長きに渡って愛され続ける商品にスポットを当てる「ロングセラー研究所」です。誕生からちょうど50年となる商品のヒミツに迫ります。今回はカニ風味のかまぼこ「カニカマ」です。ヘルシー志向の高まりで世界中で食べられているこのカニカマは意外な出来事から誕生しました。
カニカマ50周年
アメリカの統治を終えて沖縄が日本に復帰した1972年、この年に生まれたのがスーパーでは魚コーナーにも並べられているカニ風味のかまぼこ「カニカマ」です。
お客さん
カニは頻繁に買えないからカニカマでサラダとか。
お客さん
カニカマをほぐして卵を入れてカニ玉として出すと本物のカニ玉と間違う。
カニカマのロングセラーの極意とは。
能登半島の中央に位置する石川県七尾市。
カニカマを開発したのが水産加工会社のスギヨです。原料は板状になっている白身魚のすり身。すり身をペースト状にした後、薄く伸ばしていく。そして…
スギヨ 団地工場
飛田一志工場長
この機械を通すことで切り込みが入る。
カニカマのほぐれを出します。
シートを巻くことでカニの身の形をつくる。
トマトやパプリカの色素で赤く着色したすり身を合わせてカニカマができあがる。
年間およそ5億本生産されているカニカマ、誕生のきっかけは意外なものでした。
50年前、開発チームの主任としてカニカマを生み出した清田稔さん(85歳)。元々は別のものを作ろうとしていたという。
カニカマ開発時の主任
清田稔さん
クラゲの依頼があったので人工クラゲをつくろうと必死にやったが人工クラゲが駄目で。
1960年代、当時珍味として使われていた中国産クラゲの輸入がストップしたことから人工クラゲの開発を進めていました。しかし、味付けなどがうまくいかず行き詰まっていていました。そのとき人工クラゲをたまたま刻んで食べてみるとあることに気づきました。
カニカマ開発時の主任
清田稔さん
この食感はカニに似てるな。
そこで人工カニ肉の開発へと舵を切った。魚の白身と塩のバランスで弾力性を調整。昆布やカツオのだしでカニの風味を再現しました。
そして1972年に誕生したのが世界初のカニカマです。
しかし、すぐにヒットしたわけではありません。
カニカマ開発時の主任
清田稔さん
最初、市場の大きい問屋に持って行ったが、かまぼこを知っている人はかまぼこを刻んだものは駄目だと。
築地市場では売れず、全国各地の卸売業者に直接持ち込んだ。するとある業者が「面白い商品」だと興味を持ち料理店や鮮魚店に販売。お客さんからは手軽にカニの風味が楽しめると好評で人気に火がつきます。
カニカマを生産するにあたりスギヨが毎年行っていることが…
スギヨ
杉野哲也社長
11月に北陸ではズワイガニが解禁になる。
一番質のいいものを買ってきてみんなで食べる。
本物のカニをよく知った上でつくる。
スギヨでは柔らかさや太さを機械で測定するなど本物のカニを徹底的に研究しています。
カニカマを開発して以降、見た目や味がより本物に近い商品を次々と生み出し、年間の売り上げは100億円以上に。
しかし、いま逆風が…
スギヨ
杉野哲也社長
主原料が高騰している。
向こう(業者)の言い値で買ったら産業として成立しない。
原料であるアメリカ産の魚のすり身、アメリカのインフレと円安などで仕入れ価格が3割ほど上がっているという。
そんなカニカマのロングセラーの極意とは。
スギヨ
杉野哲也社長
カニを超えるような商品をつくるため、たゆまず品質を改善させる。