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[WBS] リーマン・ショックから10年!中国の完成しない超高層ビルの謎!

ワールドビジネスサテライト(WBS)

世界経済を混乱させたリーマン・ショックから10年です。

特別企画の2回目となる今回の舞台は中国です。

こちらのグラフをまずはご覧ください。

2008年にはおよ5兆ドルだったものが2017年になるとおよそ24兆ドルと5倍ほどに膨れ上がっています。

これは中国の民間債務残高、つまり企業や個人の借金の額です。

今後、不動産価格が大幅に下落したりするとこの借金を返せなくなって金融危機が起こる可能性があると指摘されています。

中国各地にくすぶる異変を取材しました。

天津市

中国有数の都市「天津市」。

高層ビルが立ち並ぶこの街に異変が生じているといいます。

案内してくれたのは天津市に住んで14年、飲食店を経営し、街の事情に詳しい羽深剛志さんです。

街の中心部から少し外れたところに行くと見えてきたのは…

正面に見えていますが。

一棟だけ異常に背が高い。

目の前にそびえ立つ超高層ビル。

元々ここは何もなかった場所。開発しているということ。

東京スカイツリーを見上げているような感覚。

久しぶりに来たが、その時からほぼ変わっていない印象。

3年ぐらい止まっている。

未完成のまま放置されているというのです。

こちらの高層ビル、2008年に着工。

地上117階、高さ597メートルという中国で2番目に高いビルとして2016年に完成予定でした。

300億元、およそ4,800億円が建設費用にあてられています。

そしてビルのすぐ横にはマンションらしき建物が並んでいます。

ここにも作業員はいません。

まるで廃墟のような光景です。

一体何が起こっているのでしょうか?

国が進める環境対策の影響を受けて、工期が伸びれば伸びるほど資金がどんどんかかって資金ショートしてしまった。施主が。

富国高銀サービスセンター

この一帯のビルとマンションの建設を進める不動産開発会社「富国高銀サービスセンター」のオフィスへ向かいました。

そこに完成イメージを再現した模型が…

タワーは現実と違い光り輝いています。

金がないなどいろいろ噂があるが本当に金がないわけではない。

「なぜ工事が止まった?」

以前の地区リーダーがこのプロジェクトを支持していた。

彼が去り新しいリーダーは前の政策を全て否定した。

天津市内では高い建造物のおよそ1割がストップしているとの報道も…

そこには中国政府の動向が大きく影響しています。

2007年、中国に現地法人を立ち上げた三菱UFJ銀行。

現地企業との取引を積極的に増やしています。

国際事業を統括する吉川英一副頭取は、

中央政府は気にしている、質の悪いプロジェクト。

過剰な投資、質の悪い投資を排除しようと投資に対する引き締めが行われたり、資金が狭められる政策が打たれる。

そういったもの(建設が止まるプロジェクト)が発生する。

景気刺激策

2008年、リーマン・ショックによる金融危機が世界中を駆け巡りました。

そんな中、中国政府が海外輸出の急激な減速に対応するため実行したのが4兆元、日本円で52兆円にあたる景気刺激策です。

交通インフラや公共住宅の整備などにお金を回し国内の需要を活性化させたのです。

しかし、その特需を狙い企業は過剰な設備投資を行い、中国各地で中身の乏しい都市開発が実行されました。

その影で企業が生み出した民間債務は大きく膨れ上がったのです。

政府が大きな投資をして、民間もお金を借りて景気を浮揚させた。

世界経済にとって非常に良かったが副作用がある。

過剰生産や過剰債務で不況を生むこともある。

中国政府は企業の債務を抑制するための新たな数字目標を発表。

9月14日に会見を開きました。

毛盛勇報道官は、

中央政府は数年にわたってこの債務抑制政策を維持すると思う。

リスクを防ぐことは中国経済が持続的に速く健全に発展するための条件をさらに良くするものだ。

そしていま政府が進めるのが銀行などの支援で生き残ってきたゾンビ企業の排除です。

ゾンビ企業の排除

中国の東に位置する地方都市、山東省日市。

そこにあった大きな工場、油の製造工場です。

半年間しか働いていない。工場についてはわからない。

「ここに来てから工場が動いたことは?」

ない。

しばらく工場は動いていないといいます。

人気がない施設はここにも。

貨物を運搬する基地のようです。

トラックがずらっと並んでいます。人気は全然ありません。

そして大きいスペースの真ん中に毛沢東元主席の石像が大きく立っています。

そこに1台の車がやってきました。

施設の関係者なのでしょうか?

この会社に部品を納めている。代金未払いのまま何年もたっている。

実はこれらの施設を手がけていた会社は7月に経営破綻しました。

1994年に創業した三東晨曦集団は国内最大の大豆輸入会社として成長。

ガソリンの精製など事業を広め、ピーク時の売上高は年間769億円、およお1兆3,000億円に達しました。

しかし畜産向けの大豆の需要が低迷するなど業績が悪化。

さらにアメリカとの貿易戦争で大豆の輸入コストが増加したことが破綻の決め手になったといいます。

地元の住民は、

中国企業の共通した病。借金が多すぎる。

新しい借金をして前の借金の返済にあててきた。

中国の裁判所の破産申請の受理件数は2015年の3,568件から2年でおよそ3倍に急増。

中国政府は銀行などに過度な融資を抑えるように働きかけ、ゾンビ企業の排除が加速しているのです。

「中国政府の動きはいまどういう局面に入っている?」

過剰債務や構造問題が発生している。

中長期的には、この問題に取り組まなければいけないと思っているはず。

いろいろな短期的な問題が起こり、貿易戦争が中国経済の足を引っ張るのではないか。

景気浮揚に軸足を置いて中長期的な問題を先送りしようと考えているようにも思われる。

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