セーリング
リオデジャネイロの東側に面したグアナバラ湾。
オリンピックの競技会場の一つです。
その競技とは「セーリング」。
海の上に置かれた目印を周回して順位を競うヨットレースです。
選手の技術はもちろん、ヨットの性能が勝負を大きく左右します。
8月13日、この会場を訪れたのはヤマハ発動機株式会社のセーリングチームの首脳陣です。
ヤマハ発動機株式会社
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今回の大会には出場していないためフェンス越しに競技場内の様子を視察します。
チームの監督は選手出身の飛内秋彦さん。
視察の目的は?
4年後の東京オリンピックを目指している。オリンピックの雰囲気や運営、船も調査しに来た。
必死にメモを取っているのはヨットの開発担当者、船体開発部の藤井茂さんです。
レースが終わった後の艇のメンテナンスをどう進めるか、どのくらい修理が許されるかとか、船づくりの要件として重要になる。
アトランタ五輪
実は藤井茂さんが手掛けたヤマハ発動機株式会社のヨットは20年前、アトランタオリンピックの時に重・木下ペアが使うヨットの一艇として採用されました。
直前に重由美子選手にフィーリングが合わないと言われてしましました。
重・木下ペアは海外艇に乗って銀メダルを獲得したのです。
それ以降、ヤマハの船がオリンピックに出るというのは全くチャンスがないというか20年続いている。
リオデジャネイロオリンピック
今回のリオデジャネイロオリンピックでも日本代表が乗るヨットでさえ海外製です。
ドイツの「ツィーゲルマイヤー」やニュージーランドの「マッカイ」といったブランドが大半を占めています。
会場で関係者にヤマハ発動機株式会社のイメージを聞くと
特にない、思いつかない。
オリンピックとは無縁のヤマハ発動機株式会社のヨット。
しかし東京オリンピックの開催を機会にこの春、チームを再始動。
再び世界への挑戦を始めたのです。
飛内秋彦監督は
「日本の技術を世界に見せてやる」という気持ちはある。
マリン事業
ヤマハ発動機株式会社のマリン事業はモーターボートや船に外付けするエンジン「船外機」が主力です。
これらの事業が世界でシェアを伸ばす一方、ヨットでは存在感を示していません。
静岡県にある「ヤマハマリーナ浜名湖」。
今月、新たに試作したヨットの初めての水上テストが行われていました。
そこにはリオデジャネイロオリンピックを視察した飛内秋彦監督と藤井茂さんの姿もありました。
今回の試作艇はライバルを参考に船体剛性を高めたものです。
剛性とは硬さのことです。船体が硬ければ波の影響で変形しにくく、選手は方向転換がしやすくなります。
しかし硬い素材を使うと、その分船が重くなりスピードが落ちてしまします。
重さと硬さをどうするのか、実際に選手が乗った感覚をもとに調整を重ねる必要があります。
ミーティング
選手側と開発側のミーティング。
選手側の高木克也コーチからは船体が重くなることへの不安の声が
重量が一緒でモーメント(能率)も一緒なら硬い方が速いですけど、硬くして重くなったら遅くなる。
一方で藤井茂さんは世界で勝つためには剛性を高めることが必要だと訴えます。
「ツィーゲルマイヤー」「マッカイ」と硬さを比べると、しっかり違いが出る。ヤマハの船は剛性・硬さで負けている。アトランタオリンピックで銀メダルを取った重選手にも船を出していたんだけど「悪いけど良くない感じがして使えない」って。いま考えると「剛性感のなさ」を感じて、このヤマハの船を使っても勝てないので海外艇に乗り換えた。
始まった20年越しのリベンジ。
今後、ヨットの改良を重ねて、まずは2017年夏の世界選手権の出場を目指します。
飛内秋彦監督は
自社の船、自社のチームでオリンピックに出て、メダルを狙うという目標でこれから4年間やっていきたい。
株式会社浜野製作所
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東京・墨田区の町工場も4年後に向けて動き始めていました。
金属加工を得意とする株式会社浜野製作所。
お盆休み中のある日、社内で数人の男性がオリンピックのある競技を見つめていました。
その競技とは「カヌー・スラローム」。
カヌー・スラローム
人工的に作られた急流で定められたゲートを通過しながらスピードを競う競技です。
羽根田卓也選手が日本人として初めてとなるメダルを獲得しました。
その様子を見ていたのは株式会社浜野製作所の浜野慶一社長と流体工学を専門とする東洋大学理工学部の望月修教授です。
カヌーの前の方はほとんど水に入っていない。後ろだけが水に入っている。
前は浮いていないと回転がうまくできない。
後ろも浮かしてしまえばいい。
クルクル回りますもんね、コマみたいに。
より抵抗の少ないカヌーを開発し、東京オリンピックを目指そうとしているのです。
株式会社浜野製作所
株式会社浜野製作所はこれまでにも金属加工の技術を生かして深海探査機の開発など下町を盛り上げるプロジェクトに積極的に携わってきました。
今回、地元で開催されるオリンピックを盛り上げようと専門家とタッグを組んで新たな挑戦を始めたのです。
目指すのはもちろん、
「メダル取りましょう」って、私が「金メダル」とか言っているので。
本当にできるんじゃないかと、だんだん思えてきている。
4年後を目指して始まった下町カヌープロジェクト。
町工場の技術を世界にアピールすることができるでしょうか?