ビジネス関連 ワールドビジネスサテライト

[WBS]避難民1,400万人超!物価高がウクライナ支援に暗い影

ワールドビジネスサテライト(WBS)

ウクライナ侵攻が長期化し、国外へ避難した人は延べ1,400万人を超えました。そうした中、世界的な物価の高騰がその避難民の支援にも暗い影を落とし始めています。世界で何が起きているのでしょうか。この瞬間の日本を取材しました。

生活費急上昇 ウクライナ支援にも打撃!?

イギリス・ロンドンの住宅街。ウクライナの避難民を自宅に受け入れている人がいます。

ジョン・ノールズさん。4月からオルハさんとその子どもたちを受け入れ暮らしています。

ジョン・ノールズさん

きょうは算数と英語の授業かな?

オルハさんの娘

英語と…科学かな。

食事の用意だけでなく子どもたちに英語を教えるために本を読んであげることもあります。

ジョン・ノールズさん

ウクライナの状況を何度も見て心を痛めた。
両親が動かされ、何かしなければと感じた。

オルハさんはウクライナのヘルソン出身です。

侵攻初日のことを記した日記。

オルハさん

爆発の音で目が覚めた。
それまで見ていた夢もすぐに吹き飛んだ。

それでも避難から半年あまり、ノールズさんのお陰でイギリスに馴染んできたといいます。

オルハさん

イギリスには感謝している。ウクライナ避難民にできる限りのことをしてくれている。

イギリスでは個人が自宅で避難民を受け入れる制度を導入。ホストがいれば最長3年間暮らせます。こうした制度で14万人を超えるウクライナ人がイギリスに滞在。

しかし、いまある問題が…

ジョン・ノールズさん

私は幸い支援を続ける余裕があるが、中には、このインフレのせいでもう支援を続けられない家庭も出てくるだろう。

消費者物価が1年前に比べ10%以上アップ。ウクライナ侵攻が長期化する中、受け入れが半年を超えた家も多く、この生活費の急上昇が重くのしかかります。

ロンドンの街中でも…

ロンドン支局
中村航記者

こちらロンドンでもウクライナへの支援を意味する国旗が掲げられていますが、戦争が長引いてきて、その数がかなり減っています。

生活費上昇の影響でウクライナ支援を減らしてでもイギリス人への支援を増やすべきという人が4割近いのが現状です。

これに危機感を募らせるのがリチャード・ハリントン氏。ジョンソン政権で難民支援の基礎を作った人物です。

元難民担当閣外大臣
リチャード・ハリントン氏

多くの人に家計の困難が襲いかかっている。
もしホストが避難民の受け入れをやめたら行政が宿泊施設を提供しなければならなくなる。

ハリントン氏が訴えるのは現在350ポンドの受け入れ家庭への支援金の増額。まだイギリスでは大きな動きにはなっていないもののヨーロッパで広がるウクライナ支援疲れを警戒しているのです。

元難民担当閣外大臣
リチャード・ハリントン氏

正確には"受け入れ疲れ"と表現される。
ポーランドなどウクライナ避難民を何百万人も受け入れる国でいわれている。
ホストはお金のために受けれいていない。
まっとうな心の持ち主だから受け入れている。
しかし、シャワー、洗濯、調理など光熱費が実際には負担になっている。

世界で支援疲れの広がりが懸念される瞬間、ニッポンは?

京都キッチンカーにウクライナ支援のヒント

秋の観光シーズンを迎えた京都。

お祭り会場に出店する1台のキッチンカーを覗いてみるとウクライナ人の姿が…

イリーナ・ヤボルスカさん

とても幸せです。

働く場をつくる!ウクライナ支援の新たな力

京都に初めて出店したというウクライナ料理のキッチンカー。

クレープ風の生地でチーズやチキンなどをくるんだウクライナの家庭料理「ブリンチキ」が目玉商品です。

お客さん

食べたくなっちゃった。

お客さん

はじめて食べたような食感。
もちもちしている。

店を切り盛りするのは3月にウクライナから避難してきたイリーナ・ヤボルスカさん(51歳)。

娘夫婦が住む滋賀県で7月にキッチンカーを始めました。

イリーナ・ヤボルスカさん

この仕事は幸せ。
人と接するのも大好き。

そんなイリーナさんが今回京都にキッチンカーを出したのには理由があります。それは…

イリーナ・ヤボルスカさん

最初はレジのやり方を見てもらおうかな。

この日、店の見学にやってきたブラディスラバさん(21歳)。彼女も避難民です。

2,000人の避難民を受け入れている日本。京都周辺の大学などで勉強している学生も多くいます。

京都でキッチンカーを本格的に出店することで周辺に住む避難民に働く場を作り出そうというのです。

イリーナ・ヤボルスカさん

私と同じ厳しい状況になったウクライナ人を絶対に手伝いたい。

ブラディスラバさんは9月末に身寄りのない日本に避難したばかり。家族は今もウクライナで暮らしています。

ブラディスラバさん

ウクライナの人は戦争に慣れてきたのが現実。
「ああ爆弾だ…いやだね」みたいな。
戦争が日常になるなんてひどい。

避難民が通う多くの大学などでは授業料を全額免除して受け入れています。

住宅は自治体や企業が無償で提供。

そうした支援がある一方、ブラディスラバさんたち避難民が求めているのは自立するための仕事です。

イリーナさんの娘夫婦

採用です。

その場で採用が決まりました。

ブラディスラバさん

嬉しい。これで働けるわ。
日本にウクライナ料理を広げられる。
それにウクライナ軍に寄付もできる。

すでに3人の避難民が働くこのキッチンカー。イリーナさんは多くの避難民の自立を支援するためビジネスを拡大するつもりです。

お客さんからも温かい声が…

お客さん

おつりは寄付するよ。

お客さん

おいしい。
がんばってください。

イリーナ・ヤボルスカさん

人が無関心でないことがとても嬉しい。
この仕事ができて本当に幸せ。

-ビジネス関連, ワールドビジネスサテライト
-