主要産油国が7月からの原油の増産を決めましたが、規模が限られているとの見方からWTI原油先物の2日の終値は3ヵ月ぶりの高値となりました。こうした資源価格の高騰や脱酸素の流れを受け、見直されているのが水素です。なかでも再生エネルギーから作られるグリーン水素に注目が集まっています。どんなものなのでしょうか。
トヨタ 水素エンジン車!24時間レース参戦で開発
静岡県にある富士スピードウェイ。
山口博之記者

いま車が出てきました。コースに入っていきます。
公式予選が始まりました。
6月3日に行われたのは24時間耐久レースの予選。
大手メーカーが集結する中、注目されたのが…
山口博之記者

水素を充填しています。
移動式の水素ステーションから充填しています。
トヨタ自動車のカローラスポーツ。水素エンジンを搭載しています。ドライバーの1人は豊田章男社長です。
トヨタ自動車
豊田章男社長

カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)への技術開発をよりスピードアップするため考え出したのが水素エンジンによるレース活動への参戦での開発。
トヨタが去年からレースに投入した水素エンジン車。水素を使って走る車としてはすでに市販されている燃料電池車がありますが、どう違うのでしょうか。
燃料電池車は水素から電気を取り出して、電気の力でモーターが回り走ります。モーターでの駆動はEV(電気自動車)と同じです。
一方、水素エンジンは基本的にガソリン車と同じ仕組みで水素と空気で燃焼させて推進力に変えています。
いまトヨタでは二酸化炭素を排出しない水素をエネルギーにした車の開発を進め、脱炭素社会に適合する車の選択肢を広げようとしているのです。
課題のコストに変化の兆し!「グリーン水素」に期待も
トヨタの動きに注目する企業のひとつが機械部品大手の日本精工。
日本精工
御地合英季自動車事業本部長

当社の代表的なベアリングという製品。
ベアリングは回転するものを支える部品で車1台に100~150個搭載されているといわれています。
日本精工はこの自動車向けのベアリングで世界トップシェアを誇ります。
日本精工
御地合英季自動車事業本部長

完全EVになると需要が30%ぐらい減る見立て。
EVはガソリン車に比べ部品点数が少なくなるため、日本精工ではEV用の製品開発を進めるなど対応を加速しています。
ただトヨタのエンジンを残す水素エンジン車には高い期待を寄せています。
日本精工
御地合英季自動車事業本部長

水素エンジンは従来型のパワートレイン(装置)を使うことができる。
われわれとしても大変期待している。
水素エンジン車が一般に発売されるめどは立っていませんが、今回のレースでトヨタは市販車モデルに水素エンジンを搭載した試作車を公開しました。
山口博之記者

水素エンジン搭載の車ですがタンクの場所が車の底の部分に水素タンクを移しました。
それによって後部座席を潰してタンクを載せていましたが、後部座席を確保し、物を置くスペースもあります。
身近な4人乗りの構造に仕立てることで、エンジンを残したままで脱炭素の社会を目指せるという姿を印象づける狙いです。
トヨタが追求する水素の可能性。使われている水素は…
山口博之記者

富士スピードウェイの中に作られた水素ステーションに来ています。
CO2フリーと書いています。
今回使われる水素は全てグリーン水素ということです。
水素は生産プロセスによって色分けされていて、太陽光など再生可能エネルギー由来のグリーン、石炭など化石燃料由来で二酸化炭素を排出するものはブルーやグレーとなっています。
最もクリーンなグリーン水素は発電コストが高いのが課題でした。ここに来て再生可能エネルギーで生み出された電気の価格は海外などで下がる一方、ウクライナ侵攻で天然ガスなどの価格がおよそ3倍に高騰していて実用化に期待する声も上がっています。
専門家は…
水素を研究している
Abalance
長谷川卓也さん

大規模な太陽光発電所がある国だとkWhあたり2円くらいまで下がっている。
2円の電気からつくるグリーン水素は天然ガスからつくる水素に対抗できる値段は十分可能。
スーパーや給湯器でも…身近に広がる!?水素エネルギー
グリーン水素の利活用を進める動きは各地で拡大しています。
山梨にあるスーパー「オギノ向町店」では…
オギノ向町店
店長

こちらがグリーン水素の燃料タンク。
水素ガスと記入された容器の中には太陽光で発電し、水を電気分解して作ったグリーン水素を充填しています。
照明や空調など電力に一部をグリーン水素を使って発電しています。
オギノ向町店
店長

CO2削減は重点に取り組んでいかなければならないと思う。
積極的に考えていきたい。
メーカーも水素に対応できる機器の開発を進めています。
リンナイが今週発表したのは家庭用の給湯器です。
リンナイ
赤木万之さん

100%水素を用いた家庭用瞬間給湯器において世界初の試み。
家庭用のガスの代わりに水素を燃やして湯を沸かします。
日本と比べて水素が手に入りやすいオーストラリアなどで実証実験を行い、製品としての改良を進めていく予定です。
リンナイ
赤木万之さん

インフラと水素の製造コスト次第だが2030年ごろには市場投入できるように技術を高めていきたい。
専門家は今後、水素エネルギーこそ日本が持つ技術力が生かせる分野だといいます。
水素を研究している
Abalance
長谷川卓也さん

いずれ再生可能エネルギーで脱炭素という社会が来たとしたら自動的に水素が一番になっていると思う。
電気から水素、水素から電気というエネルギー変換デバイスをどこまで安くできるか。
日本の技術で大きなコストダウンにつながる。そこに期待できる。