イギリスで先月起きたガソリン不足の騒動の様子です。
ガソリンの奪い合いで客同士が殴り合いになるという一幕もありました。
実はこの騒動、ガソリンをスタンドまで届けるドライバーがいないという人手不足が原因だったのです。いま人手不足は世界各国で問題になっていますが、イギリスはクリスマスにも危機が忍び寄っています。
現在は平常を取り戻しているイギリスのガソリンスタンド。
国内で50のスタンドを運営するへマント・タンドンさんに先月の騒動について聞くと…
この燃料危機の前から10万人も長距離ドライバーが不足していた。
需要は膨れ上がり、燃料会社は対応できなくなったんだ。
イギリスではもともとドライバー不足の状況でしたが、コロナ禍からの需要回復が世界的に起きたことでそれが一気に顕在化したのだといいます。
慌てたイギリス政府は軍を投入し、各地のスタンドにガソリンを輸送。騒動は一旦収まりましたが…
この問題はまたどこかで起きる。正常化しても人手不足は解決していない。
さらに人手不足による新たな問題も起きていました。
スーパーマーケットを訪ねると野菜や果物の棚が空です。
一体何が起きているのか、ロンドン近郊の農家を訪ねました。
フルーツ農家のスティーブン・テイラーさんは肩を落としていました。
1ヵ月前に収穫の時期が終わったが人手が足りず、作業が終えられなかった。
腐ってきてしまった。
触るとつぶれて汁が出る。
とてもスーパーの棚には置けない。
人手不足のために収穫できなかった果実が腐っていました。
東欧の労働者は18~25歳で夏休みにイギリスに来て収穫の仕事をする。
それが終われば国に帰る、ウィン-ウィンの形だったのに。
例年雇っていた東ヨーロッパからの季節労働者がイギリスのEU離脱(ブレグジット)により来られなくなったのです。
イギリスの失業者が求めるのはフルタイムの仕事。
果実の収穫は年に数ヶ月の季節労働なのでイギリス人はやりたがらない。
もともとブレグジットはイギリスの雇用が移民に奪われているとジョンソン首相などが主張し、国民投票の末に決定されたもの。そのため政府は農家の窮状を知りつつも動きは鈍いままでした。
イギリスのジョンソン首相。
無秩序な移民による「低賃金・低スキル」の前の失敗モデルに戻すつもりはない。
しかし、そのイギリス政府も追い込まれていました。イギリス国民が1年で最も楽しみにしているクリスマスがピンチだというのです。
クリスマス危機とはどういうことなのでしょうか。
ロンドン支局の中村航記者。
こちらはイギリス・シェフィールドの豚の畜産農家です。ここでは人手不足によって意外な問題が起きようとしています。
2,000頭の豚を育てる農家のスティーブン・トンプソンさんはこのままではクリスマスが台無しになると話します。
「ピッグス イン ブランケット」がなければクリスマスはキャンセルだ。
イギリスのクリスマス料理の定番、ソーセージをベーコンで包んだ「ピッグス イン ブランケット」。今のままでは食材が食卓に届かないというのです。
ブレグジットによるビザの厳格化で食肉処理施設でも主力を担っていた東ヨーロッパ出身の人たちが激減しています。
農場は成長した豚で溢れていました。食肉処理場に思うように出荷できないためです。この状態が続くと…
普段は肉にするために殺される豚を理由なく殺し、焼くことになる。
この国にはフードバンクもあって、食うに困る人もいるのになんてことだ。
今月始め、トンプソンさんたちはジョンソン首相率いる与党保守党の党大会の会場前に集まり抗議活動を展開。プラカードにはこんな訴えが…
我々がクリスマスに求めるのはピッグス イン ブランケットだ。
クリスマスの定番料理が食べられない危機を訴えました。その甲斐もあってか…
ジョージ・ユースティス環境相。
食肉業の労働者を一時的に最大6ヵ月の労働を認めることを決めた。
政府は食肉技術を持つ外国人800人に半年間の短期ビザを発行することを決定しました。
クリスマスは間近、間に合うのでしょうか。
追加のビザはすぐに発行してほしい。そうでないと数週間で厳しい状況になる。