緊迫化する台湾情勢。台湾周辺では中国軍が8月7日までの予定で大規模な軍事演習を行ってきましたが8月8日も引き続き演習を実施していて今後の常態化が指摘されています。中国と台湾の緊張が高まる中、日本の安全保障への影響も懸念されています。番組では台湾からほど近い日本のある島を取材しました。
緊迫台湾情勢 軍事演習続く!
中国「独立勢力戒める」
アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したことで緊迫化した台湾情勢。
強く反発する中国軍は台湾周辺で大規模な重要軍事演習行動を行いアメリカや台湾をけん制してきました。8月7日までの4日間の実施を予定していましたが、台湾方面を管轄する東部戦区は日程を延長し、8月8日も継続したと発表しました。
中国 外交部
中国の軍事演習や訓練は公開し透明かつ専門的であり国内法、国際法および国際慣例に合致したものだ。
その趣旨は今回の事態を引き起こした者らに警告を出し「台湾独立」勢力を戒めるためだ。
4日から台湾を囲む6つのエリアで行われ、海軍や空軍、ロケット軍が参加した軍事演習。空母や潜水艦も投入したほか、戦闘機が台湾海峡の中間線を繰り返し超え、ミサイルも台湾上空を飛び越えたということです。
中国軍が演習を延長した中、緊急会見を開いた台湾の国防部は…
台湾 国防部
中国軍の演習は基本的にわれわれの訓練の空間と反応の時間を圧迫するものだ。
われわれは引き下がらずより積極的に対応する。
台湾側は海上の戦艦を攻撃する対艦ミサイルの写真を公開した上で8月9日と11日に陸軍による射撃訓練を行うと発表。緊迫の度合いが高まっています。
偶発的な衝突の可能性は?
8月8日、北京にあるアメリカ大使館の前では…
杉原啓佑記者
警察の車両が多く停まっています。
そして入り口にも警察官が立っている様子が確認できます。数メートルおきに警察が立っています。
国内の反発を警戒したのか中国の警察が厳重な警備体制を敷いていました。
アメリカは原子力空母ロナルドレーガンなどを台湾周辺に展開。中国軍の動きを監視しています。
安全保障に関する外交・防衛政策を担う国家安全保障局で次長を務めた兼原信克氏は現在の現状をこう分析します。
大江麻理子キャスター
台湾周辺の軍事演習は今後常態化する?
同志社大学
兼原信克特別客員教授
すると思う。
中国はここ10年で国力が3倍になっている。経済規模が3倍になってアメリカの4分の3。
軍事費が日本の5倍で25兆~30兆円の間、大きくなった軍事費を誇示してみせる。
ミサイルも海に打ち込んでいるがちょっとずらせば地上に落ちてくる。
「いつでもできる」ことを見せている。
大江麻理子キャスター
「演習」から偶発的な「衝突」に発展する可能性は?
同志社大学
兼原信克特別客員教授
それはある。中国と台湾は敵同士。形のうえでは内乱状態。
可能性が否定できない台湾有事。その影響が日本に及ぶ懸念もいま高まっています。
台湾有事 日本「備え」は?
