兵庫県尼崎市で全市民46万人の個人情報が入ったUSBメモリーが一時紛失した問題を受けて取材を進めていくと個人情報の持ち出しが多くの自治体で行われていることがわかりました。なぜ情報流出のリスクがある持ち出しを続けるのか追跡しました。
自治体の個人情報持ち出し!角谷キャスターが追跡
向かったのは鳥取砂丘で知られる鳥取市。人口18万人の鳥取県の県庁所在地です。
訪ねたのは市役所にある出納室。住民が納めた税金の情報などを管理しています。
鳥取市 出納室
井上拓也係長
個人情報ばかり。きちんとしたセキュリティーが求められる。
可能な範囲で画面を見せてもらうと…
鳥取市 出納室
井上拓也係長
このあたりは金額。
いつ、誰が、いくら税金を納めたかがわかる個人情報です。
これらの情報は金融機関と共有するといいますが、作業中に手にしていたのは…
鳥取市 出納室
井上拓也係長
これはMOです。
フロッピーディスクみたいだがちょっと違う。
フロッピーディスクも使ってデータのやりとりをしている。
使っていたのは30年以上前に発売されたフロッピーディスクやMOディスクといった記録媒体です。ここに個人情報を書き込んでいるといいます。
鳥取市 出納室
井上拓也係長
金融機関がこれを求めている。
多くの金融機関とは電話回線などを使う専用回線でデータ転送をしますが、金融機関の中にはシステム上、ネットにつながっていない端末でやり取りするという理由や昔からの慣習を理由にいまだに記録媒体を使用するところも。
そのため個人情報の持ち出しも発生しています。
受け渡しは中の見えない専用の袋などに記録媒体を入れ、窓口に来る金融機関の担当者に手渡し、日付と誰が受け渡しを行ったのかを台帳に記入するのみです。
角谷暁子キャスター
不安に思うことは?
鳥取市 出納室
井上拓也係長
これまでもミスは全くない。不安は考えたことない。
角谷暁子キャスター
もっとこうしたらと思うことは?
鳥取市 出納室
井上拓也係長
データ転送が一番だと思うが費用の問題。
データ転送に関する手数料が発生する。
コストの問題や金融機関側の事情もあるというのです。
金融機関に電話取材すると…
「持ち出し」を行う銀行
税金を扱う端末はネットにつながっていない。
システムを変えるのは費用がかかるのでしていない。
「持ち出し」を行う銀行
慣習でやっている。
データ転送しようと思えばできるが、これからの話しかと思っている。
フロッピーやMOといった記録媒体はほとんどの業者が扱いを止めているため鳥取市はいずれはUSBメモリーなどで持ち出しを続けていく予定だとしています。
専門家は持ち出しそのものを止めるべきと指摘します。
情報セキュリティーに詳しい
神戸大学大学院
森井昌克教授
もので持ち運ぶと無くなることがある。
ネットワークは誰がどうアクセスして、どう使われているか容易に分かる。
紛失や不正な持ち運びができなくなる。そちら(ネットワーク)の方が安全。
データを安全にしかも手頃な価格でやり取りできないのでしょうか。
角谷暁子キャスター
東京ビックサイトにやって来ています。自治体の業務のデジタル化を支援するサービスがいろいろ集まっています。
およそ50社が出展している展示会「自治体DX展」。
情報セキュリティーシステムを手掛けるソリトンシステムズでは…
ソリトンシステムズ
富本正幸さん
メールを使って、ファイルのやり取りを安全に行えるシステム。
メールアドレスを使った認証で自治体と外部の機関がクラウド上の情報をやり取りできるるこのサービス。初期費用が2万2,000円、月額利用料は8,800円からです。
ただ自治体の関係者からは慎重な意見が…
長崎・佐世保の職員
「データはどこにも残しません」というクラウドサービスばかりだと思うが本当にそうなの?
やはり専用線を使わざるを得ない。
またセキュリティーを高めるほど情報持ち出しにつながっているとの見方も。
茨城・古河市
原徹副市長
データを外からアクセスできないように遮断することが優先順位の高いセキュリティーだと認識されている。
外に共有するときにメモリー(記録媒体)を使わざるを得ない状況になっているのでは。