ロシアによる侵攻が続くウクライナでは民間人の犠牲者が増え続けています。侵攻に歯止めをかけようと岸田総理大臣は4月8日にロシアからの石炭の輸入を禁止すると表明しました。これによりセメントなどの建築資材が値上がりすると懸念する声も上がっています。
ロシア産石炭の輸入禁止へ!セメント・電気料金が高騰!?
午後6時、総理官邸。
岸田総理
ロシアに対する外交的・経済的圧力を強化します。
侵略をやめさせるため国際社会と結束して強固な制裁を講じます。
岸田総理大臣が発表したロシアへの追加制裁。ロシアからのウォッカや木材、機械類の輸入を来週からん禁止するほか、ロシア最大の商業銀行ズベルバンクの資産凍結などを打ち出しました。
さらに政府は在日ロシア大使館の外交官ら8人を国外に追放すると発表。ヨーロッパ各国で広がる外交官追放の動きに歩調を合わせました。
そして今回の制裁で最大のポイントが…
岸田総理
ロシアからの石炭の輸入を禁止します。
早急に代替案を確保し、段階的に輸入を削減することでエネルギー分野でのロシアへの依存を低減させます。
岸田総理はロシア産の石炭について最終的には輸入を禁止すると強調しました。
EU(ヨーロッパ連合)の各国が8月からロシア産石炭の輸入を禁止するのに足並みをそろえた形です。
しかし、石炭輸入量に占めるロシア産の割合は11%を占め、経済への影響に懸念も。
なかでも影響を受けそうな業界が東京・江東区にある生コンクリートの製造工場「吉田建材 東京若洲工場」。材料としてセメントを使用します。
吉田建材 東京若洲工場
池澤卓工場長
これがセメントのサイロ(倉庫)。一番大きいので1,000トン。
250トンと180トンぐらいのサイロ(倉庫)。
1立方メートル当たりに使うセメントの量は400キロぐらい。
セメントの原料となる石灰石を加熱する際に燃料として使われるのが石炭。セメント業界ではロシア産の石炭に全体の46%以上を頼っています。
さらに石炭の市場価格は経済活動の再開による需要の増加で去年の秋から過去最高の水準が続いています。現場ではすでに価格高騰の波が押し寄せていました。
吉田建材
吉田徹平取締役
石炭の価格に伴ってセメントの価格も去年度の同月と比べ20%ほど上がっている。
番組スタッフ
20%分は価格に転嫁できているのか?
吉田建材
吉田徹平取締役
生コンクリートの販売形態は物件ごとの契約ということになるので、その分を消化するまで2年ほどは現状の販売価格ということを見込んでいる。
今後、ロシア産石炭の輸入制限でセメントの価格がさらに高騰することを懸念しています。
また、別の業者は…
生コンクリート業者
輸送費も上昇している中でセメントの価格上昇は非常に厳しい。
顧客にどう価格転嫁するか悩ましい。
業界大手「太平洋セメント」は取材に対し「ロシアによる侵攻を受けてオーストラリア産などへの切り替えを進めている」としています。
輸入制限がもたらす日本経済への影響について専門家は…
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
永濱利廣さん
3兆円以上石炭輸入の負担が増える。その分、名目GDPが下がる。
石炭の価格が上がることでセメントを大量に使う建設業や燃料として石炭を使う鉄鋼業のコストを押し上げ、業績を圧迫するといいます。
さらに家計にも影響が。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
永濱利廣さん
一番大きいのは電気料金。
ウクライナ戦争の影響が電気料金に反映されるのは6月から。
消費者の財布のひもがより固くなるかも。
ウクライナ 駅で避難民ら39人死亡!東部制圧後 キーウ再攻撃か
各国が制裁を強める中、ウクライナでの民間人の被害は増え続けています。
ウクライナ政府は東部ドネツク州のクラマトルスクの鉄道駅がミサイルで攻撃され、子ども4人を含む39人が死亡。100人以上が負傷したと発表しました。
ロシア軍が攻撃を強める東部から避難しようと駅にはおよそ4,000人が集まっていたといいます。
ゼレンスキー大統領は…
ゼレンスキー大統領
ロシア人のやり方は人間とは思えない。
戦地で私たちと向き合う勇気と力がないから、わざと民間人を狙っているんだ。
ウクライナ軍は7日にドネツク州やルガンスク州をロシア軍に制圧された場合、再び首都キーウが攻撃される可能性があると警鐘を鳴らしました。
化粧品の輸入販売を行う会社を経営するボグダン・パルホメンコさん。今もキーウで暮らしています。
キーウ在住
ボグダン・パルホメンコさん
ミサイルを地対空ミサイルで撃ち落とす音が聞こえる。
そのごみが街中に黒く積もる。キーウの空気はいま通常の9倍悪い。
カフェなどが再開し、少しずつ経済が戻りつつあるキーウ。ロシアによる侵攻は長期化すると覚悟を決め、さらなる攻撃に備え始めているといいます。
キーウ在住
ボグダン・パルホメンコさん
キーウはある程度要塞化できた。攻めてくることは多分できない。
ロシアは10日分の軍事費しかなかったはず。
どこからかロシア政府がお金を調達しているからこれだけ長期化している。
あと1ヵ月~1ヵ月半くらいは戦争が続くのではないかという肌感覚。
NATO事務次長に単独インタビュー!"パートナー国 日本"の役割とは…
こうした中、開かれたNATO(北大西洋条約機構)の外相会合・
ウクライナに兵器を追加支援することで一致しました。
テレビ東京の単独インタビューに応じたのはNATOのNo.2、ミルチャ・ジョアナ事務次長。旧東側出身として初めてこのポストに選ばれた人物です。
武器の追加支援を決めた理由を聞くと…
NATO
ミルチャ・ジョアナ事務次長
次の数日または数週間で起こることは最初の6週間のものとは異なる戦争だ。
より広範囲での伝統的な軍隊間の対立になるだろう。
ウクライナがこれまでと違う武器の支援を求めることは正しいことだ。
予測される戦闘の激化。NATOもウクライナ軍と同じようにロシア軍がウクライナ東部でさらに大規模な攻撃を行うと分析しているのです。
今回の会合には日本から林外務大臣も初めて参加。
中国に対し「ロシアを非難していない」と名指しで批判しました。
この点についてジョアナ氏は…
NATO
ミルチャ・ジョアナ事務次長
ここは日本がリードしてくれる分野。また中国にとっても正念場だ。
中国はここ数十年、戦争による国境変更に反対し、主権や国家の意思決定の自由の擁護者と自ら言ってきた。
それなのに突然プーチン大統領とロシアを支援しているこれは大きく態度を変えたと言える。
中国が今どのような立場をとるかで世界での中国の評価が決まるのではないか。
国連人権理事会が決議採択!ロシアを"追放"
国際社会もロシアへの圧力をさらに強めています。
国連総会は7日に緊急の特別会合を開催。人権理事会におけるロシアの理事国の資格を停止する決議案を日本を含む93ヵ国の産生で採択しました。
アメリカ
トーマスグリーンフィールド国連大使
重要で歴史的な瞬間だ。
犠牲者などの苦しみは無視されないという明確なメッセージだ。
これに対しロシアのクズミン国連次席大使は「違法かつ政治的な動機による決議だ」と反発しました。
ただ決議には中国や北朝鮮などが反対。インドなども棄権しました。