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[WBS]ウクライナ侵攻から半年!ロシアへの経済制裁に“抜け穴”

2022年8月24日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

ロシアによるウクライナ侵攻から半年が経ちました。東部を中心に戦況は膠着状態が続いていて未だに終わりは見えません。国際社会によるロシアへの経済制裁は効いているのでしょうか、ロシアの市民を取材すると意外な"抜け穴"があることが分かりました。

ウクライナ侵攻から半年!ウクライナ大統領「運命と戦っている」

ウクライナの首都キーウ。静かな街にサイレンが鳴り響く中、24日に旧ソ連からの独立記念日を迎えました。

去年は軍事パレードが行われ、市民も多く集まり盛大に式典が開かれた独立広場。しかし、今年は24日はロシアが侵攻してからちょうど半年の日、攻撃の的になるのを警戒し、大規模な集会は禁止され、代わりに破壊されたロシア軍の戦車が並べられていました。

市民は…

ウクライナ市民

21世紀に戦争が始まるとは思ってみなかった。

ウクライナ市民

年内には戦争が終わって来年の春は楽しく過ごしたい。

ゼレンスキー大統領もメッセージを公開。

ウクライナ
ゼレンスキー大統領

私たちは半年間持ちこたえた。苦しいが拳を握りしめて戦っている。

そして壊れた戦車の前で「ドンバスもクリミアもどんなに困難でも取り戻す」と強調しました。

またオレナ夫人とともに戦争で犠牲となった兵士たちを悼みました。

国連によるとこの半年間で犠牲となったウクライナ市民は5,500人を超えました。

こうした中、ロシアメディアによるとロシアのショイグ国防相は24日に「民間人の犠牲を減らすため、攻撃のペースを控えている」と発言。民間人の犠牲はウクライナが「人間の盾にしている」からだと批判しました。

寝台列車で"買い物ツアー"!ロシア 経済制裁の抜け穴は

では、ロシアの国民はいまの状況をどう見ているのでしょうか。

モスクワ市民

兵士が死んでいくて全てが悲しい。戦いは戦いだから何もできない。

モスクワ市民

プーチン大統領は国を統制する強いリーダー。
彼の政策は正しいと思う。

ロシア国内ではいまもウクライナ侵攻を支持する声が圧倒的に多く、プーチン大統領の支持率は80%を上回り続けています。

経済制裁の影響で4-6月期までのGDP(国内総生産)は1年前に比べ4%のマイナスとなりましたが、政権に打撃となるレベルではありません。

そのロシアを支えるのがロシアの西側に接するベラルーシです。ルカシェンコ大統領はロシアの侵攻を一貫して支持し続けています。

その両国の友好関係を象徴するのが…

モスクワ支局
バレリー・ベロゼロフ記者

金曜日の夕方6時17分を過ぎました。今日初めてモスクワから隣のベラルーシ行きの観光列車が発車します。

8月に運行を開始したモスクワからベラルーシの観光名所をめぐる寝台列車「ベラルシアン・ボヤージュ」。3泊4日で6万8,000円、3万ルーブルから。

寝室や食事ができるスペースなども完備されています。

乗客

ロシアトベラルーシに国境はない。同じ国みたいなものだ。

さらにベラルーシの駅に到着するとバス観光が始まりました。数百年の歴史を誇る古城や教会などを訪ねます。

そして、買い物も旅の目的の一つ。食料品店ではロシアでは販売中止となったビール「ハイネケン」も買うことができます。

さらにロシアを撤退したアパレル世界大手ZARAグループの店舗のほか、アップル製品やサムスン製品もベラルーシ国内の店なので自由に買えるのです。

ツアーガイド
アレクサンドラ
ジノイエワさん

30代の人たちはブランド品がどこで買えるか聞いてくる。

西側諸国と飛行機の直行便がなくなったロシアでこの「ベラルシアン・ボヤージュ」は大人気で満席の状態が続いています。

RZDツアー
バレリー・シェルコフ取締役

制裁がなくてもロシア人にとってベラルーシは大人気の旅行先。
今の需要は制裁のおかげでコロナ前を上回っているのは間違いない。

もともと商品の分野で結びつきが強かったロシアとベラルーシ。モスクワの食材店ではこんな光景も。輸入の禁止でロシアでは入ってこないはずのイタリア北部で作られるパルミジャーノ・レッジャーノチーズが売られていました。

番組スタッフ

これらはベラルーシ産ですか?

食材店

そうだよ。

番組スタッフ

輸入品ではなくて?

一度、イタリアからベラルーシに渡り、そこでベラルーシ産のタグに付け替えられた可能性が指摘されています。

ほかにもベラルーシには海がないのにベラルーシ産のムール貝が出回るなど、ヨーロッパの食材がベラルーシ産に変身してロシアの市場で販売されるケースが目立っているのです。

モスクワ市民

私たちは兄弟国だ。もっともっと結束は強くなる。

ロシア 燃料収入ほぼ変わらず!制裁強化に必要なことは?

ロシアに友好的な国はほかにも。イランがロシアに大量のドローン兵器を提供する準備を進めているとされるほか、北朝鮮はロシアが占領したウクライナ東部に建設労働者を派遣するとの報道が出ています。

ただ専門家はこうした動きはロシアへの経済制裁が効いている証拠だといいます。

東京大学
公共政策大学院
鈴木一人教授

経済制裁で一番効いているのは武器、弾薬を手に入れられなくなってきていること。
ロシアの仲間になってくれそうな国がイランや北朝鮮しかないので、そういったところの調達に依存している。

一方で制裁が難しいのがエネルギーです。原油や天然ガスの輸出によるロシアの収入はウクライナ侵攻前とほぼ変わっていません。ヨーロッパが輸入を減らしているものの原油価格が高騰したことで相殺されているのです。

さらに…

東京大学
公共政策大学院
鈴木一人教授

EUは年末までに原油(ロシア産輸入)の90%を減らす方向で動いているが、ロシアが中国やインドにさらに輸出することはもちろん考えられる。
ロシアの収入自体は減らないという結果になるかもしれない。

またヨーロッパではロシアからの天然ガスを輸入しづらくなったことでガソリン代や電気代が高騰。国民の不満が高まれば経済制裁を続けることも難しくなります。そこで必要なのが…

東京大学
公共政策大学院
鈴木一人教授

ゼレンスキー大統領がこれから先、どういう形で戦争を終わらせていくのか。
ビジョンを見せていくのが結構大事かなと思っていて、これからどの程度の期間で何を成し遂げようとしているのか。
西側諸国が痛みを感じるような制裁はここまでは続くけど、ここまでは我慢してください。
そういう言い方をして「ここまでなら頑張ろう」という気持ちにさせることが大事。

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