世の中にある優れた商品を集めて販売するのが百貨店ですが、その最大手「三越伊勢丹ホールディングス」が京都の伝統工芸の若手職人とタッグを組んで新たなモノづくり事業を始めます。
斜陽とも呼ばれる伝統工芸の世界で売れる商品を開発できるのでしょうか?
株式会社三越伊勢丹ホールディングス
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2016年5月24日、京都府と三越伊勢丹ホールディングスが伝統工芸の職人向けに開いた説明会「京ものクオリティ市場創出事業 京都府×三越伊勢丹ものづくり事業 事業説明会」が開かれました。
商品統括部の江坂元秀MD戦略部長は
バイヤーと連携し伝統工芸の皆さんの優れた価値を新しい形にして提案できるようにしたい。
百貨店と職人が組んで商品開発を進めるというプロジェクトです。
伝統工芸は売上の減少や後継者不足で斜陽の時代。
定員60名の会場は満席になりました。
西陣織の職人さんは
もうかるものではないので続けていくのはしんどいが、よりお客様の求めるものを作れるのではないか。
金属工芸の企画担当者は
自分たちで販売、作るだけではどうしても広がっていかない。
お客様のニーズを知る株式会社三越伊勢丹と組むことで「売れるモノづくり」への期待を寄せます。
バイヤーはお客様の声を代表してやるので目線を変えて作り替えたら、新たな独自性のあるものが生まれるかもしれない。
株式会社三越伊勢丹も従来のように既存の商品を選んで販売するだけでなく一から商品開発をして他社との差別化を図る考えです。
洸春陶苑
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説明会に参加した清水焼職人の高島慎一さん。
私の商品を見て頂いて良いとか悪いとか聞いた上でこれからどうしていこうと。
高島慎一さんの作業場は京都市東山区にある洸春陶苑です。
そこで作っているのが400年以上の歴史を持つ清水焼です。
青や黄色を使った鮮やかな色合いと絵柄が特徴です。
古くから寺院などで生まれた独特の美意識が清水焼には表現されています。
高島慎一さんはある技を使って立体的な模様を生み出しています。
いっちんといって筆で描く。絵付けとはちょっと違う方法が特徴。
高島慎一さんが使うのは先端に小さな穴があいた袋です。
ここに粘土を水で溶いてペースト状にしたものがある。これを袋に入れて均等な力加減で搾り出して絵を描く。
搾る力が強すぎると繊細な模様は描けません。
逆に弱すぎると模様が器に定着せず、窯で焼いたとき剥がれてしまいます。
力加減には長年の経験が必要だといいます。
これに関して言うと手触り。つるっとしたプレーンな焼き物と違って必ず凹凸ができる。凹凸が手に当たって痛いようではダメ。心地よくあってほしい。
しかし肝心の売上は最盛期の3分の1ほどに落ち込んでいます。
年々、作品の質は上がっていますが売上は思うようには伸びません。
自治体の支援
これまで高島慎一さんは京都府など自治体の支援を受けてきました。
しかし自治体主導の方法では限界があります。
京都府商工労働観光部の水口宏城さんは
販売箇所の不足、できた商品を見せる機会がなく見本市に出してバイヤーが買えばいいが買わなければおしまい。
そこで京都府は新たに職人と百貨店を結びつけたのです。
これまでにない売れる商品を生み出したいと高島慎一さんは考えています。
今の情報ももちろん欲しいですけど、これからもっと先、これから先はどういうものが売れて、どんな時代が来るとか。そこに向かって僕らが新しいものを先を見て作っていきたい。