一般社団法人日本野菜ソムリエ協会
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5月、岡山県赤磐市の赤磐市役所。
日本野菜ソムリエ協会の福井栄治理事長(54歳)が市長にあるプロジェクトの提案に来ていました。
今回は赤磐の「スター農家育成プロジェクト」で今年度やって、農家の手取りを2割増やすか、年収1,000万円にもっていくプロジェクト。
福井さん、農家の年収を増やす試みを赤磐市と協力してスタートさせるのです。
友實武則市長は、
頑張った農家にはそれなりの収入が実現できると、今そういう体制にない。本当に収入を得られるような流れができたら面白い。
岩川美紀さん
そのスター農家育成プロジェクトで売り上げ2割アップを目指す女性がいました。
桃農家の岩川美紀さん(59歳)です。
岩川さんはこだわりの栽培方法で桃を育てています。
木を草と共生させて育てる草生栽培という方法です。
どんな利点があるのでしょうか?
除草剤を使わなくていいので自然のまま。本来の桃が持つべき力を使って桃を作る。
70本の桃の木を所有し、2016年度の売り上げは630万円ほどでした。
岩川さん、実は元客室乗務員。9年前に父が他界したことをきっかけに農家を継ぐことになりました。
しかし、桃農家ならではの苦労が…。
最大の収穫期が7月の頭から8月の頭くらいまでの1ヶ月ちょっと。1年分の収穫と1年分のお金を稼がなければいけない。
いかにそこで効率的に稼ぐことができるか今考えておかなければいけない。
桃の収穫が始まった7月。
福井さんが岩川さんのもとにやって来ました。
これまで何度も会ってアドバイスをしてきましたが収穫時期になっては初めてです。
いいね、こういうの。
作業場に入るなり福井さんの目を引いたのは岩川さんの農園の名前「MIKI'S ORCHARD」と書いてある手作りのシールです。
こういうところから。これが貼ってあって並べてあったら、すごく女性らしい、繊細って分かる。10分説明するより、これが全て表していると思う。あなたのところの売りはあなたなんだから。女性ならではというのを含めて、それが一番の売り、そこを最初に売り出そうよ。
自分の価値を知り、それをどうアピールするか、さまざまな売り出し方があると伝えます。
収穫
岡山県は白桃発祥の地。
岩川さんの桃が収穫の最盛期を迎えていました。
1年の苦労が報われる大事な時期。
しかし今年は心配なことがあったのです。
おしまい。これだけしか今日はない。
例年ならトラックいっぱい収穫できるそうですが3ケース足らず。雨の日が少なかったことも一因で売り上げに影響しそうです。
AKAIWA旨いMOMOコンテスト
7月30日、赤磐市山陽産業会館。
福井さんは赤磐市の桃農家を集め大掛かりな桃の品評会を仕掛けていたのです。
岩川と申します。
岩川さんも桃を出品しに来ていました。もちろん狙うはNo.1の称号です。
名産の大きな白桃で勝負。
審査するのは全国から集った野菜ソムリエたち36人。
16軒の桃農家がエントリーして、その中から野菜ソムリエたちが順位を決めます。
今日のように野菜ソムリエが集まって「これすごいよね」ということを全国に発信する。
野菜ソムリエたちが認めた桃を全国に発信することで赤磐市の桃農家全体を盛り上げることが狙いです。
野菜や果物のプロとして色、香り、味などの微妙な違いを評価していきます。
1つ1つ桃の特徴というか甘さだったり、みずみずしさだったり、口の中に広がる後味がどれも違っていて。
一際大きな白い桃、実は岩川さんが出品したもの。
審査員は食べるとすぐに評価を書き込んでいきます。
「甘いが少し若い。ガリガリとした食感。」
果たして岩川さんは入賞できるのか?
