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[WBS]TSMCが進出!「経済安保」で日本ものづくりに異変!?

ワールドビジネスサテライト(WBS)

ロシアのウクライナ侵攻や中国のゼロコロナ政策など世界が大きく変わる中、経済安全保障やサプライチェーンの確保が一層重要となっています。台湾の半導体メーカーTSMCの進出に湧くこの瞬間のニッポン。熊本県を取材しました。

誘致に湧く熊本"台湾コーナー"登場

熊本県内唯一の百貨店「鶴屋百貨店」。食品売り場の一角に新たに誕生したのが台湾食材コーナーです。

鶴屋百貨店
林浩安さん

台湾人がだんだん増えてくる。
便利にするためにコーナーを作った。

商品の仕入れを担当するのは台湾出身の林さん。おすすめは…

鶴屋百貨店
林浩安さん

焼きイカ風味とカキ風味のスナック。
小さいころから食べている。

地元の人は…

地元客

知っているのはパイナップルケーキぐらい。
来る楽しみができた。

現地の言葉でチラシの制作。TSMCの進出でやって来る台湾の人に大きな期待を寄せています。

鶴屋百貨店
入江光彦広報担当長

年収が高い人が来ると聞いているので、台湾の人に人気のあるワインや焼酎、あとは高額品、腕時計や宝飾品の拡大も考えている。

「4.3兆円」動き出す"建設""雇用"

その熊本市から車で40分ほどのところにある菊陽町。

宇井五郎記者

菊陽町の周辺のほとんどが農地ですが、その中で建設が進んでいるのが新工場です。
クレーンがたくさん建ち並ぶ急ピッチで工事が進んでいます。

東京ドームおよそ5個分の土地に建設中なのがTSMCが手掛ける新工場。2024年の稼働を目指しています。

この誘致を進めてきたのが日本政府です。

岸田総理

半導体はわが国にとって大変重要な製品であり、国内でしっかりとサプライチェーンとして確保できること。
経済安全保障にとって大変重要。

経済安全保障に加え、期待されるのが経済効果。ある試算では10年間でおよそ4兆3,000億円ともいわれています。

その経済効果が早速現れている場所があります。

TSMCの新工場の近くにある建物。ジャパンマテリアルという会社の新たな工場です。

TSMCに合わせて熊本に進出。今月から稼働を始めた工場にあったのは…

ジャパンマテリアル 熊本工場
田村安所長

こちらがこの工場で加工する配管の一部。

TSMC向けの配管設備を製造するほか、半導体の生産に欠かせない超純水や窒素などのガスを供給する会社です。

この日、工場にやって来たスーツ姿の2人。来年4月に入社する内定者です。

ジャパンマテリアル 熊本工場
田村安所長

こちらが第三工場になる。

2人が案内されたのは加工機械を設置する予定の部屋。広さは4,600平方メートル。

ジャパンマテリアルの内定者

思ったより広い。

ジャパンマテリアルの内定者

外から見るのとだいぶ中の感じが違うのでびっくりした。

ジャパンマテリアルは土地の購入からガスの保管庫の建設までおよそ30億円を投資する計画。

このように工場の新設や増設をする企業は80社ほどになる見通しです。

ジャパンマテリアルの内定者
山下雄大さん

地元熊本で働ける第1号の社員として、こんなチャンスはめったになと思い就職活動をしていた。

ジャパンマテリアルは新たに150人を採用する計画。

TSMCも1,700人を採用する予定で関連産業を含めると7,500人の雇用を生むとの試算もあります。

しかし、その採用をめぐりある懸念も…

ジャパンマテリアル
小林弘樹総務人事部長

取り合いにはなってくると思う。

TSMCは大卒の初任給に熊本県の平均より8万円ほど高い28万円を提示。人材の奪い合いが始まっていました。

ジャパンマテリアル
小林弘樹総務人事部長

TSMCの初任給は非常に高い金額を提示されている。
初任給を少し上げていくことは必要かと思っている。

技術者の"タマゴ"に「半導体教育」

半導体人材を不足を見据え、地元ではその人材育成が急ピッチで進められていました。

およそ1,400人の学生が学ぶ熊本高等専門学校。この日はある実習が行われます。

学生たちが着替えているのは防塵服。

そして向かった先はクリーンルームです。

熊本高等専門学校
高倉健一郎准教授

材料はシリコンウエハーから始まる。

半導体の基盤となる素材「シリコンウエハー」。製造のプロセスを学ぶ実習です。

少しの傷も許されない半導体。力の入れ具合が分からずなかなか持ち上げることができません。

学生

手で触って大丈夫ですか?

今年、半導体人材の育成を進める拠点校に指定された熊本高専。関連事業を学ぶ事業を増やしています。

熱心にメモを取る学生たち。TSMCの進出で進路を考え直したという学生も…

学生

TSMCの工場が熊本に誘致され、盛り上がりを見せていたので半導体産業で活躍したい。

学生

持っているイメージとしてはこれからどんどん活発になっていって、すごく将来性のある業界だなと。

熊本高専は地元で拡大する半導体産業のニーズに応えるため産学連携を進める方針です。

熊本高等専門学校
大塚弘文校長特別補佐

生産技術が必要だし、活用する製品を生み出す技術者も必要で、人材を育成していく枠組みをしっかりつくり出していくのがカギ。

企業の進出や人材育成などTSMCの進出に湧く熊本。

しかし今、大きな問題が…

地価高騰も「土地が足りない!」

台湾の半導体メーカーTSMCが工場建設を進める熊本県菊陽町。その稼働前に多くの会社が動き出しています。

熊本市に本社を置く明和不動産。スタッフと交換した名刺を見ると…

番組スタッフ

菊陽支店開設準備室?

明和不動産
上原照正さん

来年の夏ごろ、菊陽町に支店を出すことになりました。

TSMCの進出で拡大する需要を逃さまいと新たな支店を計画していました。

特に引く手あまたなのが社宅用の物件。例えばこんな部屋です。

明和不動産
上原照正さん

単身赴任やカップルの需要が高い。

1LDKで広さはおよそ30平方メートル。家賃は今年の夏、月4万円代後半でしたが今では5万円台後半に。

明和不動産
上原照正さん

物件が本当に少ない状況が続いていて、中を見ずに決める案件もかなり増えている。

地価はここ1年で急上昇。工業地の上昇率は31.6%と全国トップに。

新たな物件を掘り起こそうといま力を入れているのが…

明和不動産
上原照正さん

地権者の住所を探して、ピンポンして訪問という作業をシている。

土地の売却や貸し出しを求め、飛び込み営業をかける土地所有者のリストは1,400件にも。

しかし、結果を記したメモには「玄関口であいさつするもやんわりとお断り」「売却意思なし」。

物件が枯渇する背景にはある課題が…

明和不動産
上原照正さん

市街化調整区域という区域で建物を建てる上で制限があったり、建てられない地域。

菊陽町の多くを占めるのが農地。実は優良な農地を守るため町の8割以上が開発が制限される区域に指定されています。マンションなどを建てられる土地がそもそも少ないのです。

その一方で需要は高まるばかりだと話す明和不動産の川口社長。海外の投資家からの問い合わせも多いといいます。

明和不動産
川口英之介社長

海外投資家は5億から10億円。
一つのエリアでそのぐらいの投資を考えている。

需給のバランスが崩れる中、土地の確保については…

明和不動産
川口英之介社長

建物を建てられるエリアを広げていく方法が一つ。
行政が連携して、情報共有の中で新しい施策を行っていくことを民間企業としては期待している。

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