台風や豪雨の被災地で復旧に向けた動きが進む中、ここに来て被害の大きさが明らかになってきたのが車です。浸水の被害を受けた車の数は20万台を超えるという試算も出てきました。どう対処すればよいのか現場を取材しました。
一般社団法人日本自動車連盟
[blogcard url="https://jaf.or.jp/"]
25日の豪雨によって広い範囲で浸水被害が発生した千葉県。
大網白里市にあるJR大網駅やその周辺も近くを流れる金谷川の氾濫もあり冠水しました。
近隣住民は、
ここ(大網駅前)も一面湖になっていた。びっくりした。
浸水して誤作動を起こしたのか一晩中、車の警告音が鳴っていた。
大網駅の周辺は駐車場が密集しています。
当時、多くの車が浸水し、5日経ったいまもその爪痕が…
こちらの車を見るとびっしり泥が付いていますが、浸水当時ここまで水がきていたものと思います。
泥や藁が付着した車があちこちで見られました。
作業員と話している男性も駐車場に停めていた車が浸水被害に遭いました。
車はエンジンが掛からないため動かせず、JAF(日本自動車連盟)に依頼して運び出すことに。
浸水した車の持ち主は、
修理工場がいっぱいなので車は自宅へ持って行ってくれる。
エンジンがかからないほど水に浸かったら全損扱いではないかと言っていたのでがっかりです。
車体を持ち上げると中に溜まっていた水がしたたり落ちてきました。
JAFのレッカー車には特別支援隊の文字が…
災害時に他の地域から被災地に派遣される部隊だといいます。
作業にあたっていたのは奈良支部からやって来た担当者です。
日本自動車連盟奈良支部ロードサービス隊奈良基地、山口一郊班長、
夜にとまっていた車がほとんど浸水で動かなくなったと聞いている。
作業はもうほとんどエンジンがかからなくなっている車の対応。
男性の車はおよそ10分ほどでレッカー車に接続され、水をしたたらせながら運び出されていきました。
株式会社タウ
[blogcard url="https://www.tau.co.jp/"]
水に浸かった車が集められている場所があります。
タウの埼玉サービスセンター、堀江哲也さん、
全て冠水車です。
「何台くらいある?」
こちらに入っている分で全部で200台。
事故車などの買取専門業者、タウの作業場です。
並んでいるのは10月12日に上陸した台風19号によって水没した車です。
一見問題がなさそうに見えますが…
ボンネットを開けるとエンジンやバッテリーは泥まみれ。乾燥してこびりついています。
屋根近くまで水に浸かった車。
いま入っている中で一番ひどいやつ。
ある程度泥をかき出してから。
タウではこうした車を洗浄し、ロシアなどに輸出しています。
現地では購入した業者が修理したり、分解して部品として販売したりしているといいます。
取材中にも水没した車が運び込まれてきました。
被害に遭った水没車が集まるのはこれからだといいます。
災害が起きた直後では車を引き上げられない。
がれきを除去しないとレッカー車が入っていけない。
これから1日50台くらいのペースで入ってくる。
そのため近くに新たな場所を確保。10月30日から運用を始めました。
あそこの電柱あたりからこっちをすべて借りることになった。
3,000坪あるので400台収容。
さらに本社でも…
タウの宮本明岳社長、
こちらに特別なチームを設置して対応。
彼らは来年採用になる新卒のメンバー、
彼は人事で採用活動をしている。総力を挙げて迅速な対応をしている。
本来は休憩所として使われている部屋ですが、いまは机が置かれ手続きを待つ車検証などが並びます。
台風19号で水没車が20万台発生していると確認した。
年を超えて1年ぐらい対応が続くと思う。
脱出用ハンマー
さらに深刻な事態も起きています。
千葉と福島で死亡した12人のうちおよそ半数が避難の途中で車が水没したことなどによる車中死と見られています。
なぜ車中死が起きたのか?
日本自動車連盟の調査研究課、宮澤俊一さん、
水かさが一気にあがって車内に閉じ込められるケースが多い。
車が停止してドアが開かず、窓も開かず、どうすることもなくなる。
JAFが行った実験映像。
乗用車が時速10キロで深さ60cmの水たまりに侵入。
すると30mほど進んだところでエンジンが停止し、走行不能になりました。
ボンネットが水をかぶり、空気の取り入れ口から水が入り、エンジンが停止してしまう。
あとは電気類がショートしてしまい窓も開かなくなる。
走行不能に陥った場合、一刻もは早く脱出する必要があります。
しかし、実験では水深60cmまで車が浸かると水の抵抗によってドアは1分かかっても開けることはできませんでした。
こうなってしまったらどうすればいいのでしょうか?
脱出用ハンマーという専用の装備を使う。
カー用品店などで販売している脱出用ハンマー。
先端が尖っているので女性の力でも簡単に割ることができます。
車内の手の届くところに設置しておくことが重要だといいます。
今回のようなケースではそもそも車を使わない。
不要不急の車での外出を控えることも考えていく必要がある。