小麦やトウモロコシなどの一大生産国であるウクライナにロシアが侵攻したことで家畜の生産に欠かせない飼料の価格がいま高騰しています。こうした中、飼料価格の高騰などに左右されずに人工的に食用の肉を作り出す培養肉の技術に注目が集まっています。この培養肉、世界で懸念されている食の確保、いわゆる食料安全保障の問題を解決する救世主となるのでしょうか。
「培養肉」が食の救世主に!?
一つ星レストランで進む"試作"
食い倒れの街、大阪。
住宅街の一画にあるこちらの日本料理店「日本料理 雲鶴」。
骨までまるごと食べられる鯛が名物料理で8年連続でミシュラン一つ星を獲得しています。
料理長の島村雅晴さん、ある料理を試作しています。
利光泰輔記者。
香ばしい匂いがします。
ちょっとスパイシーというか、ちゃんと動物性のたんぱく質だから。
出来上がったのがこちら。一見普通のつくねに見えますが…
これは若ごぼうと培養鶏肉のつくね。
これが培養鶏肉。
鶏の細胞を取り出して細胞だけを増やして作った肉。
培養肉とは鶏や牛などから細胞を取り出し、それを体内に似た環境で人工的に培養して作る肉のこと。
店ではまだ出してない。出せない。培養肉に関するルール作りが整ってない。
国内では現在安全基準などのルールがないため販売や試食ができないのです。
店の3階に上がる島村さん。割烹着から白衣に着替えて向かったのは培養肉を培養するラボです。
実は島村さん、東京に拠点を持つ研究者と培養肉のベンチャー企業を立ち上げ自らも培養肉の研究を始めました。
ここに映っている黒っぽく、青っぽく映っているのが細胞。
まず細胞を培養液の中で増殖し、細胞自身の力で塊になっていきます。
500円ほどの大きさになるまで3ヵ月ほどかかります。大量生産をしていない現状ではコストも数万円かかるといいます。
それでも島村さんが培養肉に取り組むワケは…
食料の安全保障の問題。
少なくなっている資源を無理にとって減らしてしまうのではなく、足りない部分は培養肉で補えればいい。