
歴史的な円安により食品の値上げなど生活への影響が大きくなっていますが、企業はというと輸出企業を中心に円安がメリットになるといわれています。
そうした中、11月1日にトヨタ自動車は4-9月までの半年間の決算を発表しました。トヨタも円安が大きなメリットになる企業ですが、この円安のメリットを引っ張ろうとする様々な問題があるようです。
トヨタをはじめ日本を代表する企業に何が起きているのでしょうか。
トヨタ決算"円安打ち消し"
11月1日に公表されたトヨタ自動車の今年4-9月までのグループ全体の決算。
売上高にあたる営業収益は17兆7,093億円で去年に比べて14.4%増え、過去最高を更新。
さらに通期予想も上方修正し、去年に比べて14.7%増え、36兆円としました。達成すれば過去最高です。
しかし、決算会見に臨んだ近副社長は…
トヨタ自動車
近健太副社長

この半年間、大きな変化がいくつも同時に起こってきた。
為替も金利も資材価格もエネルギーも半導体もコロナも影響が残っている。
どれ1つ取ってもけっこう大変な変化。
それが同時に来た。大変な半年だった。
トヨタは国内生産のおよそ6割が輸出。円安になると競争力が高まるほか、海外事業の儲けも円換算で膨らみます。
このため4月から30円近く円安が進んだ効果で本業の儲けを示す営業利益は5,650億円上振れました。
一方で鉄やアルミといった資材価格の高騰が直撃。7,650億円の費用がかさみ、円安のプラス効果が打ち消しに。
また、9月に発表したロシア事業撤退に伴う損失、969億円も計上するなど同時多発の生産リスクに直面したトヨタの営業利益は1兆1,414億円と去年に比べて34.7%減少。増収減益となりました。
トヨタ自動車
近健太副社長

自動車産業の半年先も見通しづらく、トヨタの収益や台数を見通すことも本当に難しい。
ソニーG 営業利益は過去最高
一方、ソニーグループも今年4-9月までの決算を発表。
本業の儲けにあたる営業利益は1年前と比べて8.8%伸び過去最高。
通期の見通しも500億円上方修正しました。
音楽の配信サービスなどが好調でした。
ソニーグループ
十時裕樹副社長

6年ぶりの新作アルバム「ルネッサンス」をリリースしたビヨンセのような有力アーティストに加え、新人アーティストによるヒットも継続して貢献しており、ヒットチャートでの高いシェアを維持できている。
音楽分野のストリーミングの伸び、為替の影響、これが上方修正のドライバー。
音楽だけでなく、テレビやデジカメ、さらにスマホ向けなどの半導体事業でも円安の好影響が現れていました。
インバウンドが追い風になるも…
円安の追い風はインバウンドでも。
日本航空では…
日本航空
菊山英樹専務執行役員

国際線でインバウンドの予約数で見ると水際対策の規制緩和が発表されてから、一定期間を見ると予約数が3倍に跳ね上がる顕著な状況。
インバウンドの増加に手応えを感じています。
実際、東京・銀座の百貨店「松屋銀座」を訪れてみると、免税カウンターはほぼ全て外国人観光客で埋まっていました。
香港からのお客さん

ドルが強くて日本円が弱い。
日本で買うと買い得。
円安を背景に外国人客の来店が増えているのです。
この百貨店では1年前と比べてインバウンドの売上高が10倍に増加しました。
松屋銀座
顧客戦略部
服部延弘部長

年末から年始にかけて多くのお客様が旅行の計画をしている。
約3年海外客を迎えられなかったので、その分を取り返していけるように頑張りたい。
こうした動きを受けて日本航空では来年3月までの通期の売上高の予想を1兆4,040億円に上方修正しました。
一方で純利益は据え置きました。その要因となっているのが原材料高。航空機燃料の高騰が経営を圧迫しているのです。
日本航空
菊山英樹専務執行役員

為替とわれわれのビジネスは燃油影響も大きい。
ある意味、努力ではどうしようもない部分。
燃油・為替、トータルまとめて収支を悪くする方に出ている。
32年ぶりの円安を追い風に業績を伸ばしたい日本企業ですが、そう簡単ではないようです。