東京・豊洲市場の国産ウニの価格。海外での消費量が増加し、上昇トレンドにありますが、去年は北海道で発生した赤潮の影響で跳ね上がりました。回転寿司チェーンや通販サイトではウニの取り扱いをやめるような店も出てきています。それを解決するために始まった新たな取り組みを追いました。
ウニの高騰どこまで?
意外な"ヒット商品"も
いま全国のスーパーでヒットしている商品があります。それが「ウニのようなビヨンドとうふ」です。今年3月の発売以来、およそ300万個を販売しています。
この商品を開発したのは相模屋食堂の鳥越淳司社長。
相模屋食堂
鳥越淳司社長

断面を斜めにするように乗せるとウニっぽくなる。
クリーミーに仕上げたとうふはウニの食感にそっくり。味は魚のだしなどにウニのエキスを少しだけ入れて風味を近づけたそうです。
最近のウニの高騰がヒットにつながったと鳥越社長はいいます。
相模屋食堂
鳥越淳司社長

ウニで同じ重量だと4,000円とか6,000円になる。
コストパフォーマンスがあると好感されたのではないか。
今後、ウニの価格は上昇すると見られています。ウニを取り扱う業者に聞いてみると…
豊市市場ドットコム
八尾昌輝さん

中国の需要が高まると、そちらへの輸出量が増えてしまうので、さらに高くなる可能性も非常に高い。
今年は春先に一大消費地の上海などでロックダウンが行われた影響でウニがだぶつき価格は下がりました。しかし、ゼロコロナ政策が緩和され経済活動が再開するのに伴いウニの消費が増え、再び価格も上昇すると見られているのです。
そうした中、世界最大規模のウニ工場が山口県に誕生。安くておいしいウニを育てるプロジェクトが動き出していました。
カギを握るのは、なんと空っぽのウニ!?
海の厄介者を絶品に!?
"世界最大"ウニ蓄養工場
山口県長門市、ここに先月、巨大ウニ工場「KAYOI UNI BASE」が誕生しました。
中を覗くと水槽がずらり、その数およそ200基。そこにいたのはムラサキウニ。
世界最大規模のウニの蓄養工場だといいます。
手掛けたのはウニノミクスの武田ブライアン剛社長です。投資コンサルタントから転身し、10年前からウニを研究、事業化にこぎつけました。
ウニノミクス
武田ブライアン剛社長

身の入っていないウニを陸上の蓄養施設に入れて、身を太らせて商品化するのが我々の技術。
いま身の入っていないウニが全国で問題になっています。
海底に黒く見える点は全てウニです。これは磯焼けという現象で地球温暖化などの影響で増えすぎたウニが漁場の海藻類を食べ尽くしてしまっているのです。
ウニは漁業者にとっていわば厄介者。
しかも、エサのない場所で育ったためやせ細り、売り物にはなりません。
この工場では厄介者となっている身の入っていないウニを漁師から買い上げて蓄養します。
ウニノミクス
武田ブライアン剛社長

ここが閉鎖循環式の「ろ過システム」。
実はウニはきれい好き。ウニノミクスは生育に最適な水温や水質を保ちながら常に海水を循環させるシステムを独自に開発しました。
さらにウニの味を高めるため、昆布の端切れなどでつくった餌も開発。身のないやせ細ったウニにおよそ2ヵ月与え続けると…
中には身がたっぷり入っています。
ウニノミクス
武田ブライアン剛社長

あと1~2週間でパンパンになる。
なんの価値もなかった厄介者のウニを商品化することに成功したのです。しかも、取れば取るほど海の環境も改善できる好循環を生み出しました。
工場の落成式の翌日、地元の飲食店に工場からウニが届きました。
旬処 いさ路
中村勇夫社長

養殖ウニなら値段設定しやすい。
本当に期待している。
この日は殻付き980円で提供します。
お客さん

うまい。
武田さん、今後全国各地にウニ工場を建設して手頃な値段でウニを食べられるようにしたいといいます。
ウニノミクス
武田ブライアン剛社長

長期的には価格帯を下げて、消費者を増やし環境改善へとインパクトのある事業にしたい。