テレ東世界WEEK。モーサテでは変わる世界情勢を受けて新たな道を模索する日本の現場を番組キャスターが取材しています。
創業の地、大阪からいきなりニューヨークのナスダック市場への上場を目指すスタートアップ企業を取材しました。その大胆な経営手法には日本経済成長のヒントが隠されていました。
万博開催に向けて
大阪から"世界"を目指す
クラブミュージックが流れる会場で名刺を交わし合う人たち。10月に大阪で開かれた「スタートアップピッチ×クラブミュージック」というイベント。
投資家との出会いを求める起業家たちが集まりました。
自分たちのビジネスモデルをアピールするためにプレゼンタイムも設けられました。
登壇したのは48歳でスタートアップの立ち上げを決意したという中村敏康さん。
中村敏康さん

世界のIT大手GAFAはアメリカばかりだが、その牙城を崩すほどの野望を持ち、目標を高く置いている。
将来のライバルはアメリカの巨大IT企業と豪語する中村さん。立ち上げようとしているのは、いわばインスタグラムの音声版ともいうべきアプリです。
手始めにシニア層向けの「遺言メッセージ」を預かるサービスを始めたいと考えています。
会場を提供したのはNTT西日本。大阪では2025年の万博開催に向け、新しいチャレンジをしようという企業が増えているといいます。
NTT西日本
イノベーション戦略室
及部一堯さん

万博については関西の大企業だけでなく中小企業やベンチャーも万博でどんなことをやるのか考えているような状況。
大阪から再び世界へ
豊島晋作キャスター

見えてきました。あちらが万博の予定会場です。
建設が始まっています。
「夢洲」、2025年に開かれる大阪・関西万博の会場です。パビリオンでは未来の技術を実体験できるような様々な展示が行われる計画です。
1970年、大阪・吹田市で半年にわたって開催された前回の大阪万博。動く歩道やリニアモーターカー、電気自動車にテレビ電話、さらには全自動のお風呂など最新技術が展示され、世界中の人々を魅了しました。
あれから55年ぶりとなる大阪での万博開催。
経済効果は2兆円ともいわれていますが、さらなる世界のマネーを大阪に呼び寄せることはできるのでしょうか。
医学部出身CEO
大阪からナスダック上場へ
世界のマネーを大阪へ
大阪の金融の中心街、北浜。ここに万博開催よりも一足早く世界からマネーを集めている野心的なスタートアップがあると聞いて訪ねました。
出迎えてくれたのは社長の庄野裕介さん。そして、取締役の津賀弘光さんです。
社長の庄野さんは京都大学の医学部から経済学部に移り、在学中にワランティを創業。現在の社員数は9人と会社の規模は小さいのですが…
ワランティ
庄野裕介社長

上場セレモニーの対応をお願いします。
ナスダック側との調整もお願いします。
わかりました。

アメリカのナスダックに間もなく上場しようというのです。
すでに申請手続きを済ませ、株式公開のタイミングを見計らっている段階だといいます。
豊島晋作キャスター
なぜ東証ではなくナスダックに上場?

ワランティ
庄野裕介社長

資金調達だけではなく、世界的な知名度を得たくてナスダック市場を選択した。
豊島晋作キャスター
東証とナスダックの違いは?

ワランティ
庄野裕介社長

日本市場は投資家の保護を強く気にしているところがある。
東証の方が銘柄が粒ぞろいだが新規上場は厳しい。
ナスダックの場合は売り上げゼロで上場している会社もあるし、投資家が評価してくれれば上場できるし、株価がつくというのが大きな違い。
では、そのビジネスモデルとは一体どんなものなのでしょう。
ワランティ
庄野裕介社長

アプリで手持ちの家電製品を登録すると登録してから1年間無償で保証を弊社が提供する。
豊島晋作キャスター
競合はいない?

