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[モーニングサテライト]再エネの切り札か!洋上風力発電 その実力は[戸田建設株式会社]

モーニングサテライト

テレ東経済WEEK。モーサテでは変わる世界情勢を受けて新たな道を模索する日本の現場を番組キャスターが取材してきました。

今回は日本のエネルギーのこれからについて取り上げます。日本政府は2050年に再生可能エネルギーの比率を50%にすることを目指しています。

2019年度時点で日本の再エネ比率は18%にとどまっている状況です。ドイツやイギリスなどほかの国と比べると大きく出遅れているという状況です。

そうした中、いま注目されているのが海、洋上の風力発電です。環境省などによると洋上風力のポテンシャルは最大で1兆5,600億kWhと見込まれています。

これは2021年度の電力需要全体の1.8倍に相当する発電量です。

今回はこの洋上風力に積極的に取り組んでいる長崎県の五島市と秋田県を取材してきました。

エネルギー供給の未来

世界に先駆け 浮体式洋上風力発電

大浜平太郎キャスター

こちらが日本発の浮体式、海に浮くタイプの洋上風力発電です。
海の真ん中にポツンと人工物が立っているのは不思議な感じですが、なかなかの迫力です。

大浜キャスターがやって来たのは長崎県五島市。福江島の沖合5kmにある浮体式洋上風力発電施設です。

五島列島周辺は1年を通じて安定した風量が見込めることから建設地となりました。

海底にアンカーで繋がれています。

発電した電気は海底ケーブルを通じて福江島に送電。島で使われています。

この事業の旗振り役が戸田建設です。強風によるトラブルなどノウハウを蓄積するため、あえて台風の通り道であるこの海域を選んだといいます。

大浜平太郎キャスター

発電量は?

戸田建設
戦略事業推進室
丸山功貴課長代理

最大で2,000キロワット。
一般家庭で1,800~2,000世帯分。
浮体式のメリットは遠浅の海が少ないので着床式よりも設置場所が多い。

大浜平太郎キャスター

世界的に珍しい?

戸田建設
戦略事業推進室
丸山功貴課長代理

浮体式の数は非常に少ない。
現状では着床式の方が単価は安い。

世界的にも実用例が少ない浮体式。

戸田建設は環境省との実証事業を通じて2010年から独自のノウハウを培ってきました。

大浜平太郎キャスター

この大きな建物は?

戸田建設
戦略事業推進室
丸山功貴課長代理

建物に見えるが船。
浮体を海に運んだのがこの船。

半潜水型スパッド台船、およそ130メートルもの柱の部分を海に運び、船自体を沈めます。すると柱の部分が浮かび垂直に。その後、発電機と羽根を取り付けるのです。

戸田建設は去年10月にENEOSなどと合同会社「五島フローティングウィングファーム」を設立しました。来年秋までにさらに8基の浮体式洋上風力発電施設の建設を予定しています。

総事業費はおよそ200億円です。

大浜平太郎キャスター

羽根の部分が船に乗せられて運ばれるところです。
これからクレーンが立っているところに運ばれて、クレーン船で吊り上げて軸に取り付けるという段取りです。

2024年1月に電力の供給が開始される計画です。

しかし、浮体式のコストは着床式の2倍以上ともいわれています。果たして採算は取れるのでしょうか。

大浜平太郎キャスター

発電量の規模感は?

戸田建設
戦略事業推進室
丸山功貴課長代理

全部で1万9,000キロワット弱。
五島市の全世帯(約1万6,000世帯)をカバーするくらい。

大浜平太郎キャスター

発電事業者として採算は?

戸田建設
戦略事業推進室
丸山功貴課長代理

今回は技術開発の要素を含んでいるので事業として単体で資産を取るのは難しい。
戸田建設はゼネコンなので発電事業者として入札を取るより、浮体の供給者として採算を取る。
世界でもトップクラスであり、リーディングカンパニー。
われわれは全世界を見据えている。

遠浅の海でなくても設置可能な浮体式の技術を先行して培い、世界の海への進出を目指しています。

五島市は2020年12月にゼロカーボンシティを宣言。すでに必要な電力のおよそ56%を再生可能エネルギーで賄っています。

これは日本全体のおよそ20%を大きく上回る数値です。

大浜平太郎キャスター

経済効果はどれくらい見込んでいる?

