韓国の文在寅政権が経済、特に雇用で苦境に立たされています。
若い世代の雇用環境は改善の兆しが見えず、30歳未満の若者の失業率は2月も9.5%という高い水準でした。

こうした中、韓国の若者たちが意外なところに目を向け始めています。

蘇大盛さん
瑞々しく真っ赤に色づいたイチゴがいまシーズン最後の収穫期を迎えていました。

イチゴ農家の蘇大盛さん(39歳)は、
最初の収穫の時はイチゴがつかめないほど手が震えた。

歓声を上げるほどうれしかった。

韓国・ソウルから南へおよそ250キロ、のどかな風景が広がる井邑市。

農業が中心的な産業です。
蘇大盛さんは去年8月からこの場所でイチゴの栽培を始め、初めての収穫を迎えました。


自分の子どものようにかわいい。

蘇さんは元々ソウルにある半導体の製造会社で働いていました。
慢性的な過労社会といわれてきた韓国。

蘇さんも残業が続き、家族との時間も十分に取れませんでした。
残業中にふと生まれたばかりの子供の顔が浮かんだとき、会社を辞める決心をしたといいます。
そして妻子と共に移り住んだこの場所で農業を始めました。。

都市で事業を行う一般の企業よりも付加価値の高い農業をすることもできる。

農業には夢がある。

実は韓国、イチゴの輸出大国です。
シンガポールやタイなどに向けて年間およそ4,800トンを輸出し、その量は日本の4倍ほどになります。

農作物全体の輸出額も去年、7,700億円ほどに達し過去最高額を更新しました。

農業を選ぶ若者
こうした農業にいま熱い眼差しを送るのが韓国の若者たち。
この日、ソウルで開かれていたのは農業に興味を持つ人たちを集めた相談会。


年配の参加者たちに混じって、そこには20代や30代の若者の姿も。
就職するのは大変。

中小企業でも十分な待遇であればいいが満足のいく待遇ではない。

自営業者も最近は飽和状態で競争が激しくなっている。

農業はある意味、良い選択肢。

文在寅政権の元で雇用環境がなかなか改善しない中、韓国政府や自治体は農業を始めたい若者向けの事業として資金の支援や住宅の斡旋などを始めました。


こうした対策もあってか、農業に携わる人の数は21ヵ月連続で前の年の同じ月より増えていて、特にこの数ヶ月は10万人規模で前の年を上回っているのです。


全羅北道の帰農帰村支援センターの成秀美チーム長は、
都市部に働き口がない一方で地方の農業は担い手が不足している。

農業は若者に起きている問題を解決できる最適な方法。

呂珍奕さん
支援制度を活用して新たな分野を切り開こうとする人も出始めています。

作業場の建設費、およそ1,000万円の3分の1は自治体からの支援だったといいます。

ずらりと並んだプラスチック製のケースの中には一体何が入っているのでしょうか?

これは幼虫。卵から成虫になるまで3ヶ月くらいかかる。

脱サラして2016年から事業を始めたという呂珍奕さん(35歳)。

食用昆虫の幼虫を販売し、月に60万円ほどの収入を得ているといいます。

こちらはその幼虫を使って作られた商品。

顆粒タイプや液体状にしたもの、そのまま乾燥させたものなどが健康食品として売り出されています。

ソウル支局の横堀拓也さん、
こちら幼虫の姿がほとんどそのままのような感じですが、どんな味がするのでしょうか?

香ばしい香りが口の中に広がります。あまり食べたことのない食感です。

昆虫は家畜と比べて育てる際の環境負荷が少なく、牛肉や豚肉の3倍タンパク質を含んでいる。未来の食料として十分可能性がある。

食用の昆虫は食糧難を救う次の一手として期待され、呂さんも事業の拡大を目指しています。

先行き不透明感が高まり、新たな雇用の創出に苦しむ韓国経済。
農業への人材流入という思わぬ結果は新たな成長へとつながるのでしょうか?