2月8日のショートプログラムでは18歳で初出場の鍵山優真選手が2位、前回大会銀メダルの宇野昌磨選手が3位に入りました。
WBSではその宇野選手の4回転ジャンプを支えるシューズのブレードに注目しました。
こちらがそのブレードです。強くて、そして持ってみると結構軽いです。このブレードを開発した日本の中小企業を取材しました。
宇野選手支える"最強ブレード"
その演技を緊張した表情で見守るのは寺西基治さん。宇野選手のブレードを開発した会社「山一ハガネ」の社長です。
名古屋市に本社を置く山一ハガネ。社員はおよそ200人です。
クレーンで運んでいるのは…
特殊鋼の中でも金型を作るのに使われる材料。
特殊鋼とは鉄に炭素などの成分を加えたもの。耐久性に優れているのが特徴です。
山一ハガネはこの特殊鋼の加工を得意としていて、精度が求められる自動車のエンジンの部品の金型などを製造しています。
高精度で寸法を安定して製品を提供することには胸を張っている。
山一ハガネがブレード開発を始めたきっかけは8年前、元日本代表選手からの依頼でした。そして2年前、宇野選手からも相談を受けました。
寺西社長からその開発を任されているのが石川貴規さんです。
宇野選手が困っていたのが靴に取り付ける部分が曲がり、1ヵ月に数回あると。
曲がらないブレードが欲しいと。
一般的なブレードは3つのパーツを溶接して作られます。
そのためどうしてもつなぎ目の強度が弱くなり、ひび割れなどの原因に。
4回転ジャンプが主流になる中、ブレードには強度と軽さが求められます。
4回転を飛ばないと点数が伸びない。4回転へのこだわりはすごく感じる。
そこで考えついたのが…
1本の塊から1本の細いブレードを削り出す。
この塊からつなぎ目のないブレードを作り出すといいます。
しかし、その重さはおよそ10キロ。
「この塊から軽いブレードができる?」
うちの特殊な技術を使い、削り出す。
削るのはこの巨大な機械。
特殊鋼の塊をセットすると工具が回転しながら削っていきます。削る場所が100分の1ミリでもずれると左下の写真のように表面にムラができて強度不足になることも。
過去にはこんな失敗も…
開発途中のものだが折れてしまった。
こういう事態はあってはいけないので夜中まで開発したこともある。
これまで作った試作品は100本以上。
数百種類の工具を試し、削る時間や位置を変えるなど試行錯誤を繰り返し、最適な削り方を見つけました。
実際に宇野選手のブレードを作るところを見せてもらいました。削る時間は10時間以上。
完成したものです。
厚さが3.8ミリ。
そしてブレードの重さは…
約270グラムです。
およそ10キロの特殊鋼の塊が270グラムに。残ったのはたったの3%です。
こうして一般的なブレードに比べ強度は3倍、重さは30グラム軽いものができあがります。
宇野選手に納得のいく演技をしてもらうのがわれわれの望み。
オリンピックでがんばってもらいたい。
そして2月8日、あのブレードで4回転フリップを決めました。
100点いった。
山一ハガネも盛り上がります。
得点は自己最高の105.90で3位。2月10日のフリーで頂点を目指します。
成功したジャンプすべてが自分の中でも納得できるいいジャンプだった。
自分の気持ちに負けずにいつも通りの自分を出すこと、それがフリーの目標。
何事もなく終わって、結果も良かったので安心した。
次のフリーで金メダルをとってほしい。