸出の窓口になるのが栗谷昌克さん(41歳)。
益子焼として海外に向けて発送する意識を高めつつ、実績を積み重ねることが必要。
今後の輸出に意欲を見せます。
ところが、
キャンセルする場合もあるんでしょ。作っちゃったのに。
絶対にないとは言えない。リスクを持っての取り組みになる。
トランプ大統領が伝統工芸の町に暗い影を落としていました。
有限責任事業組合オフィスましこのね
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町内にある「オフィス ましこのね」。
2016年5月に栗谷昌克さんが中心となって設立した会社です。
ここが益子焼の輸出の窓口。販売サイトを5つの言語に対応させるなど準備を進めています。
ちょうど関税の情報が送られてきた。関税率で計算すると0.7~28%。最大で28%は覚悟として持っていないといけない。
栗谷昌克さんは町内の益子焼を取りまとめ、輸出する仕組みを考えています。
しかしTPPがなくなったことで手数料や送料に加え、関税が残りました。28%の場合、アメリカでの販売価格は日本の2.5倍になる計算です。
高い。何でなのかと聞きたい。売るなと言っているのか。
岩下製陶
4月3日、栗谷昌克さんはある益子焼の窯元を訪ねました。
岩下製陶。150年の歴史を持つ老舗です。
6代目の岩下宗晶さん、ろくろを使いひとつひとつ丁寧に作っていきます。
アメリカ向けに開発したコーヒーカップ。販売価格は一客5,000円。
栗谷昌克さん、この日は関税にどう対応するか話に来ました。
手数料、送料があって、さらに関税がある。
TPPがなくなったので、ないものとして考えないと。いかにこっちはしっかりと物を作るか。
作家性の高い商品は価格が高くても売れる可能性はあります。しかし、そうはいかない商品もあるのです。
益子焼窯元共販センター
益子町最大の販売店、益子焼窯元共販センター。
約100社から仕入れた益子焼が並びます。その数ざっと10万点。
この店の社長が鍛冶浦豊さん(54歳)。
うちは飲食店に使ってほしい。大量に。作家は「一点もの」、お客様は気に入ったものだけを買うが。継続的に使ってもらいたい。
この店で扱うのは窯ものと呼ばれる大量生産された益子焼。飲食店での食器や家庭での日常使いを想定した手頃な価格が特徴です。
これで1,230円。
比較的安いですね。2.5倍くらい、やはり3,000円近くなる。高いですよね。
関税がかかると手頃な日用品が手を出しづらい高級品に変わってしまうのです。
栗谷昌克さんとの打ち合わせ後、鍛冶浦豊社長はすぐさま電話を掛けていました。
向こうの税関で考えるということ? 税率を。
相手は海外展開を支援するJETRO(日本貿易振興機構)。関税率0.7%から28%という大きな幅について問い合わせていたのです。
税金は最大28%で、向こうの税関の人にもよる。どういう判断をするか。ジェトロもよく分からないみたい。
関税率はアメリカの税関次第。全く先が読めません。
共販センターは1966年、23の窯元が共同で設立。益子焼の発展を担ってきましたがこの20年で売上は激減しました。
厳しい経営状況の中、益子焼の作家だった鍛冶浦豊さんが6年前に社長に就任。
リストラを含めたコスト削減を断行し、なんとか店を維持しているのが現状です。
後継者もいるので、若い人が焼き物をやりたくなくなるのは困る。将来の益子を考えたら海外輸出を考えないといけない。
鍛冶浦製陶所
4月6日、鍛冶浦豊さん自らが経営する鍛冶浦製陶所。
親兄弟で切り盛りする家族経営の窯元です。
1年間で約5万個の益子焼を製造。その半分近くを共販センターに納めています。
製造には型を使います。中に土を入れるとアッという間に器のカタチに。
手間を限界まで省くことで大量の益子焼を安く作れるのです。
鍛冶浦豊さんが試作しているのはアメリカ向けの商品。少しでもコストを下げ、現地での価格を抑えたいと考えていました。
サラダボール。
角を立たせないように、なるべく丸めて。
もうちょっと?
角が立っていると欠けやすい。外国は食洗機を使うので。
これまでは軽さを出すため薄く作っていました。しかしアメリカの強力な食洗機にも耐えられるよう改良します。
硬い。
いっぱい水をつけて。
縁を厚めにしますが思いの外、時間がかかっているようです。
日本向けは1,980円、一方、縁を厚くしたアメリカ向けはこれまでより手間がかかるためコストがかさみそうです。
うちではこれ以上コストを安くできないよな。外国だと値段が倍になっちゃうんだよ。
どうなるんだろう。
窯元で今より卸価格を下げることはできません。鍛冶浦豊さん、どうするのか?
トランプ大統領
トランプ大統領が決めたTPPの離脱。関税の撤廃が白紙となりアメリカに益子焼の輸出を考えていた鍛冶浦豊さんは追い込まれていました。
益子町にある鍛冶浦豊さんの家。
またニュースが飛び込んできました。アメリカ軍によるシリア空爆。
何にも予告もない、前触れもない。その辺はびっくりする。私たちもそれに合わせて輸出を考えないといけない。
政治も経済もトランプ大統領の決断ひとつで大きく揺れます。
益子焼窯元共販センター
再び益子焼窯元共販センター。
アメリカでの販売価格を少しでも安くするため鍛冶浦豊さん、ある覚悟を決めました。
全ての仕入れ値を教えて。それで判断する。
関税に打ち勝つ手立ては見つかったのでしょうか?
覚悟
4月10日、益子町の飲食店。鍛冶浦豊さんがやって来ました。
集まっていたのは益子焼の関係者たち。輸出に向けての作戦会議です。
窓口を担当する栗谷昌克さんの姿も。
どうやったら安くできるかと言われ続けている。
海外との取引を続ける中、やはり価格が一番の課題だと訴えます。
鍛冶浦豊さん、すでに腹をくくっていました。
原料が上がっている時代に窯元で値段を安くするのは難しい。我々販売店が掛け率を落として、利幅は少ないけど数を出す。
数を出すことが大事ですよね。
自らの利益を減らしてアメリカでの販売価格を下げることにしたのです。もはやこれしか方法がありませんでした。
その分、栗谷君でいっぱい注文を取れるシステムを。
抑えるところ抑えて出せば、買ってくれるところは増える。小さな取引先をいっぱい見つけて、日常的に輸出するかたちをとれればいいと思っている。
トランプ大統領のTPP離脱に翻弄される焼き物の町。一丸となってこれからも挑戦を続けていく覚悟です。
毎日のニュースを見ると本当に何が起きるか分からない。流されて、それに合わせて商売をやっていかなきゃならない。
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