「交通誘導員ヨレヨレ日記」ご存知でしょうか?
半年あまりで6万4,000部を売り上げ、73歳の作者自ら「誰でもなれる」「最底辺の職業」と日々の過酷な現場の様子を明るくユニークに描いています。
この本がなぜ今注目されているのか取材しました。
柏耕一さん
千葉市、午前7時。
駅に向かう通勤客とは反対にやって来た一人の男性がいました。
ここは風が吹くと寒い。海岸沿いだから。
柏耕一さん
交通誘導員ヨレヨレ日記の作者、柏耕一さん(73歳)。
その1日に密着します。
掃除
最初の仕事が担当するパチコン店周辺の掃除。
枯れ葉や吸い殻、空き缶など丁寧に拾っていますが、
ある種のサービス。
「掃除は好きか?」
嫌い。
掃除が終わると立体駐車場のシャッターを開けます。
開店
午前10時の開店直前、一気に忙しくなります。
いらっしゃいませ。
どうぞお通りください。
1台1台に声をかけ、頭を下げながら車、歩行者を誘導します。
柏さんはそんな交通誘導員の日常を描きました。全て自分の体験を元にした実話。
道路工事から花火大会など現場は様々です。
よく登場するのがこんな言葉。
こらー、警備員何している!
いったいあんたは何のためにそこに立っているんだよ?
そんな苦情の数々。
柏さんはかつて出版社に勤務。その後、独立し有名作家の本の編集やゴーストライターとして300冊以上を手掛けました。
しかし、出版不況も重なり倒産。
年金は月6万。生活費のために交通誘導員の仕事を始めたのです。
お昼休み
そして、お昼休みにコンビニに。
この日の昼食はパンとおにぎりでしたが。
パチコン屋の近くに餃子の王将と日高屋とサイゼリヤがあるんでほとんどその3店をかわりばんこに行きますね。
柏さんは日給9,000円ほどで週4日の勤務。およそ17万円が毎月の収入だといいます。
実は柏さんのような高齢な交通誘導員は少なくありません。全国55万人のうち4割以上が60歳以上。
それが老後も働き続ける社会です。
老後不安を抱えて、それに見合うだけの金銭的なものがない。
警備員の仕事を80歳、死ぬまでやらないと生きていけないなら、やっぱりつらい。
加地矢さん
そして午後3時過ぎ、交代にやって来たのが柏さんと同じ会社に所属する加地矢さん(85歳)です。
実は本にも最高齢オヤジとして登場。
80歳からこの仕事をしています。
本については、
私は5冊ぐらい買った。
「この本、面白いから読めよ」と同級生に送った。
そんな加地矢さんは生涯現役でいたいといいます。
75歳すぎたらほとんど使ってくれるところはない。
使ってくれるとしたら警備員の仕事くらいしかない。
林義人さん
夜、柏さんがある場所へ。
寿司屋です。
今夜は「ちょっと贅沢に」でしょうか。
柏さんの出版時代からの友人、林義人さん(70歳)です。いまもフリーのライターとして仕事を続けています。
柏さんの仕事、交通誘導員の印象を聞くと、
年度末になるとあちこちで工事が始まって、交通誘導員がいて、面倒くさいなと。
「この前も掘り返したのに」と怒鳴りつけたことがある。
本で初めて耕ちゃんが交通誘導員をしていると知った。
私は交通誘導員ではないけど何か身につまされる。
柏さんはいま今後に向け決意を新たにしています。
警備員もそろそろ卒業かな。
出版の仕事でもう一勝負してみたい。