最先端の学術研究をアスリートの強化に生かそうという取り組み。
東京大学が誇る研究成果や技術を東京オリンピック・パラリンピックに向けて競技団体や企業に無償で提供するという試みが始まりました。
学問とスポーツの連携は日本選手の競技力向上にどんな可能性を生み出すのでしょうか?
東京大学
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5月16日、東京大学で開かれたシンポジウム。
2020年を目指す様々な競技団体の関係者が多数出席する中、プレゼンを行ったのは東大が誇る教授たち。
東京大学の石井直方教授、
最先端の技術がいっぱいあるが、どう利用するかが重要なポイント。いろいろなアイデアをいただければ。
東大が持つ最先端技術とスポーツのマッチングを図る試みです。
果たしてどんな技術があるのか?
最先端技術
石川正俊教授
ロボット工学の権威、石川正俊教授。
開発したのはこちら。
モノの動きに合わせてプロジェクションマッピングの映像を追跡させる技術です。
高速画像処理がキーのテクノロジー。人間の目よりもずっと早いスピードで映像を撮り、そのスピードで処理する。
これを可能にしたのは高速の画像処理。
カメラが捉えた対象の動きを瞬時に解析。
それに合わせてミラーの角度を変えながら映像を投影する仕組みです。
なんと時速1,000キロで動くものにもついていけます。
卓球のような玉が高速で動くスポーツに応用が期待できるといいます。
ボールの動き、位置、速度、回転が即座に分かる。それをフィードバックして自分の訓練に使える。
佐藤洋一教授
一方、動画解析を専門とする佐藤洋一教授。
膨大な映像情報からお目当ての部分だけを瞬時に見つけられる技術です。
室内を歩き回って撮影した長時間の動画。
例えば人を探し出したい場合、右側の「Person Cue」という部分を最大化します。
そして動画を高速再生すると…
人が出てくる場面のみを選び出しました。
試合の映像などの分析に応用できそうです。
注目する選手が試合中、どこでボール触り、何をしたかを効率的に見直せる。そういう使い方ができるのではないか。
中澤公孝教授
また中澤公孝教授はパラリンピアンの脳の働きに注目。
アーチェリーでパラリンピックに出場したマット・スタッツマン選手。
彼を使った実験結果があります。
まるで足が手のように動いています。
彼の脳を見ると本来手を動かす領域が足を動かす際に活発に働いていることが分かりました。
こうした脳のデータが健常者スポーツの競技力向上に役立つのではと研究が進められています。
東大が持つ最先端の技術。
それをオリンピックに関わる競技団体などに無償で提供することが決まりました。
知的財産を管理する東京大学TLOの田口加奈さんは、
東大の研究成果を広く使用してもらうことが社会への貢献と考え、取り組みを通じて技術のレガシー(遺産)が多く残せていければ。
マッチング
シンポジウムの閉会後、積極的に意見を交わす教授と参加者たちの姿がありました。
実験に協力させていただくのは難しいですか?
もちろん、言っていただければ。
早速、両者のマッチングが始まったようです。
ラグビー日本代表の中島正太アナリストは、
行動を分析、解析する技術に興味を持った。技術をうまく使い、パフォーマンスに生かしていきたい。
石井教授は、
スポーツの現場の視点は重要。マッチングすると新しいアイデアが出る。こういう機会を頻繁につくることが必要。