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[WBS]シャツ・チョコ・コーヒーなど問題化! 「人権侵害」対応へ初の指針[有楽製菓株式会社]

2022年8月5日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

コットン100%のTシャツやコーヒー、さらにチョコレート、これらの商品は作られる過程で強制労働や児童労働などがあるとして国際的にたびたび問題となっています。ヨーロッパやアメリカでは人権侵害が特定された場合は使用を法律で禁止している国もあり企業の対応も進んでいます。一方、日本では人権侵害に対して取り組んでいる企業はおよそ半分にとどまっています。こうした中、経済産業省は初めて企業に対して人権侵害の改善や公表を求めるガイドラインを示しました。

あの駄菓子チョコも…企業の"真剣配慮"加速

東京郊外にあるチョコレートメーカー「有楽製菓」の工場直営店。お客さんが次々と手に取っているのはブラックサンダー、年間2億本以上売れる定番商品です。

実はこの商品、人権に配慮したチョコレートが使われています。

有楽製菓
河合辰信社長

子どもの笑顔を搾取した減量で誰かを笑顔にしても、それは大きな矛盾があるのではと。

カカオの生産国ガーナでは18歳未満の児童労働者が77万人もいると問題になっていて有楽製菓では2020年から児童労働や強制労働のない環境で作られたカカオ原料に順次切り替えているのです。

コストはかかりますが第三者機関の調査や独自のシステムで認証した原料を使っていて2025年までに全ての商品を切り替える方針です。

カカオの切り替えに消費者は…

お客さん

知らなかった。安心でいい。

お客さん

日本人は意識低いと思っていたが「ここまできたんだ」という感じ。

1個30円の駄菓子になぜ割高な人権に配慮した原材料を使うのでしょうか。

有楽製菓
河合辰信社長

正直決断としては大きい。
利益につながるか、つながらないかよりも企業がこれから存続するために当たり前に取り組んでいかないと。
海外の競合メーカーは当たり前にこうした取り組みをしているので、おそらく海外での競争には勝てない。

海外で展開する企業を中心にこうした取り組みはカカオやコーヒー豆だけでなくパーム油など幅広い商品に広がっています。

強制・児童労働を防ぐ!政府「人権侵害」初の指針

企業が取り組みを加速させる中、経済産業省は8月5日に全ての企業が取り組むべき人権侵害を防ぐためのガイドラインを公表しました。その中で人権侵害のリスク評価とその対応を示しています。

まず企業は自社だけでなく原材料の調達や生産の過程までも含めて人権侵害が生じそうな場所を特定し、その深刻度合いを評価します。その上で防止や解消の措置をとり、その後措置についても効果があったかを評価します。そしてその結果について情報を公表すべきとしています。

守るべき人権は強制労働や児童労働だけでなく人種や障がい、ジャンダーに基づく差別なども含まれます。

"人権ガイドライン"の狙いは?経産大臣をを直撃…「取引停止も」

案を取りまとめた狙いとは、萩生田経済産業大臣に聞きました。

萩生田経産大臣

事業活動に人権リスクがないかを把握し、継続的に状況の改善を促すことが狙い。
できるだけ安い調達ができればいいに決まっている。
しかし、国際標準と合わせてあまりにも安いものがあったときには「どうしてこの国からのこの製品はこんなに安く買えるんだ」と自分なりに調べてみることも大事だと思う。

経産省が実施した調査では人権対応について48%が具体的な取り組み方法がわからないと回答。そのため企業向けに人権方針の策定のポイントや注意点、取り組みの優先順位などをまとめたのです。

萩生田経産大臣

昨年、日本の製造小売業の製品が外国で輸入差し止めをされる事案があった。

萩生田大臣がそう語るのはユニクロの問題です。去年5月にアメリカの税関当局がユニクロの一部のシャツの輸入を差し止めていたことが判明。「強制労働の事実はない」などとするユニクロ側の説明は認められませんでした。

このとき経産省も水面下でアメリカ側と交渉しましたが撤回させることはできませんでした。経産省の関係者によると日本に人権ガイドラインがなかったことがアメリカに強く出られなかった理由だと話します。

萩生田経産大臣

日本企業が人権侵害の加担を理由に海外で事業を差し止められる事案を防ぐため各国政府と協調しながら日本企業のサポートをすることも大きな目的の一つ。

ビジネスと人権を考える上で避けて通れないのが中国。アメリカは6月に中国の新疆ウイグル自治区で強制労働によって生産される全製品の輸入を禁止する法律を施行。アメリカをはじめとするG7は中国の新疆ウイグル自治区の人権侵害に対する経済制裁で足並みを揃えますが、日本だけが制裁に参加していません。

政府は今回のガイドラインを中国包囲網に参加する足がかりにするのでしょうか。

萩生田経産大臣

ガイドラインは特定国を念頭に置いたものではないが、国家の関与が疑われる場合には企業努力では人権侵害の実態を確認できない。
人権状況の改善余地もないケースも想定される。
そのような場合には取引停止の検討も必要ではないか。

実際、セレクトショップ大手のユナイテッドアローズは新疆ウイグル自治区の綿花の使用を今後中止すると表明しました。

ただ今回の取り組みは罰則などがないガイドライン。法制化については…

萩生田経産大臣

法律ありきではなく国債スタンダードをつくり上げていくことに注力したい。

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