政府与党はいま外食などのサービス業について屋内は原則、全面禁煙とすることを柱とする受動喫煙防止対策の強化案を3月に国会に提出する調整を進めています。
厚生労働省の推計ではタバコの受動喫煙による死者は年間1万5,000人とされていて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催までに受動喫煙防止対策を強化することが狙いです。
しかし外食産業などからは反発の声なども上がるなど賛否が分かれています。
受動喫煙防止対策
東京都内のハンバーガーショップ「バーガーキング六本木店」。
165席の内、38席が喫煙席です。禁煙の席とガラスで仕切られた禁煙席がある完全分煙になっています。
実はいまの受動喫煙防止対策では飲食店の分煙について「必要な措置を講ずるように務めなければならない」とあるだけで罰則などはありません。
飲食店はそれぞれの判断で対策を講じてきましたが、その規制が強化されるのです。
厚生労働省は2016年10月、その強化策のたたき台を示しました。
飲食店などは原則建物内禁煙とし飲食ができない喫煙室での喫煙のみ可能。違反した店には罰則もあります。
このたたき台の内容に動揺したのが喫煙するお客様が多いバーなどの業態です。
「Bar Sumica」ではお客様の8割が喫煙者。新たに喫煙室を作ることは難しいといいます。
オーナーの小松里紗さんは、
現実的に費用やスペースの面で今の状態から新しく喫煙室のスペースを設けるのは厳しい。
全面禁煙が義務化された場合の売り上げへの影響を心配しています。
「お店としても痛い?」
痛いですね。お酒が進むと同時にたばこが進む方もいる。そういった面で売り上げも少し心配。うちのようなバー業態や、たばこを吸うお客様がほとんどの場合はもう少し配慮してほしい。
厚生労働部会
そして2月15日、受動喫煙防止対策の強化案を話し合う自民党厚生労働部会が開かれました。
飲食店などサービス業について建物内は原則全面禁煙にする案に関し関係団体から意見を求めました。
出席した日本フードサービス協会の菊池唯夫会長は「飲食店の営業に支障がでる」などとして反発。
今の規制強化の案は厳しすぎる。日本の分煙はかなり進んでいる。喫煙・禁煙、二者択一ではなくもう少しいろいろな道を探るべき。
一方、日本医師会の今村聡副会長は、
事業者が今回の法律を心配しているのは理解しているが厚生労働省の案がどんどんゆるんでいくことは国民の健康増進の視点から望ましくない。
賛否が分かれる関係団体。自民党内でも意見が分かれていて落とし所はまだ見えていません。
IQOS(アイコス)
そんな受動喫煙をめぐる議論の中で注目を集めているのが世界最大のたばこメーカーフィリップ・モリスが開発した加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」です。
2016年4月に全国販売を開始。すでに300万台を売り上げるヒット商品となりました。
使い方は専用のたばこを加熱器に差し込みます。火は使わず電気でたばこを温めます。ニコチンが入った蒸気を発生させ、それを吸う仕組みです。
たばこの葉を燃やさないため有害物質を多く含む煙が出ず、フィリップ・モリスは「有害性成分を約9割カットした」としています。
加熱式たばこ
加熱式たばこの最大の特徴は煙が出ないことです。
紙巻たばこと違い煙に含まれるタールなどの有害成分を大幅に減らすことができるそうです。
現行の受動喫煙の定義というのは「室内またはこれに準ずる環境において他人のたばこの煙を吸わされること」となっています。
ですので煙を出さない加熱式たばこをどう扱うのか、まだはっきりしていない状況です。
ニコチンなどを含む蒸気を吸い込んだ使用者の吐く息が周りの人の健康にどんな影響を与えるのか現在検証が進められている最中です。
その議論の行方を睨みながらも煙を出さない加熱式たばこの開発競争がすでに熱を帯びています。
アイコス追撃へ!JTプルーム・テックの秘策!
日本たばこ産業株式会社
IQOS(アイコス)が切り開いた加熱式たばこの市場。
これを追撃するのが国内最大手、JT(日本たばこ産業株式会社)です。
日本たばこ産業株式会社が2016年に福岡市にオープンした販売店「Rethink Books」。オープンは午前10時ですが8時には長蛇の列が。
お目当ては日本たばこ産業株式会社が開発した加熱式たばこです。
においがしないのがいい。
ペンのようなカタチをした日本たばこ産業株式会社の加熱式たばこ「Ploom TECH(プルーム・テック)」です。
Ploom TECH(プルーム・テック)
粉末状に加工した煙草の葉が入ったカプセルを加熱器にセットします。
煙草の葉自体は加熱せず中の液体を電気で沸騰させ蒸気を出します。たばこの葉の入ったカプセルを通ってきたその蒸気を吸う仕組みです。
日本たばこ産業株式会社は「においも少なく、紙巻きたばこの煙に比べて有害性成分を99%を軽減した」としています。
日本たばこ産業株式会社はプルーム・テックを6月以降、順次東京でも販売し先行するアイコスを追撃します。
GARB LEAVES
このプルーム・テックに期待を寄せるのが飲食店です。
「GARB LEAVES」は店内は禁煙ですが、そこでプルーム・テックを吸っている人がいました。
周りにはにおいがしていない気がする。
たばこを吸われるくらいならこれの方がいい。
この店では1月からプルーム・テックだけ吸えるようにしたのです。
においの少なさが決め手でした。
GARB LEAVESの土井淳矢さんは、
たばこの香りが全くしなかったので、これならいけると思った。
The Company(ザ・カンパニー)
日本たばこ産業株式会社は福岡市でプルーム・テックなら吸っても良い施設を増やすよう仕掛けているのです。
「The Company(ザ・カンパニー)」は約70社が契約するシェアオフィス。
ここにはプルーム・テックを吸いながら会議に出席している人がいました。
煙も出ないしいいなと思った。
日本たばこ産業株式会社
日本たばこ産業株式会社の呼び掛けで福岡市内ではプルーム・テックだけ吸ってもよい施設が50ヶ所近くまで増えました。
国内の喫煙率は男性では1965年の82%から2016年は29%まで下がっています。
日本たばこ産業株式会社にとって加熱式たばこは国内たばこ事業の生き残りを掛けたものなのです。
小泉光臣社長は、
加熱式たばこは2017年12月には日本のたばこマーケット全体の約15%までいくのではないか。10年戦争が始まったとば口(入り口)が2017年~2018年とみている。
2003年に定められた現行の受動喫煙防止対策では加熱式たばこは想定していないため、いま議論されている強化策で規制の対象になるかどうかが焦点です。
ブルーム・テックの商品特性を考えると現在の法律の「たたき台」で紙巻きと一様に検討されるのはいかがなものか。冷静にデータを持ち寄りながら時間をかけて社会的コンセンサスをつくっていくべき。
日本たばこ産業株式会社は加熱式たばこを新たな規制の対象から外すように要望しているのです。
これに対し政府は2月10日、加熱式たばこを新規制の対象に加えない可能性もあることを初めて示唆しました。
塩崎恭久厚生労働大臣は、
いま議論しているなかで法律として、これを書き込むことはまだ予定していない。今後の加熱式たばこの健康影響に関する研究により何が問題なのかを踏まえた上で考えていかなければいけない。
政府は3月の法案提出時には加熱式たばこの扱いについて判断を見送り法の施行までに判断したいとしています。
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