株式会社東芝
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3月14日、午前10時。株式会社東芝の本社。
大浜平太郎キャスターは、
東芝の適時開示が先程公開されました。再延期、2017年4月11日まで再延期ということになりました。
そして約6時間後。会見場には多くのメディアが駆け付けました。ちょうど1ヶ月前と同じ光景です。
フラッシュを浴び、現れたのは綱川智社長。
投資家や株主、ステークホルダーにご迷惑、ご心配をおかけして深くお詫びする。
3月14日まで延期していた2016年4月から12月期までの決算発表を再び延期するという、まさに異常事態。
株式会社東芝の社外取締役を勤める公益社団法人経済同友会の小林代表幹事は、
「東芝に関して、それ(社外取締役)がうまい具合に機能していないように見えるが?」
東芝そのものというより社長に聞いていただきたい。機能しているというあたりは何とも言いがたい。
街の声
そんな株式会社東芝に街の人も疑問を投げかけます。
また延期しちゃったんですか。
なぜ再び延期になったのか?
社員はこれからどうなっていくのか?
社員はこの事態をどうみているのか?
分社化して、その後の成長はどうするのか?
株式会社東芝が描く将来とは?
決算「再延期」東芝に何が!?
多くの報道陣の前に厳しい表情で現れた綱川智社長など経営陣。
決算発表を4月11日まで再び延期しなくてはならなくなった理由をこう語りました。
佐藤良二社外取締役は、
一部経営者によるプレッシャーなどの存在を認定するとともに改善措置をすることにした。
巨額な損失が発覚したアメリカの原子力小会社「ウェスチングハウス」の経営幹部が損失を圧縮するため、担当者に圧力をかけたという事実について過去にさかのぼってさらに調査が必要なため、監査法人の許可が得られませんでした。
決算発表を見送ったものの綱川智社長は今回の問題の元凶となった「ウェスチングハウス」について連結対象から切り離す考えを明らかにしました。
ウェスチングハウス。戦略的選択肢を積極的に検討することで進める。
ウェスチングハウスの株式の過半数を2017年度中に売却。完全売却の可能性があることも示唆しました。
今後は日本の民事再生法にあたる連邦破産法11条(チャプター11)の適用申請も選択肢のひとつです。
ウェスチングハウス
アメリカ・ペンシルベニア州にあるウェスチングハウスの本社。
チャプター11が適用されると裁判所のもとで再建を目指すことになり大規模なリストラが現実味を増すことになります。
社員に直撃すると、
「チャプター11について何か聞いているか?」
コメントできない。
何も聞いていない。明日か近日中にアナウンスがあると思うが…。
一様に口が重い社員たち。
本社があるピッツバーグは電機メーカーとして誕生したウェスチングハウス創業の地。創業者であるジョージ・ウェスチングハウス氏は発電システムを発明。エジソンに匹敵する発明家とも言われています。
ジョージ・ウェスチングハウス氏の偉業を讃えピッツバーグ市内には名前を付けた学校や公園などが溢れていました。
ウェスチングハウスの成長とともに繁栄をしてきたピッツバーグ。
もしウェスチングハウスにチャプター11が発動されればアメリカの税金が投入される可能性もあります。
現在、建設中の原発事業に対しアメリカ政府が債務保証をしているためです。
市民の反応は、
GMやクライスラーのような、かつての自動車メーカーの時と同じように救済するのは反対。彼ら自身の責任だから。
大きな会社だし雇用を守るには仕方ないことかなと。税金を使われるのは少し嫌だけど。
チャプター11の適用のためには日米両政府の合意が必要だと見られています。
世耕弘成経済産業大臣は、
アメリカは特に新政権で情報を正確に持ってもらわないといけないので事務的にしっかりと伝えているところ。相手側から言及があれば少し議論することになると思う。
株価
一方、株式会社東芝の株価は3月14日の決算の再延期を受けて大幅に下落しました。
一時は前日より9%近く値下がりしたものの、再延期の申請が承認されると急速に値を戻し、結局前日より1円高で取引を終えました。
東京証券取引所は3月15日付けで株式会社東芝の株を上場廃止の恐れがある監理銘柄に指定することを決めました。株式の売買は可能です。
今回の決算の再延期とは別で2015年の不正会計問題によるものです。
社員32人直撃!緊急インタビュー!
WBSでは今回、グループ企業を含めた株式会社東芝の社員32名に緊急アンケートをを取りました。
「東芝問題の元凶はどこか?」
経営陣:27人
環境:4人
どちらとも:1人
30代男性は、
隠蔽体質があらゆる部署にある。
40代男性は、
西田元社長らの判断ミスではないか。
「東芝ブランドを残すべきだと思うか?」
残した方がいい:20人
残さなくてもいい:11人
どっちでもいい:1人
30代男性は、
技術や開発力があればいいので東芝の名前は不要。
「原発事業は東芝に残すべきか?」
残した方がいい:11人
残さなくてもいい:13人
分からない:8人
40代男性は、
不要だと思うが完全にやめられるのか分からない。
20代男性は、
今後の安倍政権の意向で変わってくる。
「メモリー事業売却で再生に向かうか?」
思う:14人
思わない:11人
分からない:7人
20代男性は、
メモリー事業を売却するからといって再生に直接結び付くわけではない。
株式会社東芝の再生には何が必要なのか?
