ランス・ヤナギダテ
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東京・表参道。
その歩道近く、閑静な路地裏にフレンチレストラン「ランス・ヤナギダテ」があります。
ランチタイムは満席状態。
お昼のコースは3,000円で楽しめます。
この日のメインはトリュフを大胆にあしらった牛フィレ肉を使用した料理。
素材にひと手間加えているのが人気のヒミツです。
このお店の隠れた主役が、
甘みがある。個性あるパンとメイン料理がちゃんと合っている。
料理と相性抜群のパンです。
ある男性はパンを取る手が止まりません。
パン好きじゃないけど、おいしい。
オーナーシェフの柳館功さん。
冷凍庫から何かを取り出しました。パンです。
いま冷凍している状態なのでカチカチ。これをある程度、解凍した状態でオーブンに入れる。
実はこれ、冷凍パン。
9割方焼いたあと凍らせているので食べるときはオーブンで軽く火にかけるだけ。
「どれくらいで焼き上がる?」
3分30秒。
焼き立てのパンがいつでも手軽に提供できるのです。
今までは自分の思うパンがなかったので、自分のところで作る。それで無理をしている。スタッフも大変な思いをしながら状態も毎日均一にできない。天気によってパンがいい状態であがらなかったり。そういった時に、この冷凍パンはいつでも同じ品質なのでありがたい。
冷凍パン
これまでの冷凍パンは生地を凍らせたものが主流でした。
表面がひび割れやすく、品質にも影響が出るといいます。
一方、焼いた後に凍らせる冷凍パン「焼成冷凍パン」はこうしたことがないのです。
お客様に冷凍パンであることを伝えてみると、
本当に?香りがすごく強い。
これが冷凍?おいしいよね。とても冷凍とは思えない。
冷凍パンのイメージを覆す冷凍パン。
全国の一流レストランやホテルがこぞって使っているそうです。
今や1兆円規模といわれる冷凍食品市場。
これまで常識を一変させる新たな戦いが始まっていました。
冷たくて熱い冷凍食品ビジネスの最前線を追いました。
株式会社スタイルブレッド
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群馬・桐生市。
ここに冷凍パンで急成長をしているパンメーカー「株式会社スタイルブレッド」があります。
従業員は230名、売上高は12億円。ここ10年で売り上げを12倍に伸ばしています。
社長の田中知さん(48歳)。
出荷を待つ自慢の冷凍パンを見せてもらいました。
倉庫いっぱいに積まれた大量の冷凍パンを1週間で売り切ってしまうそうです。
急速冷凍をかけている。
株式会社スタイルブレッドの冷凍パンは60種類以上、賞味期限は120日もあります。
遠方にも送れるため、全国のホテルやレストラン、1,000店以上で使われています。
製造方法
その冷凍パン、どうやって作っているのでしょうか?
まず見せてもらったのが原材料です。
小麦は国産とフランス産をブレンドしたものを使っています。
塩はフランスの海でとれた天然塩。
そしてこちらが一番のこだわり。地元の群馬県産の小麦から培養した天然酵母です。
これがふっくら焼き上がる決め手。
自家製の天然酵母だと、いろいろな香りを出すので焼き上げた時に香りが非常に良くなる。
こだわりの素材で作った生地をオーブンに入れて9割程焼き上げれば、香ばしいパンの完成ですが冷凍パンはここからが本番です。
焼き上げたパンを特殊な冷凍庫に入れ、マイナス20度以下まで数分間で一気に冷やして凍らせます。
急速冷凍をしたパンは見た目はあまり変わりませんが、ハンマーで叩いてみてカチンコチンです。
これが品質を保つヒミツです。
パンを急速に冷凍すると組織が壊れず、水分が保たれるので品質を長期間維持できます。
田中知社長
田中知社長、実は大正時代から続くパン屋の4代目。
職人としてパンを焼く毎日を過ごしていました。
しかし、
常に焼き立てを出して、焼き立てじゃないものは売れなくなる。もったいない、まだまだ食べられるパンを捨てなければならない。このビジネスに私なりに限界を感じた。
悩んでいた田中知社長は、視察でアメリカへ。
そこで出会った冷凍パンに掛けることを決断したのです。
イオンスタイル板橋前野町
東京・板橋区にある大手スーパー、イオンの新店舗。
店の前で田中知社長を見つけました。
なにやら辺りを見渡しているようですが…、何をしているのでしょうか?
お子さん連れのお母さん、非常に多い。
どうやら客層のリサーチのようです。
本当に女性が多い、想像以上に。
実は田中知社長、これまで業務用だった冷凍パンを一般向けに新たに開発し、10月から「イオンスタイル板橋前野町」で試験販売することが決まっていたのです。
田中知社長、会社の業績が好調にも関わらず、なぜ新たな挑戦を始めるのでしょうか?
