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[WBS] 中国国境で揺れる島!北方領土交渉の未来図?

2016年12月6日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

黒竜江省撫遠市

北京から北東に1,700kmにある黒竜江省撫遠市。

この町は中国の中で最も東にある最東端の町です。

凍っているのよ。冷蔵庫なんていらないの。

この日の最低気温は氷点下24度。

締めたばかりの鶏もすぐに冷凍保存できる極寒の地です。

北京支局の吉田広さんは、

あの川の向こう全てがロシアの領土。この細い川を隔てて長年向き合ってきた。

中国とロシアの国境線を流れるアムール川ウスリー川。その中洲にあるのが大ウスリー島タラバロフ島。山手線5つつがすっぽりと入ります。

元々、中国の撫遠市に属していた2つの島。

しかし1929年、鉄道利権を巡る武力衝突でソ連軍がこの地を占拠し、ロシアが長く実効支配を続けてきました。

領土紛争

かつて中国とロシアは、この島を含めた国境地帯を巡り領土紛争を繰り返してきました。

1960年代には軍事衝突にまで発展し、約150万人もの軍隊が睨み合っていました。

当時はロシア側に魚釣りに行って、見つかると死ぬほど殴られたものよ。

しかし、ロシアの実効支配から80年近く経った2008年、度重なる交渉を経て西側半分が中国領に、50対50の分割をロシアから持ちかけたと言われています。

友好の象徴

実はこのウスリー島を巡る一連の交渉、2013年に行われた日露首脳会談でプーチン大統領が北方領土問題の解決の例として上げたといわれています。

ウスリー島は友好の象徴として中国とロシアが共同開発することに。

共同開発からの期待感から中国側には「中露ぼ友情を極東の街で融合させよう」というスローガンも。

中国はロシアとの合意を受け、島に隣接する撫遠市などの開発を急ピッチで進めています。

2014年、北京などと結ぶ空港のを新設した他、鉄道や高速道路なども開通。

極東の僻地に巨額なインフラ投資を行いました。

さらにロシアとの貿易拡大を見越し、新たな港を建設。

先月には工業団地もオープンしました。

そして最も力を入れるのが観光です。

観光

大きい魚でしょ、チョウザメよ。一緒に泳いでいる小魚はエサよ。

ここは2017年春のオープンを予定している水族館。

地元で見つかった不思議な巨大魚も展示されています。

ここは観光客向けの水族館、オープンすれば観光客がたくさん来るわよ。

2016年5月に視察に訪れた習近平主席の大号令の元、この国境地帯を観光としてとして開発を進めようとしています。

中国が観光の目玉と据えているのが「ウスリー島ツアー」。

島に渡るための立派な橋も掛けられました。

歴史的な島を夏場の避暑地として観光客に訴えたい考えです。

開発関係者は、

観光客が多くなる、島のお客様はこっち側にも来るぞ。

ロシア

しかし要となる島の共同開発に意外な現状が。

港の管理人は、

まだ島の開発は本格的ではない。

中国が前のめりの開発を進めていくも、パートナーとなったロシア側が一向に動かないといいます。

実際のウスリー島の状況はどうなっているのか?

島に到着すると、そこには荒れ地が広がっていました。

牧場は放置され、厩舎は空っぽです。

国境防衛に当たる旧ソ連とロシアの軍人がかつて駐留していた施設もいまでは廃墟同然に。見張り台もそのまま残されています。

その看板、「国境の境目、立入禁止」。

共同開発を巡り、当初ロシア側は2016年までに約530億円を投じてホテルや貿易施設などを整備する計画でした。

しかし道路の舗装さえされていないのが現状です。

島の共同開発にはロシア側の積極的な関与が不可欠だが、ロシア経済は低迷。

逆に中国に1,000億円規模の投資を求める始末で極東の地、ムスリー島の開発計画は停滞しています。

撫遠市民は、

ロシアは開発なんかしていない。言っているだけで実現しないんだ。

中国とロシアの国境地帯で揺れる大ウスリー島。

北方領土交渉に臨む上で一つの教訓となりそうです。

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