ある社員は電話インタビューで次のように答えました。
まだたくさんの事業分野を持っているので本当に一から出直す覚悟。膿を出し切ってきれいにするところはきれいにして、きちんと事業を再構築していくしかない。
東芝「復活の柱」とは!?
3月14日の会見で綱川智社長は、
一言で社会インフラを核とした事業領域。今後もしっかり成長していく。
東芝グループは2016年に白物家電や医療機器事業を相次ぎ売却。
さらに虎の子のメモリー事業を4月に分社化。
原子力事業はウェスチングハウスの株式売却を進めます。
事業領域が狭まる中、株式会社東芝が次の柱として位置づけるインフラ事業の成長こそが最重要課題です。
先週末に開かれたあるイベント会場ではひときわ大きな株式会社東芝のブースがありました。
東芝ライテック株式会社
中には数多くの照明器具が。株式会社東芝は照明事業に乗り出した126年が経ちますが照明はエレベーター、空調などと並ぶインフラ事業のひとつです。
飲食店向けの設備ですが天井の照明とショーケースが連動しています。
東芝ライテック株式会社の営業企画部、上田千秋部長は、
連動させて照明のほうであかりの温かさとか涼しさとかお客様に感じとってもらう。
例えば冬の時期は暖色の照明を使うことで暖かな印象を与え空調の温度を低く設定。照明の色味が節約に繋がる仕組みです。
さらに人の細かな動きを感知するセンサーを自社で開発。自動で照明のオン・オフを制御する仕組みに使われていますが、
例えばエレベーターホールでは人が集まっていることを感知し、そこに早くエレベーターがつくように自動制御する。
「事業として東芝グループの中で存在している意味は?」
東芝のインフラにはいろいろなソリューションがあるので一緒にくっつくことで相乗効果が上げられる。
東芝テック株式会社
さらにインフラ事業として期待を背負う商品がスーパーなどに並ぶレジです。
東芝テック株式会社はレジ本体の販売で国内最大手。シェアの5割を握っています。
東芝テック株式会社の商品マーケティング統括部、長谷川圭一室長は、
普通はレジで買い物が終わるとレシートを消費者が受け取る。瞬時に登録しているスマートフォンにレシートが表示される。
買い物をすると登録しているスマートフォンにレシートが自動で送られてくるサービスです。
家計簿アプリとの連動などを将来的には視野に入れています。
一刻も早く成長事業を見出さなくては、社員からはこんな本音が、
ここで飯が食えないともう死ぬしかない。ここで頑張ろうと思います。
会見
そして再び3月14日の会見。
「残った新生東芝事業への成長資金はどう手当する?」
設備投資とか社会インフラ事業中心であれば設備投資は少なくなる。半導体のNANDメモリーと比べるとかなり設備投資が少ない。
メモリー事業の売却益について
株式会社東芝が苦境を乗り越えるために進めているのがメモリー事業の売却。この事業を売ることによって最大で1兆円以上の売却益を得ることができます。
こうして得た1兆円をどう使っていくのか?
1兆円のうち3,000億円は2018年3月末までに債務超過の解消などに使用します。
残った7,000億円ほどの資金は照明などのインフラ事業、稼ぎ頭を育てるための成長資金に育てていきたいと考えています。
しかし、ウェスチングハウスがアメリカで建設中の原発の完成がさらに遅れてしまうと、予定よりコストが膨らんだ場合、その分は株式会社東芝が支払う契約となっています。実はコストが青天井に膨らむ可能性が残っています。
また建設を断念した場合には電力会社に約7,900億円の債務保証をしていて、その支払もしなければなりません。
結局、虎の子事業を売却して得た大事なお金は原発のコストに消えてしまう可能性もあるのです。
そこで株式会社東芝はウェスチングハウスにアメリカの連邦破産法を申請させる検討に入っています。これは電力会社の同意のもと債務保証をめぐる契約を見直して、できるかぎり損失を抑えたいと考えています。
しかしながら株式会社東芝の再生への道、なかなか厳しいと専門家は指摘しています。
郷原信朗弁護士
今の東芝のアメリカの原発事業は損失が底なし沼のような状態になっている。損失を止めるためのチャプター11(連邦破産法11条)申請も検討されているが、それをやろうとすると一時的にはさらに大きな損失を覚悟しないといけない。
そのうえで郷原信朗弁護士は株式会社東芝が過去の間違いに向き合うことが必要だと指摘します。
経営陣がしっかり反省して統括することで新たにどういう方針で、どのようになっていくのか世の中に示さないといけない。そういう形で信頼を回復しなければ東芝の本当の再生はあり得ない。