ガイアの夜明け ビジネス関連

[ガイアの夜明け] 自分の力で歩きたい~患者を救う「極めた技術」~(2)

2016年7月27日

自分の力で歩きたい…~患者を救う「極めた技術」~

照寿し

千葉県袖ケ浦市、この町にある「照寿し」

地元でも評判の寿司屋さんです。

洗い物をしているのは店主の母親、恩田さとさん(80歳)。

仕事を終え2階の自宅へ。すると、

犬みたいにはって歩く。

恩田さとさんは長年、左足の膝の激痛に悩まされていました。

痛いってもんじゃない。座ったり、立ったりしても関節がコツコツ鳴る。

20年ほど前から症状が悪化、最近は家に引き篭もりがちになっていました。

恩田さとさんの膝のレントゲン写真をよく見ると中央部分の骨同士が接触しています。変形性ひざ関節症という病気でした。

そこで、恩田さとさんはある手術を受ける決心をしました。

すると、手術後に恩田さとさんに劇的な変化がありました。

木更津東邦病院

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千葉県木更津市の木更津東邦病院。

階段をはって上っていた恩田さとさんの姿がありました。

緊張しています。

実は恩田さとさん、人工関節を取り付ける手術を受けるのです。

関節部分の骨を削ったら、いよいよ人工関節を取り付けます。

手術開始から1時間半、無事終了しました。

1ヶ月後、退院した恩田さとさんを訪ねました。

以前は階段をはって上ってましたが、立ったまま上れるようになっていました。

今は手すりにつかまれば上がれる。うれしい、前ははわないと上がれなくて。

恩田さとさんの手術を担当した木更津東邦病院の勝呂徹医師。

今回使った人工関節には他にはない優れた特徴があるといいます。

このままスーっと曲げると、ここまで曲がるようにできている。これが大きな特徴。望めば正座まで曲げることが可能。

勝呂徹医師によると、欧米製は椅子に座る文化で曲がる角度は90度前後、一方今回使用した人工関節は140度前後まで曲がるため、リハビリ次第で正座ができるようになるといいます。

帝人ナカシマメディカル株式会社

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岡山県岡山市、ここに恩田さとさんの手術に使われた人工関節のメーカーがあります。

帝人ナカシマメディカル株式会社

工場では皆、一心不乱に作業に取り組んでいました。

人工関節を研磨する工程です。

磨いたばかりの人工関節は、合金がまるで鏡のような状態になっています。

この会社を率いるのは中島義雄会長(60歳)。

他では真似ができない技術のヒミツを見せてもらいます。

実は元々の親会社、ナカシマプロペラ株式会社は大型船舶用スクリューの世界トップシェアメーカー。

直径12メートルにも及ぶ日本最大級のスクリューも手掛け、全て手作業で磨いています。

スムーズな曲面で100分の1ミリの精度で仕上げている。そういう差が出ると船の振動や音などに大きく影響してくる。ひいては性能に影響してくる。

凹凸が少ないほど水の抵抗が減り、燃費も良くなります。

人工関節も磨き上げることで摩擦を減らすと大きな利点が生まれます。

例えば人工関節の欧米製の寿命は15年前後といわれていますが、帝人ナカシマメディカル株式会社の人工関節は30年前後、2倍長持ちするそうです。

しかし一方で帝人ナカシマメディカル株式会社はある問題を抱えていました。

帝人ナカシマメディカル株式会社の問題

東京・日本橋、中島義雄会長が向かっているのは人工関節を専門にしている医師たちの研修会です。

部屋の一角に帝人ナカシマメディカル株式会社の人工関節が展示されていました。

しかし、その横にはライバルであるジンマー バイオメット社などの欧米製の人工関節が並んでいます。

いち早く日本市場に参入した欧米製のシェアは約9割。

帝人ナカシマメディカル株式会社は販売から12年が経っていますがシェアを奪えずにいました。

正座ができるというのをアピールして、よりいいものにしていく。

実際に正座を長年している人の経過の実績は?

