中国のテクノロジーの最先端をシリーズで伝える「中国Tech」。
新型コロナが中国で猛威を振るったのが1年前でしたが、その中国では新型コロナを機に医療現場でのAI(人工知能)の活用が進み、デジタルトランスフォーメーションが加速しています。

浙江大学医学院附属第二医院
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浙江省杭州市にある大学病院。

この病院でいま最先端のAIが医療現場で活用されています。ここは毎日3,000人分ものCT検査の画像を解析する放射線科の中枢です。

浙江大学医学院附属第二医院の張敏鳴医師、
この小さなしこりの場合、AIがなければ私でも最低3回見ないと発見できないが、AIだとシステムを起動するとすぐにデータが出てくる。

大学を卒業したばかりの医師は見落とすかもしれない。

画面に表示されているのはわずか1.5ミリの肺のしこり。ベテラン医師でも見つけるのに時間がかかりますが、AIは一瞬で見つけ出すといいます。

新型コロナの選別診断をたくさん行った。

この病院では胸部CTの診断にAIを導入。新型コロナ禍で積極的に活用してきました。

これは肺炎の部分。炎症部分を赤く示しています。

軽度の炎症を青、重度の炎症をピンクに色分け。

胸部の検査では通常200枚以上撮影し、それを医師が1枚1枚解析をしますが、AIは一瞬で解析するのです。

さらに、
AIは異常の場所、おおよその位置、範囲、大きさ、症状などを教えてくれる。

炎症ごとに所見を文章で表示。

程度の内訳もグラフ化します。

最終的な診断は医師が行うものの、膨大な作業を伴う分析をAIが担うことになったことで医療現場の負担が軽くなったといいます。
さらにAIが得意とするのが数値を用いた分析。腫瘍がどのくらいの期間でどれほど成長したのかサイズや密度を正確に分析しています。

AIは私たちの判断力を超えている。

5年前のデータと比較すると病期の進行傾向も予測できる。

近年、中国ではさまざまなスタートアップが医療向けのAIを開発。実用化されているのは肺や心臓の病気に向けたものが中心です。脳外科や腹部の内臓の病気への応用も研究が進められているといいます。

AIは医療全体で評価するとまだ"赤ちゃん"の段階だと思う。

道の病気、複雑で潜在的な病気の原因に関する研究・診断も期待している。

一方、コロナを機に加速したものがもう一つ。診療が終わった夜、院内の一室で行われていたのが、
今、日常生活に影響はありませんか?

影響はありません。

歩くとか、家事、あとはご飯を作るなど何か問題はありませんか?

オンライン診療です。この病院では2017年から導入しましたが、コロナを機に利用が加速。ピーク時にはおよそ700人の専門医が月3万5,000回ものオンライン診療を行いました。


浙江大学医学院附属第二医院の劉先宝医師、
このプラットフォームでは患者の電子既往歴とつながることができる。

既往歴、過去の検査結果、映像データなどを調べるのも非常に便利。

支えるのが独自のスマホアプリのプラットフォーム。問診から薬の処方など全てをオンラインで完結させることを可能にしています。
いま中国では病院以外にもさまざまな業種がこうしたオンライン診療ビジネスに参入しています。

ネット通販大手の京東は6万5,000人もの医師を取り込んでサービスを展開。その使い勝手は、

上海支局の菅野陽平記者、
こちらは最初の問い合わせ画面です。チャット形式で今の私の風邪の症状や私の情報を細かく入れていくと瞬時に100人以上のおすすめの医者が表示されました。こうした応対は全てAIが行っているということです。

満足できなければ返金にも対応する手厚さ。物流企業ならではの流通網を生かし、処方された薬は最短30分で自宅に配送されます。

民間企業の参入により利便性が急速に高まっているのです。
コロナを機に加速した医療のデジタルトランスフォーメーション。その影には政府の強力な後押しがあります。

浙江大学医学院附属第二医院の王建安最高責任者、
重要なのは政府が法律や管理のルール面で迅速にフォローすること。

政府はIT系企業に多くの優遇政策を提供しているし、普及の一部要因には政府からの資金面の支援がある。