ワランティ
庄野裕介社長

競合はいなくて、こうしたビジネスを展開しているのは当社しかない。
世界的にもワランティのみ。
ワランティが展開するのは「フリーインシュアランス」というビジネス。フリーとはユーザーにとってまさに「ただ」という意味。インシュアランスは保険ではなく「保証」を意味します。
これはエアコンメーカーのダイキン工業をスポンサーとしたマンションオーナー向けのフリーインシュアランスの例です。
ワランティは不動産賃貸のセンチュリー21と協業し、傘下のマンションオーナーから個人情報を提供してもらいます。
そのデータを分析し、スポンサーであるダイキン工業に情報提供。
ダイキンはそれをマーケティング情報として活用するわけです。
マンションオーナーは情報提供の見返りとして壊れたエアコンの修理や買い替えの費用がワランティから無料保証されます。
オーナーはエアコンのメンテナンス費用が実質ただとなり、一方のダイキン工業側は新たな顧客情報が手に入ります。
保険会社と提携するワランティはエアコンの無料保証をしてもダイキンからのスポンサーフィーで十分な利益を上げられるという仕掛けです。
これまでダイキン工業のほかにもオムロンや日立グループの企業をスポンサーに事業を展開してきた実績があります。
豊島晋作キャスター
古い家電の保証にスポンサーがつく?

ワランティ
庄野裕介社長

逆にスポンサーは古い家電の情報ほど欲しい。
壊れやすいので買い替えの可能性が高い。
そういう情報を求めている。
今回の当社の仕組みを活用してもらうと一番知りたい他社ユーザーの情報まで手に入る。
豊島晋作キャスター
例えばトヨタの車にホンダが保証をつけて買い替え時にホンダの車を売り込むような?

ワランティ
庄野裕介社長

今後は自動車保険なども活用して、自動車情報を取りに行くことを考えている。
すでに日本国内ではビジネスモデルの特許を取得済みで、アプリユーザーは20万人に上るといいます。
海外で事業展開へ
資金調達も"世界規模"で
資金調達は"世界規模"で
庄野さんのパートナーのワランティのCFOを務める元銀行員の都賀さん。
ワランティ
津賀弘光取締役(CFO)

私はデット(銀行からの借り入れ)を中心に担当している。
海外に出て行って実績を積むことに成功すればブレイクスルーできるのではないか、それを銀行側も望んでいる。
海外でのビジネス展開を狙うワランティ、大阪に次ぐ第二の拠点としてオフィスを構えたのがシンガポールでした。
豊島晋作キャスター
なぜシンガポールに拠点を?

ワランティ
庄野裕介社長

シンガポールがアジア太平洋地区の中心になっている。
ほとんどの企業のアジアの統括がシンガポールにあるので。
海外展開への営業がしやすいというのが大きい。
地勢的なメリットだけでなくシンガポール進出にはもうひとつの狙いが…
ワランティ
庄野裕介社長

シンガポールは世界中の投資家や機関投資家が多く集まっているので資金調達が効率的というところがメリット。
個人資産家で数百億・数千億円の資産を持っている人が多いので、本当に彼らが気に入れば何億円・何十億円でも出すという状況。
大阪の本社では津賀CFOが金利が安い日本の銀行から融資を受け、シンガポールでは庄野社長が投資家の資金を引き出すための交渉をする。加えてナスダックに上場することで株式による資金調達をアメリカで行うというのがワランティ流の経営手法なのです。
豊島晋作キャスター
ナスダック上場後は世界中の投資家から注目を浴びるのでは?

ワランティ
庄野裕介社長

いまから覚悟はしている。
日米の大学入試の違いと似ていて、米国は入学がスタートで出るまでが大変。
自分を伸ばしていくのが大変。
日本の大学は入るのが大変で出るのが簡単。
本当にその違い、いかに自社を成長させるか。
大阪からアメリカ市場へのいきなりの進出。若い起業家はその夢を実現できるのか。
世界の投資家からその経営手腕が試されようとしています。