結果発表
スター農家育成プロジェクトを進める福井さんが品評会の結果を伝えに岩川さんのもとにやって来ました。
あなたが賞を取ってくれると思っていた。この3ヶ月間は何だったんだろう。生活者の視点とか、食べ手のメリットとか自分の価値とか、すっとやってきた。
レベルが高かった品評会。岩川さんは1位どころか入賞すら逃しました。
福井さん、作業場にあった赤い桃に目を止めました。嶺鳳という品種。
実は岩川さん、品評会にこの赤い桃を出すかギリギリまで迷ったそうです。
福井さんが試食してみます。
めっちゃ甘い。
糖度高いです。
岩川さんが白い桃で勝負したのには理由があります。
岡山では白桃が人気なため、赤い桃は受け入れられないと判断したのです。
岡山の桃イコール白桃と思っている人からすればちょっと違うよね。でも日本全体で見れば、こっちのほうが桃らしいと思っている人が6~7割。
私としては岡山の桃って白い桃を売りたい。
「私としては」なんていらないと思うけど。お客様が何がいいと感じてもらえるかが一番重要で、生産者の矜持、プライドは絶対に重要だと思うけど一番に考えるべきことはお客様がどういう桃で、サービス、情報提供をしたら喜んでくれるかっていうのが一番。
岩川さん、言葉がありません。
お客様が欲しいと思う、食べたいと思っている桃と、関西と関東でお客様の求めるものが違ったり、何も考えていなくて、ただ単に採れた桃を出荷しているという現状なので、やはり勉強不足。
横浜水信
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横浜市、福井さんがやって来たのは大正4年創業の老舗フルーツ専門店「横浜水信」。
厳選された果物がずらりと並ぶ高級店です。
フルーツの盛り合わせが5,000円。ハートの形をしたスイカはなんと2万円です。
福井さんはスター農家を育てるため赤磐の桃の販路の拡大へ協力を求めに来たのです。
加藤信明社長、
うちは美味しくて美しいのは当たり前なので、そこに商品のこだわりをお客様に一緒にストーリーを共に伝えるということが役目。
数日後、福井さんからの紹介を受けて横浜水信のバイヤー、早野史倫さんが岩川さんの畑を視察にやってきました。
この木が嶺鳳なんですけど。
岩川さん、岡山では人気のない赤い桃、嶺鳳の木へ案内しました。関東なら赤い桃が売れるかもしれない。
大きいですね。
持って帰ります?
まずは持ち帰って検討してもらえることになりました。
岩川さん、自分の桃のアピールポイントを前面に打ち出すことに。
「元CA」の文字が。
この積極性が大きなチャンスを呼び込むことになります。
試食販売
8月、横浜。
老舗のフルーツ専門店「横浜水信」。
ここに岩川さんのあの赤い桃「嶺鳳」が並びます。横浜水信で取り扱ってくれることになったのです。
値段は1玉、なんと2,000円。岡山で売るより高い値段です。
その隣には岩川さんの主力商品でもある白い桃も。
岩川さんと福井さんが売り場を見にやってきました。
感激です。ここに並んでいるのを見るのは。
すると突然、福井さんが何事も経験と岩川さんに試食販売を勧めました。
そこは元キャビンアテンダントの岩川さん。
いただきます。
おいしい。甘い。
試食をした人が桃を買ってくれました。
どんな点が良かったですか?
贈り物にするのに作った人の顔が見えて、とてもいいかなと思ったので。美味しかったです。
首都圏の高級店で自分が作った桃を喜んで買ってくれる人がいる。これまでにない経験は岩川さんの大きな自信になったようです。
どう?実際に売ってみて。
美味しいって言ってくれてうれしい。
頑張ってきたかいがあったという喜びにもなるだろうし、勉強にもなると思う。
生の声が聞こえましたからね。
そろそろ桃の収穫時期が終わります。果たして売り上げ2割アップの達成は?
売り上げ2割アップ
農家の年収アップを目指すスター農家育成プロジェクト。
11月、岡山県赤磐市。
この日、福井さんは岩川さんの桃の売り上げが2割アップしたか確認に来たのです。
実は気になっていることがありました。
今年どうでした?岩川さんは。
今年は干ばつで水やりができない畑があって、まるっきりダメだった木が2本、収量が半分になった木が2本。
6月に雨が降らない日が続き、その影響で桃の収穫量は2016年産より約2割減です。
果たして売り上げは?
今年は昨年比、金額だけでいうと99%。
売り上げで99%ね。
収穫量は2割減ったのにもかかわらず去年とほぼ変わらない630万円を売り上げていました。
販路拡大や自らをアピールすることで単価を上げることに成功していたのです。
2018年も横浜水信が取り扱ってくれることが決まっているといいます。
農業の面白さとか、そういうものを発見できたような気がする。来年はこれをもとにして今まで挑戦してきたことをもっと自分の中で分析して、まだまだ新しいことにも挑戦していきたい。
福井さんもこのプロジェクトを成功させることができました。次へと繋がります。
今年は雨が振らなかったり、そういう自然環境の中でいえば最低限20%、前年度より超える目標がクリアできたのでほっとしている。スター農家を育成して地域全体を活性化させて、いろいろな地域に伝播していくプロセスが結果的に農業を次世代に継承することにつながるのではないかと思っている。
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