
住む家や仕事のない高齢者などを宿泊所の中に囲い込み生活保護費を丸ごと回収する謎の組織。
匿名ディレクターが約1年に渡ってその実態を追跡取材してきました。
黒幕の男を直撃。生活保護を食い物にする闇のビジネスに迫ります。
生活保護受給者
匿名ディレクターが取材を始めたのは2016年7月。
埼玉県の川口市役所。
来ました。生活保護受給者が市役所の中に吸い込まれるように入っていきます。
バスを降りて役所の中に入るのは生活保護の受給者たち。緑色の作業服の男たちに連れてこられていました。
生活保護費を受け取った受給者たちは監視されながらバスに戻っていきます。
バスに乗り込むとすぐに生活保護費を手渡していました。受給したばかりの生活保護費は封も開けずに丸ごと回収されていました。
匿名ディレクター、
テレビ東京です。
取材は何? お断りしているけど。
監視役の男たちに取り囲まれました。
誰の許可を得てるの? ここは関係ないやろ! なんやこら!
匿名ディレクターを威嚇する謎の男たち。
無料低額宿泊所
彼らが運営する施設は川口市内の外れにありました。
無料低額宿泊所。
周りは鉄の壁に囲まれ入り口には2台の監視カメラ。
本来、無料低額宿泊所とは生活困窮者を支援し就職など自立を手助けする施設です。
しかし、近隣住民によると、
お酒を飲んで、そこで寝ていたり、前はそんなことなかった。
近所の評判は芳しくなかった。
施設の元宿泊者
6年間、この施設に住んでいたアキラさん(仮名・73歳)。
彼の証言は驚くべきものでした。
人間が住むところじゃない。
宿泊者が受給した生活保護費は施設が管理してさまざまな費用が差し引かれていました。
アキラさんには「毎日支給費」という名目で1ヶ月、2万7,000円が支払われるだけでした。
川口市の見解
川口市の見解を聞いてみました。
川口市生活福祉2課の濱田武徳課長は、
生活保護費の受け渡しは当事者間の契約に基づく行為。行政は口出しできない。
あの宿泊所に入る人は皆、契約書を結ばされます。「保護費の受給日に契約料を支払う」「一時金を宿泊所に預ける」と書かれていました。
善弘寺
一体、この施設は誰が運営しているのか?
そのヒントは入口の脇にある仏像にありました。
運営者を調べると「善弘寺」という宗教法人が運営していることが分かりました。
匿名ディレクターは今回の取材でかつて善弘寺と取引をしたことがある人物と会うことができました。
山田徹さん(仮名)は約1年間、善弘寺に仏具を納めていました。
ところが、
受け取った代金は160万円。
「実際、払ってもらう金額の?」
半分もいかない。原価もいかない。だんだん怒りが積もってきた。
金銭トラブルを抱えた宗教法人が生活保護費を丸ごと回収。
匿名ディレクターはその黒幕を捉えました。
黒幕の正体は?
宗教法人の善弘寺が運営する無料低額宿泊所。
生活保護の支給日、やって来たのは施設のマイクロバス。
さいたま市岩槻区役所前、全国から埼玉県内の7つの施設に収容、約300人に生活保護費を受給させ囲い込むんでいます。
宿泊者たちの手にはここでも生活保護費。そして受給した生活保護費はここでもやはり丸ごと回収されていました。
その時、区役所前にある男が現れました。
宿泊所関係者が挨拶をしています。彼は一体何者なのか?
すると男のもとに生活保護費を回収した関係者が、
渡した!
生活保護費を受け取り、
また来た!
その後も、男のもとに生活保護費が集まっていきます。
生活保護費を集めていた男が白い車に近づきます。車から顔を出したのは「あの男」でした。
金を受け取った男の正体は?
施設の元宿泊者のアキラさんに映像を見てもらうと、
会長だよ。親分だよ、この人のところへ金がみんな集まる。憎たらしいよ。
親分に匿名ディレクターが直撃!
親分は猛スピードで逃げていきました。
親分の自宅
2ヶ月後、あの親分の自宅を割り出した匿名ディレクター。
施設の実態について取材を申し入れました。
「テレビ東京ですが、○○さんいますか?」
いない。海外に行っている。
「寺の代表でよろしいですよね?」
それは分からない。何のこと?
「代表のご自宅ですよね?」
…・
今も生活保護費を丸ごと回収し、この寺は宿泊所を運営し続けています。
勧誘チラシ
「善弘寺」が配っている勧誘チラシ。
路上生活者に対して甘い言葉を並べています。
「こういうチラシをもらったことは?」
路上生活者の男性は、
これ見たことありますよ。
「どういう人が配りに?」
車で来て、年配の人。生活保護を受けないかって。施設から逃げてきたとかいろいろな情報が入る。とんでもないところ。
匿名ディレクターはチラシにあった清水という男に電話で連絡を取りました。
はい、清水です。
「チラシを見て電話をしたが、受け入れってどういうところ?」
施設だよね、寮だけど。生活保護者ばかり集まっているところ。
「生活保護を受けていない人は?」
受けなきゃいけない人は受けてもらって、いろいろある。今はいっぱいで入れない。
路上生活者を勧誘し、生活保護費を丸ごと回収。そのためだけに存在する宿泊施設。
闇の貧困ビジネスは増殖を続けています。