これまで学生時代などに住むアパートからワンルームマンションに住み替えて、そして結婚して分譲マンションに移り住み、家族が増えるとさらに庭付きの一戸建てを買ってあがりという住み替えの住宅すごろくが常識でした。

今この常識が変わろうとしています。

チェンジ!住宅の常識

移住先の一軒家 実は…
海と山に囲まれた町、神奈川県鎌倉市。

福田美佐子さん。去年、東京・渋谷区のマンションからこの場所へ引っ越してきました。

Webクリエイターとして以前は都内で働いていましたが、コロナの影響で仕事はほぼテレワークに。

仕事を家の中でずっとやっていたらすごく圧迫感があると思った。

すごく息苦しくなって、郊外にいい物件があれば引っ越そうと。

福田さんが移住のため購入したのが高台にあるこちらの一軒家です。

2階建てで間取りは2DK、広さは80平方メートルと以前暮らしていたマンションのおよそ3倍です。

庭にはウッドデッキまで設置。天気の良い日はここで食事やヨガを楽しむといいます。
そんな福田さんの家、実は築62年の中古住宅です。

こちらが購入したときのリビングの様子。

2つあった部屋の壁を取り除き、開放感のある部屋へとリフォームしました。


壁紙はカラフルなものに張替え、中古住宅特有の古臭さはありません。


中古でも比較的きれいな状態で、ちょっと手を入れたら快適になりそうな家なら値段も手頃ですし、新築にこだわらなくてもいい。

実は今、福田さんのように中古の戸建てを購入する人が増えているといいます。首都圏で今年すでに1万4,000件を超えていて過去最高の数値に。

環境負荷⇓で中古が人気!
その背景の一つに環境問題があります。
年間8,000棟のリフォームを手掛ける住友不動産。
住友不動産の関川信治さん。
今までは自分の家をリフォームする人が多かったが、最近は中古を買ってリフォームする人が増えている。

新たに家を建てる場合に比べて環境負荷を減らせることも中古が人気の理由だといいます。

そこで新たにこんな取り組みも…
この家で使っていた柱ですが、検品して壁の裏の補強に使っていく。

これまでリフォームの際に廃棄していた木材の再利用です。

廃棄物を減らすだけでなく、新たな資材の調達も減らせるためCO2排出量の削減につながるといいます。

日本の新築信仰ナゼ?
日本の住宅の常識といえば新築信仰。

住宅の流通市場の中で中古のシェアはおよそ15%。欧米に比べると圧倒的に低い割合です。

しかしナゼ、そうした信仰が生まれたのでしょうか?

専門家は国の政策にも原因があると指摘します。

不動産コンサルタントの長嶋修さん。
住宅が1戸売れることで経済波及効果、トータルで2倍の波及効果がある。

景気を良くしようと思うと1丁目1番地は住宅政策、住宅市場を盛り上げよう、とりわけ新築。

いまもまだその流れは続いている。

その結果、中古の市場は広がらず、古い家は空き家となり、社会問題化しています。

AIが空き家問題を解決!?
そうした課題を解決しようと新たな取り組みを始めたIT企業があります。

コラビットの浅海剛CEO。
ハウマというサービス。戸建の値段をすぐにAIが査定する。

AI(人工知能)を使って家の売却価格を査定するサービス。
住所や築年数、土地の面積などを入力すると売る人も買う人も簡単に価格を把握できます。
中古の戸建は築年数や土地の形、間取りなど全てが一点もの。基準がないため相場がわかりづらいのが市場が広がらない理由でした。

すぐに価格が分かる。

いまは中古車買うのは当たり前、そういう時代が不動産にも訪れる。

価値再生で市場活性化
中古戸建で市場を活性化させようという動きは大手の住宅メーカーでも。

これまで新築戸建販売をメインにしてきたパナソニックホームズ。
今年4月から中古戸建を買い取り品質を保証した上で販売するビジネスに参入しました。

パナソニックホームズの赤羽潤さん。
20年経つと建物の評価はほぼゼロ。もう1度再生する。

営業担当の赤羽さんがやって来たのは空き家となった一軒家。何をするのでしょうか?
この家は24年前に当社で建てた。査定の依頼があり内覧に来た。

床下にもぐり、水漏れやシロアリの被害がないか点検。
ここ日が当たるので、床が日に焼けているか確認して。

ベランダや天井など建物の状態を隅々までチェックしていきます。その数、50項目以上。
さらに取り出したのが…
当社の物件には過去のメンテナンスやリフォームの履歴が備わっている。

引き継ぐことで次のオーナーに安心して住んでもらえる。

買い取った戸建は問題があれば補修を行い、一定の基準をクリアした上で販売します。
価値を重ねることによって中古住宅を購入する人が増える。

市場の活性化に繋がる。