"最西端"与那国の課題
沖縄県与那国島。台湾までの距離はわずか110キロ。島民およそ1,700人の小さな島です。
住田瑠菜記者
最西端の地、与那国島の丘からは天気が良ければ台湾が見えるということです。
島では6年前に陸上自衛隊が配備され、中国による台湾周辺海域などの動きに対して警戒監視活動をしています。
与那国島を訪れたのは5日の金曜日。この前日、中国から発射された弾道ミサイル1発が与那国島の北北西およそ80キロの地点に落下しました。
島民
前々から思っていたがいよいよ本当に怖い。
島民
頭にくる。人の庭先にそんなものぶち込んで。
やりたい放題ではないか。
与那国島周辺ではカジキが多く獲れるといいます。漁業組合の嵩西茂則組合長は弾道ミサイルの落下を受けて沖合での漁を自粛するように呼びかけました。
取材中…
電話相手
ミサイルが飛んだあとの雲みたいなものがまっすぐ横に行ってまっすぐ下に落ちている。
与那国町漁業協同組合
嵩西茂則組合長
ミサイルを打ち上げたような雲だというから見てと。
あの雲だ。あきらかに飛行機雲ではない。
急に曲がっているから。
見たこともないという雲。この雲がなんだったのかはっきりしませんが軍事演習を機に島の人たちは少しの変化にも敏感になっています。
与那国町漁業協同組合
嵩西茂則組合長
不安なのは今をきっかけに台湾周辺、EEZ境界近辺に中国海警局の船がぐるぐる回らないともいえない。
そういうことになると大変。だんだん漁場が狭まって漁ができなくなる。
町議会議員でもある嵩西さん、懸念しているのは台湾有事が起きた際の島民の避難です。島の外への移動手段は民間の飛行機と1隻のフェリー。フェリーには140名ほどが乗船できますが、島民全員を避難させるとなると2~3日はかかるといいます。
島のある場所を案内してくれました。
与那国町漁業協同組合
嵩西茂則組合長
防空壕代わりにしていた洞窟。
最悪そういうところをきれいにして使うしかないと思う。
島民の命を守るにはどうすればよいのか、嵩西さんはミサイルなどにも耐えうる施設が必要だと話します。
与那国町漁業協同組合
嵩西茂則組合長
避難しようと言ったって避難する場所が無い。そういうのを考えるとシェルターしかない。
与那国町は先月、石垣市などとともに有事の備えを万全にするよう避難シェルター建設を含む支援について沖縄県に要請しました。
与那国町
糸数健一町長
各自治体で対応しなさいとなっている。これは無理、物理的にも予算的にも。
緊迫シミュレーション
台湾有事が起こった際、日本政府はどう対応するのか。中国の演習期間中、東京・市ヶ谷のホテルでは…
山口博之記者
普段は結婚披露宴会場として使われる部屋では日本の安全保障政策を専門とする現職の国会議員などが集結しています。
始まったのは台湾有事シミュレーションです。
総理大臣役
小野寺五典議員
まずは国民の保護を最優先にしていただきたい。
特に尖閣あるいは東シナ海で事案が発生した場合、与那国を含め尖閣、先島諸島を含めて大変緊張が走ることになる。
総理大臣役を務めるのは小野寺元防衛大臣やその他、自衛隊の元幹部などが参加してシミュレーションが行われました。
難しい判断が迫られるシナリオに実践的に対応することで法律面や運用面での課題を見つけ、今後の政策立案につなげるのが狙いです。
想定するのは2027年、中国軍の創設100年となる節目です。
シナリオでは中国から漁船団が押し寄せ、漁民が尖閣列島に上陸。その上で中国軍が台湾に向けてミサイル攻撃に踏み切ります。
官房長官役
木原稔議員
台湾有事が発生ということで頭を切り替えてもらう。
台湾と尖閣の「複合事態」と認識する。
台湾を武力で統一しようとする中国。尖閣諸島にも同時に手を出せば日本は固有の領土の防衛に戦力を割かざるを得ないと考えられます。
この事態に対し日本側はアメリカに協力を求めますが…
アメリカ大統領役
ケビン・メア元米国務省日本部長
アメリカにとって台湾が優先だから余裕があれば。
総理大臣役
小野寺五典議員
尖閣での防衛事案は日米安保約5条の適用範囲でよろしいんですよね。
アメリカ側との足並みが乱れかねない場面もみられました。
浮き彫りになった課題
2日間にわたって行われた台湾有事シミュレーション。議論の進行役を務めた兼原氏は…
大江麻理子キャスター
見えてきた課題は?
同志社大学
兼原信克特別客員教授
課題は山のようにあって、まず一番大きい課題は政府が準備ができていないこと。
すごく短時間で決めることになる。有事なので。
これは「尖閣事態」これは「台湾事態」と中国はそう考えません。一気に来るので。
本番は複合事態ということ。