まだ長年やったのは見ていないので。

実績が少なくアピールができない、そしてもうひとつ大きな問題があります。

人工関節の手術はメーカーによって道具の種類や使い方が違います。一度に使う道具は200種類以上。

そのため帝人ナカシマメディカル株式会社の人工関節に切り替えてくれる医師はなかなか居ないのです。

そこで中島義雄会長はある秘策に打って出ました。

ミャンマー

ミャンマー・ヤンゴン。ミャンマーの人口は約5,100万人。この30年間で1.5倍に増えています。

5月初旬、そのミャンマーに中島義雄会長の姿がありました。一緒にいるのは木更津東邦病院の勝呂徹医師。

ヤンゴンの中心地にあるお寺「シュエダゴン・パゴダ」。ミャンマーは仏教の国、一日中訪れる人が絶えません。

お寺では女性は足を横に曲げて座ります、ミャンマーの女性の正座と言われている座り方です・

しかし、中にはこんな人も

膝が痛いので正座するのがとてもつらいです。

ミャンマーではこうした膝の痛みに悩む人が増えているといいます。

中島義雄会長はそこに目をつけました。

国立ヤンゴン総合病院

訪れたのはヤンゴンで一番大きな国立病院。

実は中島義雄会長、ここで人工関節の手術を試験的に行う約束を取り付けていました。

まずはミャンマーの医師たちに向けて講習会を開きます。

左側はっしゃがんだ状態、右は床に正座した状態。

帝人ナカシマメディカル株式会社の社員が特徴を説明します。

人工関節の手術がほとんど行われていないミャンマー。今回の試みが成功すれば欧米メーカーより早く参入できる。というのが狙いです。

ミャンマー人の医師は

日本人に合う人工関節ならミャンマー人にも合いそうですね。

手術を担当するのは勝呂徹医師。5人の患者に執刀します。

伸ばしてみて。曲げてみて、痛い?

患者の一人、タンタンテイさん(60歳)。15年前から右足の膝の痛みに苦しんできました。

膝が痛くて、歩くのが不自由になりました。ぜひ手術を受けたいです。

タンタンテイさん

ヤンゴンの郊外、この町で暮らすタンタンテイさんは歩くときに杖が欠かせません。

買い物に出掛けるのも不自由していました。

タンタンテイさんの40年前の写真を見ると痩せています。

実はミャンマーは油っこい料理が主流。中高年にかけて太る人が多く膝の痛みに悩む患者が多いといいます。

その一人であるタンタンテイさん。

椅子に座って行う日課は仏教徒として大切なご先祖様へのお祈り。

正座ができないのでお寺にお参りに行けません。仏教徒として本当に辛いです。

2日後、手術を受ける日がやってきました。

手術室では人工関節の準備が進められていました。

しかし、思わぬ問題が発生しました。

執刀する勝呂徹医師、何を見つけたのか?

全ての骨の質が悪すぎだよね、骨折しちゃうかもしれない。

タンタンテイさんは骨が脆くなる骨粗鬆症で骨折するリスクがあるといいます。

勝呂徹医師は細心の注意を払って手術に臨む事にしました。

帝人ナカシマメディカル株式会社の海外進出に向けた大事な手術。

準備できた?

まずは慎重に膝の骨を削っていきます。骨は持ちこたえていました。

帝人ナカシマメディカル株式会社の中島義雄会長も心配そうに見つめます。

いよいよ人工関節の取り付け作業。

勝呂徹医師の執刀を見学するミャンマー人医師たちも真剣な眼差しです。

手術開始から1時間半、なんとか無事に終了しました。

2ヶ月後の7月上旬、タンタンテイさんの姿がありました。

以前は杖をついていましたが、今は杖がなくても足取りもしっかり歩いています。

そして、念願の正座も。正座ができるようになったため、2年半振りにお寺参りができました。

わたしの人生は足が悪くなって不自由になりましたが、この手術を受けて自由になりました。本当に感謝しています。

正座ができたタンタンテイさんに笑顔が。

帝人ナカシマメディカル株式会社の海外進出に最初の足掛かりができました。

アジアの方々、同じような悩みを抱えている患者に役に立ってくれればと思っている。そこに我々のチャンスがある。

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