ロシアの侵攻を受け、ウクライナからの避難民が400万人を超える中、日本の受け入れも本格化してきています。日本での避難を希望するウクライナ人を乗せた日本の政府専用機がまもなく避難先のひとつであるポーランドを飛び立とうとしています。
ウクライナ避難民 日本へ!まもなく政府専用機離陸
田口智也記者

いま私はワルシャワのショパン空港の目の前にある丘の上にいます。
奥のほうに日本の政府専用機を2機確認することができます。そのうちの1機にはポーランドを訪問している林外務大臣が、そしてもう一つの機体に日本への避難を希望しているウクライナ人の方が20人乗っているとみられます。今はまだ機体は動いていませんが、この後まもなく離陸するものとみられます。
今回、われわれはこの機体に乗っている21歳のウクライナ女性を取材することができました。今回、日本に渡る方の中には身寄りのある方も多いですが、彼女の場合は日本に家族も友人もおらず、まさに一人で旅たとうとしています。新しい人生を始めようとする彼女の決意と見送ることになった家族の絆に迫りました
密着21歳ウクライナ女性!戦地から日本へ避難する理由
バルト海に面したポーランドの海辺の町ブワディスワボボ。
ここにウクライナの激戦地ハリコフから逃れてきたウクライナ人がいます。ハンナ・メドベージェワさん(21歳)です。
ハンナ・メドベージェワさん

急に爆撃が始まって、みんな外に出て、ATMでお金を下ろし始めて。
母親と妹の3人家族のハンナさん。ロシアの侵攻開始から1週間ほど経った3月上旬、最低限の荷物とパスポートを持ち3人ともポーランドに非難しました。
大学にも通えなくなりこの先不安ばかりを抱えていた中、ハンナさんは前に進む決断をしました。
見せてくれたのは…
ハンナ・メドベージェワさん

アニメを見て日本に興味を持ちました。
日本のアニメキャラが描かれたTシャツです。
ハンナ・メドベージェワさん

人生の勉強になります。学校では教えてくれないことや人生で経験できないことも日本の文化から知ることができます。
もともとマンガなど日本の文化が大好きなハンナさん。アートに携わる職に就くのが夢で大学では音楽の勉強をしていました。日本が避難民を受け入れていることを知り、家族と離れ離れになっても一歩ずつ前に進むため日本行きを決断したのです。
ハンナ・メドベージェワさん

母は日本は遠いので反対していたけど私の夢だったので理解してくれました。
日本語を勉強したいし、自分の職業を上達させたい。
いつか自分の道を選ばないといけない。
出発2日前、飛行機が飛び立つワルシャワへと電車で移動。母と妹も付き添います。
母・ジュリアさん

なんで隠れているの?彼女(妹)も日本に行きたいのでしょう。
5時間以上の長旅。到着した頃にはすっかり夜になっていました。この日が3人が一緒に過ごす最後の夜。母ジュリアさんは前に進もうとする21歳の娘の決断を賢明に受け入れようとしていました。
母・ジュリアさん

心は泣いているけど、これが人生です。
心配だけど娘が安全な場所にいてくれることが一番大事。
彼女がこれまでに乗り越えたことを考えると娘に良いことがあるように祈っています。
夜が明けた3日、日本大使館でPCR検査を受けたハンナさん。
出発の準備が整い、家族3人最後の時間を過ごします。
母ジュリアさんが取り出したのは大きなケーキ。娘たちの大好物を最後に食べさせたいと持参していました。
母と妹は当分ポーランドに滞在し、お金を貯め日本にいるハンナさんを訪ねるのをこれからの目標に決めました。
母・ジュリアさん

全て大丈夫よ。
ハンナ・メドベージェワさん
愛している。

母・ジュリアさん

悪いことは過去に置いて、これからは明るい未来しかないです。
避難してきた人と娘を守ってくれる日本という国にとても感謝しています。
ハンナ・メドベージェワさん
こんな厳しい時に私たちのことを忘れず応援してくれる日本に感謝をいいたい。
ありがとう。

