経済WEEK特別企画。今回のチェンジはゲームの常識です。
実は今ゲームはかつての娯楽から社会問題を解決する存在へと変貌しています。一体どういうことなのでしょうか。
ゲームの歴史から見ていきましょう。
1978年には「スペースインベーダー」が大流行しました。その後、家庭用のゲーム機「ファミリーコンピューター」が登場します。ドラゴンクエスト3の発売日には学校や会社を休む人が出るなど社会現象にもなりました。
あくまで遊びだったゲームがどのように社会問題を可決するのでしょうか。
取材を進めるとそこから日本の反転攻勢のヒントが見えてきました。
チェンジ!ゲームの常識
マンホールを撮って賞金5万円!?ゲームが守る!街のインフラ
東京・上野。
駅前を歩くのは会社員の植木千裕さん。
突然立ち止まるとスマートフォンを構えてパシャリ。これは一体?
マンホールの写真を撮って登録するゲームで遊んでいます。
これは「鉄とコンクリートの守り人」というスマホのゲーム。
緑色のボタンが登録されているもので、灰色のものはまだどなたも撮っていないマンホールです。
灰色の状態のものがチャンスです。
まだ誰も投稿していないマンホールを少し離れたところからと真上から撮影。それぞれ投稿するとポイントになります。
実は植木さん、先月行われたこのゲームのイベントで優勝しました。
賞金を頂きました。5万円。
それで今度、靴を買おうと思う。
このゲームの登録者はおよそ3万人。こちらは実際に集められたマンホールの画像です。
錆びていたり、滑りやすくなっていたりと老朽化しているものまで。
実はこのゲームではその画像を生かしてインフラの改善に役立てようという狙いがあるのです。
「やらなきゃ」という感じではなく、ゲーム感覚でインフラに貢献できるのが魅力的。
このゲームを仕掛たのがIT企業「ホール・アース・ファウンデーション」を経営する森山大器さん(38歳)。
ゲームなので"すごく面白い"というのがありつつ、その結果、街を守ることができるゲーム。
森山さんがこの日やってきたのは日本鋳鉄管という会社の工場です。
作業着に着替え、ヘルメットを装着。ここは一体?
日本鋳鉄管の清水孝さん。
これはマンホールに設置する鉄蓋。
マンホールの鉄蓋を作る工場の視察です。
自治体により形状が異る鉄蓋。それぞれの型に鉄を流し込んでいきます。
下水だけでも日本全国に1,500万ヵ所以上あるとされるマンホール。そのうちおよそ300万ヵ所が老朽化しているともいわれています。
問題はどこに老朽化したマンホールがあるかわからない。
マンホールが危険にさらされていることは市民が危険にあっている。
実は森山さん、この日本鋳鉄管とタッグを組んで今回のゲームを開発しました。
自治体などが把握できていないマンホールの状態をゲームの力でデータベース化する狙いです。
きっかけはゲームが楽しいということでもいい。
その先にある、これだけ多くの人の手で生活の当たり前、自分たちの街が守られていることを感じてほしい。
そして森山さん、パートナーの日本鋳鉄管との会議で新たな提案をしました。
インフラの管理という意味では定期的な間隔で写真を撮る仕組みをゲームに入れていきたい。
一度撮影したら終わりだったこれまでのゲームを変えようとしていました。
今月から撮影するたびに犬のキャラクターを育成できるなど新たな機能をつけて継続的に楽しんでもらう仕組みを作ります。
今までのゲームは家の中に閉じこもってプレイするもので、親からは"やってはならない"と言われるもの。
我々が考えるゲームは熱量を束ねて、その結果として人々を1つの方向に動かす手段。
太鼓・クルマ…高齢者もハマる!?健康と交流にゲームが一役!
いまゲームの常識が大きく変わり始めています。
川崎市にあるこちらの施設「麻生老人福祉センター」。
ここでも新たな動きが…
お年寄りが楽しんでいるのはリズムに合わせて太鼓を叩く「太鼓の達人」やリアルな自動車でのドライブを体験できる「グランツーリスモ」など。
ゲームは初めてだというこちらの女性。
ピットに入っちゃった。
なんとレース開始早々にタイヤ交換。それでも楽しそうです。
こういうのを時々やってくれれば生きがいになる。
市からの委託を受けてこのイベントを取り仕切るのが日本アクティビティ協会の川﨑陽一さん。
認知症予防などにも効果があるとされるテレビゲームですが、今回始めた狙いはそれだけではありません。
何も工夫をしなければ参加するのはほとんど女性に。
デジタルやゲームなど新しいものをやると男性が入ってくる。
健康のための体操など地域のイベントは女性に比べて男性の参加が少ないのが課題でした。
しかしテレビゲームを取り入れることで男性の参加者が増えるといいます。
2年前に運転免許を返納したというこちらの男性。運転には自信があったようですが、その結果は…
20台中19位です。
よその車がいるとぶつかるという気持ちがあって、どうしてもスピードを落としちゃう。
62歳の男性
ゲームセンターで見て、やってみたいと思っていたが恥ずかしかったのができて面白かった。
58歳の男性。
楽しい。
体動かすのがおっくうになってくるので。
さらにもう一つ参加を促す工夫がありました。ゲームの説明をする側のスタッフも実は指導を受けたお年寄りなのです。
73歳のスタッフ男性。
同じ世代同士の者が誘った方が来てもらえる確率が高い。
人のつながり、仲間が増えるのが一番良い結果。
ゲームの横では体力測定のコーナーも設置し盛況。
川崎市はゲームをきっかけにしたお年寄りの健康増進と交流に可能性を感じています。
川崎市のまちづくり推進部、麻生淳一さん。
ゲームを楽しむだけで無く、ゲームを通じて市民がふれあう機会が生まれた。
お年寄りが別のお年寄りへ、その楽しさを伝える。新たなゲームの常識が広がり始めているようです。
これまではゲーム=若者。
これからは高齢者が公共の場でみんなで楽しみながら健康になるためにゲームを活用する社会に変わっていく。