もともと私たちは町のベーカリーなので、多くの人にパンを食べてもらって喜んでもらいたい。
一般向け冷凍パン
一般的にはイメージが良いとは言い難い冷凍パン。
果たしてどんなパンなら売れるのか?
開発を任されたのは入社10年の職人、小嶋秀一さんです。
一般消費者向けとなると毎日食べても飽きがこないというか。
小嶋秀一さんは食べやすくてやさしい味わいのパンを作ることにしました。
早速、試作を開始します。
用意したのはクルミやゴマ、ヨーグルトなど5種類の素材。
女性が好みそうな材料を練りこみ、生地を作ります。
それを焼き上げ完成したのが5種類のパンです。
8月9日、株式会社スタイルブレッドの本社にイオンリテール株式会社南関東カンパニーの大島学支店長がやってきました。
一般向けの冷凍パンの試作品を試食してもらいます。
ところが担当者の顔が冴えません。
まわりの食材と一緒に食べると味が消えちゃう。
パン単体で食べられることも多いと思うので、甘さがほしいなと。
これまで料理を引き立てる控えめな味わいのパンを作ってきた田中知社長。しかし、今回はパンだけでも美味しく食べられる味付けを求められました。
一から開発を見直すことになりました。
一般家庭に喜んでもらうためには、まだまだ工夫が足りなかった。
冷凍パンの試食会
田中知社長はこの日、主婦を集め冷凍パンの試食会を開きました。
冷凍パンに求めるものは何か?
女性達からは様々な意見が出されました。
帰ってくると料理を作りたくないくらい疲れていて、冷凍パンを温めるだけで食べられるのがいい。
子供が健康を害したら嫌だなと思うようになって、食品とかも値段が高くてもすごくこだわるようになった。
参加者から寄せられた意見、そこには「ヘルシー」や「オーガニック」など健康志向の言葉が多く書かれていました。
欲しいのは家族が安心して食べられるパン。
イオンリテール株式会社からリクエストされた甘さと主婦が気にする健康をどう両立させるのか?
その答えは琥珀色の液体にありました。
小嶋秀一さん
こだわりの業務用の冷凍パンを手掛ける株式会社スタイルブレッド。
新たに一般家庭向けの冷凍パン作りを進めていました。
求められるのは甘さと健康。
開発責任者の小嶋秀一さん。
生地のつなぎは牛乳から低カロリーの豆乳に変更します。
甘さを出すために小嶋秀一さんが目をつけたのが「蜂蜜」です。ビタミンやミネラルが豊富で健康志向の女性へのアピールにもなります。
この蜂蜜を生地に練り込み甘さを加えます。
混ぜ終わると生地のかたさを確認します。
ちょうどいい。
カタチを整えて発酵させます。
発酵後の生地をチェックしてみますが、
膨らんでこない。失敗ですね。
冷凍パンに使用している天然酵母は発酵力が弱いため、蜂蜜を入れすぎるとうまく膨らまないようです。
しかし蜂蜜を減らすと甘さが出ません。
小嶋秀一さん、絶妙なバランスを探るため600個以上のパンを作り続けました。
開発に取り掛かってから2週間後。
仕込んでいた蜂蜜パンを見てみると、
いい感じになっている。
ようやく甘くて膨らむ蜂蜜の分量が分かりました。
この生地を焼き上げ、急速冷凍にかけても美味しいのか?
田中知社長が最終確認をします。
蜂蜜のやわらかな甘みが天然酵母の香りとマッチしている。これでイオンに行ってみましょう。
田中知社長
9月18日、試験販売の初日。
株式会社スタイルブレッドの新作は冷凍食品売り場ではなく、パン売り場に置かれていました。
特製の冷凍ケースもこの日のために用意しました。
新作の蜂蜜パンのほか、味わいの違う3種類もラインアップに加えました。
値段は2個入りで1袋180円、120日間美味しさを保ちます。
田中知社長、気になって売り場へやって来ました。
焼きたての試食で美味しさをアピールします。
外はカリカリとして香ばしく、中はもっちりとして甘い冷凍パン。
試食の評価は?
うまいよ。冷凍とは思えない。冷凍じゃない市販のパンより美味しいんじゃないか。
早速、お買い上げ。
4種類全部買っちゃいました。
次々と売れていきます。
なかでも一番人気だったのは蜂蜜パン。狙い通りです。
甘い方が食べやすいかなと思って。
働いているので、簡単に調理できる食材があれば助かる。
この日用意したパンは完売。
好調な結果を受け、田中知社長の冷凍パンはさらにイオンの4店舗で販売することが決まりました。
冷凍パンはまだ未知数。一般家庭では食べられていない。冷凍パンはまだまだ広がりが、可能性があると思う。当たり前のように冷凍パンを買える世の中をつくっていきたい。
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