ウクライナ女性日本へ!求められる避難民のケア
お母さんのジュリアさんはハンナさんを送ることになる日本のことを信頼していると、娘を守るためにやるべきことを全てやってくれると話していました。こうした家族の思いに応えるためにもハンナさんのような身寄りのいない人をどうサポートしていくのか今後も模索が続いていくことになりそうです。
ウクライナの若者は特にハンナさんのように日本に興味を持っている人も多いそうですが、一方で日本がウクライナの方を受け入れているということ事態を知らないということもあるそうです。ハンナさんのようにネットで情報を得る人もいますが、例えば避難所などで直接積極的に募集をしてくれればもっと日本に行きたい人も増えて、ハンナさんも心強いと話していました。
また今回サポートにあたった日本の職員の方にハンナさんは一生懸命やってくれたと本当に感謝をしていました。
日本が遠く離れたウクライナの人々に手を差し伸べようとしていることを積極的に情報を発信していくことも今後必要になってくると感じました。
一方、キーウ周辺ではウクライナ軍がロシア軍に占領されていた町を奪還したと伝えられていますが、民間人とみられる多くの遺体が発見され「戦争犯罪」だと非難の声が上がっています。
410人の民間人遺体!ロシア軍による虐殺か
ウクライナ軍の戦車が走るのは首都キーウ近郊にある町ブチャ。
一時はロシア軍に占拠されました。2日にウクライナ軍が奪還した町です。
ただロシア軍が去った町には凄惨な光景が広がっていました。教会の横に掘られた穴。土の上に置かれた黒い袋には犠牲となった民間人の遺体が入っています。
後手に縛られた遺体も見つかっていてロシア軍による虐殺が行われたのではないかとみられています。
海外メディアが撮影した映像には普段着のまま道路に置き去りにされた遺体も数多く映っています。
夫をロシア軍に殺されたというブチャに住む女性は…
ブチャ市民

夫は頭を撃たれ、顔をぐちゃぐちゃにされ拷問された。
ウクライナ当局はブチャを含むキーウ周辺で民間人410人の遺体が見つかったと発表。
ウクライナ
ゼレンスキー大統領

何百人もの人が殺され拷問された。
彼らが何をしたというのか、なぜ彼らは殺されたのか。
ウクライナは虐殺や拷問の事実を立証するためICC(国際刑事裁判所)に裁きを求める方針です。
各国がロシアを非難!さらなる経済制裁も
今回明らかになった民間人の大量虐殺。欧米など各国はロシアを厳しく避難しています。
アメリカのブリンケン国務長官はロシア軍は戦争犯罪を重ねてきたとして責任を追求する考えを表明。
EU(ヨーロッパ連合)ではロシアに科している経済制裁の強化に動き出しました。
フランス
マクロン大統領

ブチャで起きたことはロシアに対する新たな制裁を必要とする。
ドイツなどヨーロッパ各国と調整しながら追加の措置を検討していく。
特にロシアにとって痛手となる石炭や石油に対する措置を検討したい。
ドイツのショルツ首相も同盟国は今後さらなる措置を決定するだろうと述べています。
また日本の岸田総理大臣も…
岸田総理大臣

さらなる制裁については国際社会としっかり連携をしながらわが国としてやるべきことをしっかり行っていきたい。
ロシアへの追加制裁を検討する考えを表明しました。
各国から非難の声が相次ぐ中、渦中のロシアは…
ロシア
ラブロフ外相

新たなフェイク攻撃がキーウ州のブチャで行われた。
民間人虐殺の事実を否定。
被害の映像などについてもウクライナ側の演出だと主張しています。
今回、民間人の虐殺が判明したのはロシアとウクライナとの停戦交渉が本格化した矢先のことでした。
停戦交渉の行方に暗雲が漂っています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は3日にアメリカで開かれた音楽賞「グラミー賞」の授賞式にビデオメッセージを寄せ、世界に支援を呼び掛けました。
ウクライナ
ゼレンスキー大統領

私たちは爆弾で恐ろしい沈黙がもたらすロシアと戦っています。死の沈黙です。
あなたの音楽で沈黙を埋めて私たちのことを語ってください。