いまスタジオにはとってもいい香りが漂っています。さまざまな種類のパンが並んでいますが、実はこれらのパン、全てが国産の小麦で作られています。ロシアによるウクライナ侵攻の影響などで輸入小麦の価格が上昇する中、いま国産の小麦に期待が集まっています。ただ、そこには国産ならではのある課題もあるようです。
価格高騰の小麦 国産に脚光!100%使用「パンに風味と甘み」
スーパーの取材でおなじみといえばアキダイですが、7月19日に訪ねたのはそこから目と鼻の先にある「あきぱん」。アキダイが運営するベーカリーです。人気はメロンパンやカレーパンなどの定番メニュー。そのほか惣菜パンやフルーツサンドなど常に100種類以上のパンが並んでいます。
実はこれらのパンにはある共通する売りが…
あきぱん
金子竜也店長

国産小麦を使っているのが一番特徴的。
国産小麦だと風味も良いし甘みもある。外国産小麦よりおいしく、もっちりしている。
あきぱんは4年前から材料の小麦を100%国産に変更しました。国産の方が小麦本来の味も引き立つのだとか。
お客さん

食パンおいしいですよ。焼きたて。
番組スタッフ
国産小麦が売りだから?

お客さん

それもある。
お客さん

私は食が大事だと思うので。
できれば国産のものが欲しいし、自給率を高めてほしい。
ただ、国産小麦は外国産に比べてデメリットも…
あきぱん
金子竜也店長

モノによっては生地ができにくかったり、逆にすごく強い生地ができあがったりもする。
国産小麦は品質が安定しにくく扱いが難しいというのです。
あきぱん
金子竜也店長

あれ?これちょっと爆発したんで違うのにしようとか、配合を変えようとか。
今でも試行錯誤が続いていますから、まだやっている。
国産小麦にチャンス?課題の安定供給に秘策も…
たわわに実をつけた麦の穂が風に揺れる小麦畑。国産小麦の7割近くを占める北海道。なかでも有数の生産地が江別市です。
畑ではなにやら人だかりが。
小麦農家
萩原英樹さん

「きたほなみ」よりは収量が落ちるので僕は「ゆめちから」の方が面積が多いが「きたほなみ」は大好きです。作りがいがあるので。
真剣に話を聞いているのは全国から集ったベーカリーのオーナーたちです。国産の小麦についてもっと知ってもらおうとベーカリーの開業を支援する会社が主催しました。
おかやま工房
河上祐隆社長

国産は外国産の1.5倍ぐらい高かったので、今回の外国産が20%ぐらい値上がりして価格差が縮まったこともあって国産の需要は増えていくと思う。
北海道産・国産の小麦粉を使う店も増やしていき、農家を支援していきたいと思う。
外国産小麦の価格はウクライナ問題で高騰。銘柄によっては国産小麦の方が割安になっているのです。
農家にとっても国産小麦の生産拡大につながるチャンスかと思いきや…
小麦農家
萩原英樹さん

1年に1回しか作れないので需要は相当動くから先を見て作るのは難しい。
安定供給に向けてさまざまな工夫も。一行が訪れたのは製粉工場です。
江別製粉
スタッフ

この奥が小麦を砕くロール機が並んでいる場所。
工場の中に並ぶのはロール製粉機。この機械で北海道で収穫された小麦が製粉されます。
江別製粉
吉田幸慶営業部長

このように北海道産100%ということでマークがついているものが全て北海道産。
原料の供給面・品質・価格の安定、このへんが安定しないとなかなか需要に対応するのは難しいのかなという側面はある。
品質や価格が安定しない国産小麦。そこで行っているのが小麦粉のブレンドです。
江別製粉
吉田幸慶営業部長

製粉会社のテクニックでもあるし、一つは製品を安定させる意味では短品種よりかブレンドした方がより安定する。
国産小麦のデメリットを技術でカバーし、中長期的な需給率の向上を目指しています。
戦禍の中 ウクライナ小麦収穫!プーチン大統領 輸送安全確保合意?
一方、世界有数の小麦の産地であるウクライナ。いまだ戦争が続いていて、小麦畑では火の粉が飛び散っていました。
ウクライナ軍兵士

収穫が間に合わなかったものだ。ロシア軍はもう3キロのところまで来ている。
今の時期は小麦の収穫の真っ只中。戦禍にも関わらず農家による小麦の収穫は続けられています。
記者
攻撃の音は怖いか?

ウクライナの農家

もう慣れた。攻撃の音が聞こえないとおかしいと思ってる。
世界各国に輸出しているウクライナ小麦。倉庫を覗いてみると輸出できずに積み上げられた小麦の山が。いま問題となっているのが輸送方法です。
ロシア軍によりウクライナの黒海の港が封鎖されているためルーマニアの港では陸路経由のトラックが大渋滞。黒海につながる運河にもコンテナ船が90隻以上待機している状態です。
こうした中、ウクライナとロシアは13日にトルコと国連を交えて協議。黒海の港からウクライナの穀物輸出再開に向けて航路の安全確保で基本合意しました。今週中にも正式に合意するとみられています。
それに先立ち、プーチン大統領は日本時間の7月19日にトルコのエルドアン大統領とイランのテヘランで会談する予定です。軍事侵攻後初めての対面での会談でウクライナの穀物輸出問題が主要議題の一つです。
こうした動きは小麦価格にどう影響していくのでしょうか。専門家に聞いてみると…
資源・食糧問題研究所
柴田明夫代表

ウクライナ小麦輸出再開が継続すれば輸入価格の値段も落ち着いてくる。
ただ、日本では円安が止まらないのでどうしても価格は押し上げられてしまう状況。
一方、国産小麦については…
資源・食糧問題研究所
柴田明夫代表

国産はチャンスだが日本の農業の生産基盤、農家数も減少の一途。
予算も人も技術も法整備も見直すことを真剣に考えていかないと厳しい。