
いわゆるローカル線は乗客の減少などによってその多くが厳しい経営状況となっています。こうした中、国は赤字路線の廃止を含めて議論を進める方針で国土交通省の有識者会議は7月25日に対象路線を選ぶ際の基準を示しました。ローカル線が存続の岐路に立たされています。
1日11人 ローカル線の現実!赤字続く 存続の岐路
新潟県西部にある糸魚川市。人口およそ4万人の小さな町です。
田んぼの中に佇む頸城大野駅。そこのやって来たのは長野県の松本駅から新潟県の糸魚川駅を結ぶJR大糸線の列車です。
宮下祐佳里記者

2時間ぶりに列車が到着しました。1車両ですが降りる人の姿はありません。
列車は1時間から2時間おきに1本。この駅を利用する人は1日平均11人です。大糸線の中でJR西日本が運行する区間は国鉄が分割民営化された198年度と比べるとおよそ9割減少しています。
地元の人は…
地元の人

私はあまり利用しない。
この辺はみんな車を持っている。車で移動が多い。
地元の人

JR大糸線は車の免許がない人やお年寄りが使っているイメージ。
JR西日本は今年4月に大糸線について平均で年間およそ6億円の赤字だと初めて公表しました。こうしたローカル線がいま存続の岐路に立たされているのです。
かつて地方の発展の要とされたローカル線。我田引水をもじり「我田引鉄」という言葉があるほど政治家が地元の発展を狙って鉄道網の構築に苦心した時代もありました。
鉄道1kmあたり1日に平均何人を輸送したか示す輸送密度。東京の山手線では100万人ほどですが、この輸送密度が4,000人を下回ると廃線の目安とされています。
全国各地に鉄道路線が敷かれる日本。しかし輸送密度が4,000人未満の路線は数多く存在します。35年前は36%だったその割合は増加傾向。2020年度は57%と半数を超えました。
背景には人口減少に加えて新型コロナの影響が。在宅勤務やマイカー通勤の広がりによって鉄道の利用者が一層減少。鉄道会社の経営は厳しさを増しました。JR四国は2020年度に運行する18線区全てが赤字だったと発表しました。
JR西日本は4月に輸送密度が2,000人未満の路線を公表。JR東日本も7月末にローカル線の収支状況を公表する予定です。
ローカル線存続か廃線か…!対象路線 基準を公表
こうした状況に国が動き出しました。国土交通省は7月25日に経営状況の厳しいローカル鉄道の今後の在り方について検討する有識者会合を開催。運行の見直しについて提言案を取りまとめました。
見直す基準となるのは輸送密度が1,000人未満かつピーク時の輸送人員が1時間あたり500人未満であることです。
輸送密度が4,000人未満の路線のうち特に経営が厳しい1,000人未満の路線はいま全国各地に。これまで事業者が協議を提案しても廃線を懸念する自治体との話し合いが進ないケースもあったため今回、国の関与を強めることになったのです。
国土交通省 鉄道局
平嶋隆司次長

鉄道事業者は再生方策についてこれまで十分にできていたのか。
国・自治体はローカル鉄道の状況の変化・現状を正面から見つめてこなかった面があるのではないか。
そういった観点がこの検討会を開催するに至った問題意識。
有識者会合では該当する区間について国が協議会を設置し、鉄道事業者と自治体などで鉄道からバスへの転換などについて議論する仕組みを提言。路線を存続する場合は自治体が線路を管理し、鉄道事業者が列車の運行を担う上下分離式という運営方式を導入することも視野に入れます。協議では最長でも3年以内に結論を出すことが想定されています。
竹内健蔵座長

鉄道を残すにしてもさまざまな方法がある。鉄道でないにしてもバスなどの方法がある。
その中で最適なものを選んでいく。
激変する環境の中で持続可能なサービスを作っていく。