中国のテクノロジーの最先端をシリーズでお伝えする「中国tech」です。
中国ではゲーム市場がいま急拡大し、その規模は4兆円を超えるほどに成長しています。その裏で活躍するテクノロジーとその弊害を取材してきました。
騰競体育(TJ Sports)
上海市内にある巨大なサッカースタジアム。
大々的に開かれたのは世界でおよそ1億人ものプレイヤーを抱える人気ゲーム「League of Legends」の決勝大会。5人1チームで互いに陣地を攻め合います。
世界21の国と地域、115チームの頂点を争うのは中国と韓国。
無料の入場券は1枚40万円で転売されるほどの人気ぶりです。
いま中国では国を挙げてeスポーツの普及に力を入れています。
こちらはおよそ10億円を投じて作られた施設。
騰競体育の張旭明さん、
ここと上のフロアがメインの制作室。インターネットで全世界に発信している。
画面に映し出されているのはスタジアムで行われている試合。ここを拠点に16の言語で世界中の4,000万人に向けて生配信をしています。
さらにこちらのスタジオに居るのは…
またイエローカードが出ました!終わっちゃったぞ!
今回の世界大会で2回目の負けを喫しました。
eスポーツ専門の解説キャスターです。
国が認定したプロだけでもおそよ1,200人。eスポーツは一大産業となっているのです。
そのベースとなるゲーム市場は成長を続け、中国全体の売上高はおよそ4兆6,000億円に。国際ゲームの比率は86%にも達しています。
玄機科技は上海にある制作会社。騰訊控股(テンセント)とも協業し、アニメやゲームを多く手掛けています。
数百人が働く制作の中枢。クリエイターが画面上のキャラクターを1コマづつ動かしながらアニメーションを作ります。
自分の顔の筋肉の動きを参考にしながら表情を作るため、そばには鏡も。職人の世界です。
今こうしたゲーム開発にアメリカと覇権を争うある技術の活用が始まっています。
それがこのパソコンに。兵士の大群が砂漠を進んでいます。
玄機科技の茅中元シニアパートナー、
この兵士たちは自分のAIを持っています。
AIの役割はゲームの中にいる兵士に魂を入れ、一定の自己意思と思考を持つ役者にします。
どういう内容を演じればいいのか脚本を与えます。
これまでは兵士1人1人をプログラミングで操作していましたが、AIによって頭脳を持たせることで脚本通りに演じてくれるというのです。
兵士たちが進んでいくと画面右手の岩陰から敵が…そのまま戦い始めましたが、
AIに「両軍が戦う」と伝えるとみんなが前に向けて進み、そして敵と会ったところで戦う。
向こうの兵隊の中の誰と会うのかは彼ら自身でも会うまで分からない。
市場が拡大するにつれてゲームの制作現場では人手不足が深刻化。まだ初期段階のAIですが導入したことで制作に掛かる時間をおよそ9割も減らすことができたといいます。
AIがさらに発達し、演技が上達するとさらに感情を込めた役や複雑なアクションまで演じられる。
ゲーム全体の体験と産業を変えることができる。
ゲーム市場やeスポーツが盛り上がる一方でいま中国ではその弊害も深刻化しています。
上海郊外にあるeスポーツ選手の養成学校「上海E-sportsプロ訓練営」。
およそ60人の中高生が共同生活をしながら1日12時間の訓練に励んでいます。
ただ、この学校にはもう1つの役割が…
上競文化の李国強CEO、
ゲーム依存中毒の子どもの治療に力を入れています。
オープンに向けて準備が進められているのはゲーム依存症の矯正施設。
3ヵ月間施設で暮らしながら様々な心理療法を行います。
滞在する宿泊部屋はどこもベッドが2つ。
架空ゲームの世界に惑溺すると自分以外の人と交流せず、閉じこもってしまう。
親子でより多く触れ合って交流してもらい親子関係の改善を進めてもらう。
治療中は親子で共同生活。費用はおよそ120万円ですが、すでに予約が入っているといいます。
中国はゲーム依存治療のオフィシャルな機関がない。
より多くの子を救いたいし、より多くの家庭を救いたい。