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[WBS]「10年待ったことあるか」原発政策 転換 事業者の叫び[トーワエレックス株式会社]

ワールドビジネスサテライト(WBS)

政府は従来の原発政策を転換し、運転期間の延長など積極的に活用する方針を決めました。

震災以降、10年以上停滞していた原子力産業、その事業者に思いを聞きました。

「10年待ったことあるか」
原発政策 転換 事業者の叫び

千葉県にある病院で情報セキュリティの仕事をする一戸裕司さん。実は本来の仕事は別にあります。原発事業を手掛ける会社の社長です。

原発関連会社
さくらアカデミア
一戸裕司社長

原子力の仕事がなくなってしまった。
しょうがないからいろいろな仕事をやって食いつないできた。

一戸さんは原子炉内の不具合をコンピューター上で発見し、事故を未然に防ぐ保守の仕事を手掛けていました。

多いときは従業員20人、売り上げはおよそ5億円ほどありましたが、福島原発事故以降およそ10年で仕事は急減。今では売り上げはほとんど無いといいます。

原発関連会社
さくらアカデミア
一戸裕司社長

エネルギーを支えているという自負もあり、自分が活躍できる場所があると知っている。
やっぱりまた原発をやりたいな。

去年、ステージ4のがんを患っていることがわかった一戸さん。会社をたたもうかと思った今年の夏、政府の原発再稼働の方針を知りました。

原発関連会社
さくらアカデミア
一戸裕司社長

10年待ったことあります?人生で。
10年待つって本当に大変だった。待てない。
諦めかけて、会社も潰して、体もだめだってなったときにまた再稼働でしょ。
クリスマスプレゼントなのか…
でももう社員はいないし、会社はぼろぼろだし、どうやってまた原子力の仕事を始める準備をしたらいいか。

いま必要なことは何かを尋ねると…

原発関連会社
さくらアカデミア
一戸裕司社長

始める気がある会社に手当してもらえないか。
何をするにしてもお金がかかる。

原子力活用へ大転換
柱は新増設 期間延長

2011年に起きた未曾有の事故。国はそれ以降、原発について依存度を可能な限り低減するとしていました。

その日本の原発政策が12月22日に大きな転換点を迎えました。

政府が午後に開いた脱炭素社会の実現を目指す会議「GX実行会議」。政府はこの場で原発を最大限活用する方針をとりまとめたのです。

具体的にはこれまで凍結していた原発の増設や建て替えについて「具体化を進めていく」と打ち出しました。

さらに既存の原発の運転期間についてもルールを見直し、事実上60年を超える運転も認めます。

エネルギー政策を担当する西村大臣は…

西村経産大臣

ロシアのウクライナ侵攻以降、エネルギー情勢は一変した。まさに危機。
そうした中で原子力を含めてあらゆる選択肢を追求していく。

東電管内"原子力離れ"進む
政策転換も増設は遠のく?

原発政策が大転換する中、関連企業のデータを集めている人がいます。

帝国データバンク
箕輪陽介さん

原発稼働が止まっているので、部品や設備関係のメーカー、卸業者の比率が下がっている。

帝国データバンクの箕輪陽介さんらが集計したデータが、全国の原発関連企業の割合が東日本大震災のあとにどう変化したか表したものです。すでに原発が再稼働した九州では他の地域より関連企業が多く集まっています。

一方で東京電力が管轄する関東は原発が停止し続けていて5%以上のマイナスとなっています。

苦戦する関東の原子力産業。その実態を知るため箕輪さんが向かったのは東京電力管内を中心とする商社「トーワエレックス」。日立グループの原子力産業における調達や契約の仲介を行っています。

帝国データバンク
箕輪陽介さん

原発が稼働していた2011年の前後では受注量の変化は?

トーワエレックス
相馬淳一社長

発電所の数が減っちゃったから、その意味で全体が減ってくる。

新たな安全基準に対応する工事などで自社は営業を続けられていますが、取引先の企業は厳しい状況だといいます。

トーワエレックス
相馬淳一社長

「原発業界の仕事をやらない」という会社や業務エリアを狭めた会社を見受ける。

さらに深刻なのは人材の問題だといいます。

トーワエレックス
相馬淳一社長

原発が止まっている中で優秀な人が年を取っていってしまう。
若い人が原子力離れをしてしまう状況が起きている。

原子力の活用を進める今回の政策転換。しかし、専門家は長期的に見ると不十分な点もあると指摘します。

エネルギー政策に詳しい
国際大学
橘川武郎副学長

本当は新しい炉を作って危険性を下げるチャンスだったが、結局そのチャンスを逃したのではないか。

方針の柱である原発の運転期間の延長。これがもうひとつの柱である原発の増設や建て替えを妨げる可能性があるというのです。

エネルギー政策に詳しい
国際大学
橘川武郎副学長

次世代革新炉の建設は1兆円単位のお金がかかる。
これに対して既設原子炉の延長は2桁少ないコストで済む。
既設原子炉が延長できるならば高いコストをかけて次世代革新炉を建設する電気事業者が現れるはずがなく、今回の決定はむしろ次世代革新炉の建設を遠のかせた。

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