木で出きた桶「木桶」です。
日本では古くからこうした木桶で醤油や味噌が作られてきました。
ところがここに来て木桶が作れる職人が相次いで廃業し、伝統の味が絶滅の危機に直面しています。
そんな中、この木桶を復活させようと醤油の蔵元があるプロジェクトを立ち上げました。
麺や 七彩
[blogcard url="https://shichisai.com/"]
東京・八丁堀。行列のできるラーメン店があります。
ここの一番人気は醤油味の喜多方ラーメン。
なかでもスープのこだわりが、
木桶で仕込んだ木桶醤油。
藤井吉彦社長は、
味わい、香り、木桶以外の醤油と明らかに違う。
木桶で造る醤油の流通量は全体の1%未満。
それでも本来の味を引き出すため木桶醤油が欠かせないといいます。
ヤマロク醤油株式会社
[blogcard url="http://yama-roku.net/"]
この醤油を作っているのは香川県小豆島。
創業およそ150年のヤマロク醤油です。
休日になると木桶での醤油作りを見学しようと多くの観光客が訪れます。
目の前に大きな木桶が並んでいるが実際に全部使っている。
案内するのは五代目蔵元の山本康夫社長。
うちは醤油を造るときに乳酸菌と酵母菌を入れなくていい。
ここにいる。自然と生えて自然と発酵する。
高さ2メートルの木桶、100年以上使ってきたこのおけには乳酸菌や酵母菌などが住み着いています。
蔵元ごとに菌の生態系が異なるので味もそれぞれ特徴があるといいます。
社長の性格に味が似てくる。
隣の蔵は先代の時は味が濃かった。
次の社長は控えめで真面目。だんだんあっさりになった。
それが料理にものすごく使いやすい。
木桶醤油の奥深さに見学者も、
市販の醤油と全然違う。
まろやかで味が濃い。
甘い。
おいしい。
しかし今、この木桶の醤油がピンチを迎えています。
木桶で造る発酵調味料はほぼ絶滅。
桶屋がなくなるとカウントダウンが始まる。
大きな木桶を造る職人がいなくなるというのです。
一体どういうことなのか?
藤井製桶所
日本で唯一と呼ばれている木桶職人を訪ねてみると…
新しい大きな木桶が完成間近でした。
藤井製桶所の上芝雄史社長(67歳)、
来週納める桶。
酒屋に行く桶。
社長の上芝さん、2020年で木桶作造りを辞めると宣言したのです。
年齢もあってある程度期限を決めていた。
なぜ大きな木桶を造る職人は減っていったのか?
上芝さんが以前修理した底板を見ると…
明治42年2月中旬に新しく造って。
こちらも明治42年2月に新調。
醤油や味噌の木桶の寿命はなんと150年。
新たな需要はなくなっていったのです。
さらに戦後、木桶より鉄製のタンクが主流となり多くの職人が廃業していきました。
木桶職人復活プロジェクト
上芝さんが木桶造りを辞めると聞いて動き出したのがヤマロク醤油の山本さん。
桶を造る技術が残らなければ今使っている桶が使えなくなる。
次の世代の時にはなくなってしまう。
そこで山本さん、木桶職人復活プロジェクトを立ち上げました。
上芝さんに新たに桶を3本発注して一緒にその造り方を学んだのです。
そして自ら造った木桶を送ったのは…
木桶を復活させろ!イタリアから世界へ発信!
イタリア北部の都市、フォッサーノ。
国内初のクラフトビールを作った醸造所です。
Baladin(バラデン)
豊島晋作記者、
こうしたヨーロッパ製の大きな樽の横に置いてあるのがこちら、日本の木桶です。
ヤマロク醤油の山本さんが造った木桶です。
バラデン創業者のテオ・ムッソ社長は山本さんの木桶職人復活プロジェクトに共鳴し木桶でビールを造ることを決意。
木桶には深い魂がある。
ムッソさんは醸造したビールをウイスキー用の樽に入れて熟成。
その色はまるでワインのよう。
今回の新作は山本さんの木桶で熟成させています。
表面にバクテリアがつくった膜ができている。
こんなものは見たことがない。
素晴らしい。
表面の厚い膜により空気が遮断され中で熟成が進むといいます。
これを18ヵ月間熟成させて売り出そうというのです。
出荷前のものを特別に飲ませてもらうと、
かなり甘いですね。ちょっとブランデーに近いような味です、美味しいです。
ムッソさんは今年、新商品のビールを4,000本造りました。
その名も「XYAUYU KIOKE」。
Terra Madre Salone del Gusto
このビールを売るためにムッソさんが向かったのは世界的な食の祭典「サローネ デル グスト」です。
2年に1度開かれるこの祭典は世界中の生産者やバイヤー、そして美食家が集まる一大イベント。
ムッソさんのブースには多くの人が集まっていました。
日本の木桶で造られたビール。
味にこだわるイタリア人の反応は?
とても飲みやすい。
素晴らしい。こんな香りは初めて。
用意していた数十本の瓶はあっという間になくなりました。
手応えを感じたムッソさん。
木桶が持つ伝統の力に気付いたといいます。
失ってはいけない伝統がある。
それは歴史そのものであり、木桶が我々にもたらしてくれるものだ。
もし木桶の伝統を失えば元に戻らない。