ご投資 未来創造課
村井靖孝課長

推計値だが、建造ヤードの建設から今後20年間の運転管理で約41億円。
エネルギーの地産地消を目指す企業と連携し、ゼロカーボンシティを目指す。
水素の製造も考えていきたい。

大浜平太郎キャスター

製造した水素は?

戸田建設
戦略事業推進室
丸山功貴課長代理

島内で使うが、量が増えれば移出したい。
再生可能エネルギーがないときは海底ケーブルで島に電気を引いていた。
今度は逆に送り出すという夢が出てくる。

秋田 大型洋上風力発電プロジェクト

大浜平太郎キャスター

秋田は風力発電が非常に盛んな地域ですが、今回の注目は海にたくさん風力発電が並んでいますが、国内初の大型洋上風力発電プロジェクトです。

日本のエネルギー供給の未来、洋上風力発電の可能性を取材します。

続いて大浜キャスターが訪れたのは風力発電先進県の秋田です。

すでに県内では298基もの陸上風力発電施設が稼働しています。

陸の次は海へ、国内初の商業ベースの大型洋上風力発電事業が始まろうとしています。

秋田洋上風力発電
岡垣啓司社長

着床式洋上風力発電施設。

日本海側から強い風が吹き、遠浅の海に恵まれた秋田県。今回採用されたのは海底に固定するタイプの着床式の洋上風力発電です。

秋田港に13基、能代港には20基、合わせて33基の洋上風力発電施設が完成。

12月から商業運転が始まります。

着工は2020年2月。総事業費1,000億円の大型プロジェクトです。

プロジェクトを手掛けるのは特別目的会社「秋田洋上風力発電」。丸紅や大林組など13の株主で構成されています。

特別目的会社の社長を務める丸紅の岡崎さん。

秋田洋上風力発電
岡垣啓司社長

発電容量合計約14万キロワット(秋田港・能代港)。
秋田市の約13万7,000世帯の電力消費量を賄える。

大浜平太郎キャスター

FITで買い取りの対象になる?

秋田洋上風力発電
岡垣啓司社長

本事業はFIT認定を受けているので1kWhあたり36円の買取価格。
事業としては採算が取れる前提。

秋田県では秋田港、能代港に加え、4つの海域でも洋上風力発電の計画が進められています。

大浜平太郎キャスター

洋上風力発電の経済効果は?

秋田県
エネルギー・資源振興課
三浦均課長

建設段階から運転・保守・撤去まで含めると約3,800億円。
再生可能エネルギーを使う工業団地の設置も検討。

ただ岡垣さんは大きな課題が残っていると話します。

秋田洋上風力発電
岡垣啓司社長

風車の杭の部分はオランダから調達しています。
基礎と風車をつなげる部分はベルギーから調達。
風車のタワーは中国から。
その上の発電機などが入っている部分はデンマーク。
羽根はドイツから。

主要部品はヨーロッパや中国などから調達。さらに工事そのものもヨーロッパの人材に頼らざるを得なかったといいます。

秋田洋上風力発電
岡垣啓司社長

部材だけではなく、ソフトもノウハウも日本人が蓄積して、最終的にはオールジャパンを目指すべき。

実は日本政府も2040年までに洋上風力発電の国内調達比率を保守点検も含め6割とする目標を掲げています。名実ともに国産エネルギーに育てる必要があるという問題意識です。

地元の企業も動き出していました。

秋田県北部、大館市に本社を置く東光鉄工。洋上風力発電向けに新しいビジネスを始めます。

東光鉄工
伊藤均副社長

採取開発段階に入っている機種。
雨でもある程度の風でも飛ばせる。

開発していたのは不規則な突風にも耐えられるという洋上風力発電施設の点検用ドローンです。

AIの画像解析能力を持ったカメラを搭載。安全監視はもちろん、不具合を自動で見つけ出すシステムを東芝エネルギーシステムズに協力して開発しています。

東光鉄工
伊藤均副社長

洋上風力の第1ラウンドが秋田で始まり、秋田発で企業が動き出す。
トータルのシステムとして最初に実現するのは日本。
その可能性は十分ある。

秋田洋上風力発電
岡垣啓司社長

最終的には洋上風力発電もオールジャパン。
エネルギーの安全保障という意味でも大事。
国産エネルギーの風力を使い、日本も独立性を高め、エネルギーの自給自足を実現する。

激変するエネルギー情勢、長崎、そして秋田の取り組みは急ピッチで進んでいます。

将来、輸出産業まで成長させ、日本勢の国際社会での存在感を示すことができるのでしょうか。

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