岸田総理は新型コロナのオミクロン株に対応するため外国人の入国を原則禁止している今の水際対策を緩和に向けて検討すると表明しました。ただ、これまでの厳しい入国制限が日本で学ぶ留学生にも大きな影響を与えています。その現場を取材しました。
"コロナ鎖国"で留学生が就職難!借金抱え帰国も
2月、東京都内の専門学校「東京国際ビジネスカレッジ」を訪ねました。
学生のほとんどが外国人留学生。
ベトナム、中国、ミャンマーなどからおよそ800人が日本で就職するため学んでいます。
卒業間近の2年生の授業にお邪魔しました。ベトナム出身のアインさん(22歳)。プレゼンテーションは成功。
ただアインさん、大きな悩みを抱えていました。
今一番重く思っているのが内定をもらえる日まで諦めずに頑張って就職活動をすること。
応募したのは55社。面談に進んだ会社は20社くらい。
4月からの入社を目指して就職活動を続けていますが、まだ内定をもらえていないというのです。
日本で長く住みたい。あと30年ぐらいしたら帰国して日本の文化などを紹介できる飲食店を開きたいと思っている。
子どもの頃から日本のアニメが大好きだったアインさん。日本とベトナムの架け橋になるような仕事がしたいと考えています。
彼女たちが卒業すると得られるのがエンジンや通訳などを対象とする在留資格。しかし卒業からおよそ1年経っても就職できないと帰国しなければなりません。
さらに日本の採用制度は状況を一層厳しくしていました。
3月までに内定をもらわないと新卒一括採用の枠に入れず、就職活動も厳しくなる。
最も恐れているのが帰国すること。
高校卒業後に来日。日本での勉強は4年目になります。
およそ1,000万円の大きな投資でした。
この学校の校長、小池勝也さん。留学生の就職状況は新型コロナの影響で想像以上に厳しいものになっているといいます。
例年だとほぼ100%、就職を希望する学生はどこかの会社に内定をもらって就職できたが、この2年に関しては3割ぐらいの学生しか内定がもらえない。
これまで留学生が多く就職してきたのが訪日外国人に対応する宿泊や小売業界。ただコロナ禍でその需要が激減しているのです。
そういうお客様(訪日外国人)を相手にビジネスをする仕事もガクンと減ってしまって働くに働けない。
でも国に帰ったら借金は返せない。本当にもう八方ふさがりと言ってもいいような状況。
外国人材"登用"で成長!コロナ後を見据え積極成長
一方でコロナ禍でも外国人を積極的に採用し、成長に結びつけようという動きがあります。
「焼肉きんぐ」や「丸源ラーメン」などを展開する物語コーポレーション。コロナ後を見据え店舗の拡大を続けています。
物語コーポレーションの横浜任執行役員。
正直、飲食業に就職すると決めている人?
少ないね。お客さまの前の仕事だけを見るとアルバイトと同じような仕事をしているように見えるかもしれないけど、ビジネスで考えるとものすごく可能性があるし、面白いビジネス。
2007年から外国人を積極的に採用し始め、今は正社員のおよそ1割が外国出身だというこの会社。外国人を採用するメリットをこう話します。
店長たちが自分の考えを表現して、会社に伝えてアルバイトに理解してもらって、実行していかないとお店が立ちゆかない。
会社の言っていることだけやっていても目標は達成できない。
なぜ僕たちが外国人籍の人を採用したいかというと日本人よりそれが得意だから。
ミャンマー出身のノ サン アウンさん。物語コーポレーションのラーメン店でスピード出世を遂げ店長を務めています。
私は今店長をやっているが人間としてなんかやったら「ありがとう」とか、時間守るとか、目を見て話すとか、そういう人と一緒に働きたい。
オミクロン株の感染が拡大した2月上旬、アウンさんの職場「丸源ラーメン 平塚田村店」を訪ねました。
この店でおよそ30人のスタッフを束ねています。
1月お疲れさまでした。時短営業もあったけど店の業績は私が着任してから一番良い結果。
忙しい時間帯はホールや厨房に入り全体を見渡します。
店長室に案内してもらいました。
店舗の経営の数字とかワークスケジュールを作ったりとか、本社とのやりとりをやってます。
売上目標を立てたり、アルバイトの採用をしたり、またシフトの作成も店長の仕事です。
お客様がどれくらい来るか、2週間のデータを見て予測を作っています。
最も神経を使う仕事はスタッフの人事評価だといいます。
この星が増えると時給も上がる。
私がみんなに言うのは外国人だからとかじゃなく「人間としてこう思っているんですよ」と。
今の課題がこれだから、これを来週までにやりましょうとか。
お互い合意して行動している。
今後、会社は採用人数の2割程度外国人材を受け入れ、幹部候補として育てていく方針です。企業の成長のため欠かせないのです。
とりあえず一つのレベルアップとしてエリアマネージャーを目指して頑張りたい。
来月、妻を呼び寄せる予定のアウンさん。自らの活躍の場を日本と決め、家族で暮らしていこうと考えています。