企業が募集した希望退職者などの人数の推移です。

去年はコロナで業績が悪化した企業が退職者を募るケースが急増し、リーマンショック直後の2009年以来の高い水準となりました。
では、どんな企業が募集したかというと、アパレル、飲食、観光などやはりコロナの影響が直撃した業種が中心で雇用環境の悪化を示しています。

こうした中、在籍型出向という雇用を守る新たな取組が注目を集めています。

スイスポートジャパン株式会社
[blogcard url="http://www.swissport.co.jp/"]
近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT-CTホールディングスは5月12日、今年3月までの1年間の決算が284億円の最終赤字だったと発表しました。

旅行需要が消失し、回復の見通しが不透明なことから1月に希望退職者を募集しました。これまでにグループ全体の2割にあたる1,439人から応募があったといいます。

KNT-CTホールディングスの米田昭正社長、
こういうことは避けて通れればそれに越したことはないが、この状況では避けて通れない。大変申し訳ない。

コロナ禍で退職者を募集する企業が去年から急増。今年は3月までの3ヵ月で去年の同じ時期の2倍に増えています。

男性/35歳。
コロナで仕事がなくなり呼び出しがあった。「割増退職金を払うからきょうで辞めてくれ」と言われた。

男性/57歳。
残っても望まない職種への転換、給与の段階的な大幅カットがあると言われた。

これはある調査で希望退職を打診された社員から出てきた体験談です。
一方、企業側の事情は…
東京商工リサーチの二木章吉さん、
切羽詰まったうえでの決断。雇用調整助成金を受けられているので何とか踏ん張っていられる状況。今後、夏以降どうなるか…

コロナ禍で雇用の維持を支えてきた雇用調整助成金。今月から助成率などが段階的に縮小されることでさらなる悪化が懸念されます。

そうした中、新たな形で雇用を守ろうとする取り組みが始まっています。

空港で航空会社のカウンター業務や貨物の積み込みを代行するスイスポートジャパン。
旅客便の減少で苦境に立たされていますが…
スイスポートジャパンの武智聡社長、
「在籍型出向」が機能するのであれば早期退職者を募る必要はないので。

会社に籍を置きながら別の企業へ出向して働く在籍型出向。1,200人ほどいる社員のうち300人以上が制度を利用しています。

政府は2月、この仕組を活用する企業に対し、賃金などの最大9割を助成する制度を新設しました。開始から3ヵ月ほどで272の事業所で2,500人以上が申請しています。

航空業界が打撃を受ける中、スイスポートは雇用調整助成金を活用し、多くの社員を自宅待機させる状態を続けてきました。
しかし、
この状態は本来いびつでいつまでも続いていいのか。

一部の社員から「なんでもいいから働かせてくれ」という声もあった。

スイスポート社員の関口哲士さん。成田空港で発券業務などを担当していました。

3ヵ月前、スイスポートに在籍したまま「佐川グローバルロジスティクス」に出向。物流倉庫で荷物のピッキングや発送作業にあたっています。

仕事がない状況から一転、巣ごもり需要で人手が足りない現場の役に立てていると実感しています。
何かしらの形で貢献できる場があるのはとてもありがたい。

ここで得られたものをどう生かそうか、考える機会がある。

受け入れる側の企業にとってもメリットがあるといいます。

佐川グローバルロジスティクスの三浦和之さん、
関口さんは空港内のロジスティクス事業。

倉庫の造り、環境の違いはあるが基本的な物の流れについて知識があるので戦力になっている。

関口さんには佐川から就労時間分の時給が支払われ、スイスポート側からの補てんを合わせると収入は以前と変わらないといいます。

こういう状況下で幸せな立場。

解雇せずに雇用し続けようと努力してくれることに感謝している。

現在、スイスポートが在籍型出向で社員を送り出している会社はアスクルやクボタなど20社以上にのぼります。

コロナが終わった後に会社が弱体化している状態を防げるか。

経済活動に関わりながらしかるべき対価を得ていく形で回復後のシナリオに備えるのも大事。
