新型コロナの感染拡大で在宅時間が増えたことで電子レンジやオーブンレンジを使う機会が多くなった人もいらっしゃるのではないでしょうか。食材の温めや解凍など調理時間を短縮できる食卓の強い味方ですが、その一方でお肉の温まっている部分と冷たいままの生の部分が混在するといったムラのある状態になってしまって困るという声も多いようです。このムラを解消するために今開発が進む各社の新技術を取材しました。
コロナ禍で売り上げ1.5倍!レンジ利用者は「ムラ」に不満も
都内の家電量販店「ビックカメラ新宿西口店」。
宮崎文子記者

温め機能に特化したシンプルな電子レンジから高性能のスチームオーブンレンジまでいま各社メーカーが販売のピークを迎えています。
毎年夏から秋にかけて新製品が登場するレンジ。コロナ禍で在宅時間が増えたことで売り上げが前の年に比べ1.5倍ほど伸びた時期もあったといいます。
なかでも売れ筋なのが…
ビックカメラ新宿西口店
家電コーナー
李周海さん

今月発売の東芝の石窯オーブンレンジ。
メーカーの中で一番火力が強い。350度まで使えるのとセンサーが付いていて食材の温度をしっかり測って温められる。
強い火力で調理ができるという高性能のオーブンレンジが人気だといいます。
一方、現在家で使用しているレンジについてお客さんに聞いてみると…
お客さん

冷凍シューマイなど真ん中が解凍できてはしがダメな時がある。冷たい。
ムラがある、きれいにできない。
お客さん

ムラがあるのが嫌だ。それが一番。
解凍するときも温めるときもムラができてしまう。
ある調査によるとオーブンレンジや電子レンジを使う人の半数近くがムラができることに不満を持っていることがわかりました。
食品を浮かせて加熱?ムラを防ぐ新レンジとは
この調査を行った象印マホービンが7月27日に発表したのが…
象印マホービン新商品発表会

新商品の名前はEVERTINOです。
初めて自社開発したオーブンレンジ製品。炊飯器の開発などで培った温度管理のノウハウを生かしたといいます。
その特徴の一つが「うきレジ」という機能。
角谷暁子キャスター
「うきレジ」はどういう機能ですか?

象印マホービン
市川典男社長

具材をここに入れて天板の下に差し込む。
そうすると少し浮く。
少し浮かせることで全体の温度のムラをなくす。
なぜ浮かせることでムラを防げるのでしょうか。電子レンジで食材を温めるにはマイクロ波を使います。熱を発生させる装置がレンジの底にある場合、食品をレンジに直起きすると下の方にマイクロ波が集中するため上と下で温度にムラができやすくなるのです。
一方のうきレジは食品を浮かせることでマイクロ波がさまざまな方向から当たり均等に温めることができるとしています。
実際にうきレジ機能を使ってカボチャの煮物を作ってみるとおよそ10分で完成。熱の通り具合は…
角谷暁子キャスター

柔らかいです。ホクホク、ちゃんと均等に火が通っていてカボチャも芯の方まで柔らかくなっています。
目標は数年以内に10%以上のシェア獲得です。
象印マホービン
市川典男社長

オーブンレンジを使うお客様の不満を解消すればきっと売れるだろうと。
オーブンレンジは調理器具の中で一番大きな市場。
象印は炊飯器が主力だがそれに続く大きな象印の柱になっていく。
食材多くでもムラなし解凍!?冷凍弁当に宇宙弁当で挑む
一方、加熱ムラの解消に向けて宇宙技術を活用しようという新たな試みも。
マイクロ波をコントロールする独自の技術を化学メーカーなどに提供しているマイクロ波化学。JAXAと共同で月の氷にマイクロ波を当てて水に変えるプロジェクトを成功させた実績がある企業です。
ラボにある機械は電子レンジを再現したものだといいます。この機械を使って研究しているのが…
マイクロ波化学
研究開発部
貝原加奈子さん

食材がマイクロ波を吸収する能力に違いがあるので、その食材が加熱されやすく、加熱されにくいか確認することから始めている。
電子レンジ内に置く食材の位置だけでなく食材の特徴によっても温まりやすさは異なります。そのムラを抑える技術の開発をいまパナソニックと共同で進めているのです。例えば冷凍ピザの場合…
マイクロ波化学
研究開発部
貝原加奈子さん

トマトソースは今56度。パンやチーズは15~16度、温度差が出ている。
炭水化物であるピザ生地やタンパク質が多く含まれるチーズはマイクロ波が伝やすく温まりにくい食材。一方、水分や塩分を多く含む
トマトソースはマイクロ波が伝わりやすく高温になりました。
小川知美記者

温めたばかりの冷凍ピザですがこの部分は温めすぎてカチカチになっています。焦げています。
一方、チーズの部分はまだ冷たいです。すごい温度差を感じます。
そしていまムラの解消に重点を置いているのが冷凍してカチコチに固まった弁当の解凍です。
マイクロ波化学
研究開発部
貝原加奈子さん

お漬物やおひたしなど塩分が含まれる食材は温まりやすい。
フライや油はマイクロ波の吸収が低く温まりにくい。
食材の種類が多い弁当。全てをムラなく解凍することはとても難易度が高いのだといいます。このため冷凍食品に力を入れているコンビニやスーパーでも導入が進んでいないのが現状です。
そこでマイクロ波化学が研究しているのが食材ごとに最適なマイクロ波を当てる方法。弁当のバーコードから食材の配置情報を読み取り、それぞれに当てるマイクロ波の強さを調整するというものです。
番組スタッフ
研究の段階は?

マイクロ波化学
研究開発部
貝原加奈子さん

10%くらい。
高い効果が認められなければ。開発のハードルは高い。
早ければ来年の実用化を目指しているといいます。レンジ市場に新たな風を吹かすことはできるのでしょうか。