安部元総理大臣の国葬が9月27日に東京の日本武道館で行われました。安部元総理がデフレ脱却を目指し進めた経済政策アベノミクスは1ドル80円台と今とは逆に苦しめられた円高や株安から抜け出したものの、物価と賃金がそろって上昇する経済の好循環はまだ見えていません。安部元総理の経済ブレーンを務めた人物にアベノミクスの成果と今後の課題を聞きました。
安部元総理国葬
一般献花に2万3,000人
午後2時前、遺骨を持ち会場である日本武道館に到着した昭恵夫人。岸田総理大臣が先導する形で会場に入ります。
自衛隊は弔いの空砲、弔砲を放ちました。
国葬にはおよそ4,200人が参列。安部元総理が好きだった富士山をイメージして飾り付けられました。
また天皇皇后両陛下、上皇ご夫妻の使者や秋篠宮ご夫妻、佳子さまらも参列しました。
会場近くの九段坂公園には一般向けの献花台も設置。沿道には弔問に訪れた人の長い列ができ、国葬が始まる午後2時過ぎには献花できるまで3時間以上かかるほどとなりました。
政府は一般献花に訪れた人はおよそ2万3,000人だったと発表しました。
一般の弔問客
安部元総理のテロに対する無念な思いを追悼するために来た。
一般の弔問客
大学が夏休みだったので、長年総理を務めた安部元総理の最後の別れだったので参加した。
その一方…
警視庁担当
梅田聖記者
国葬開場前の九段下交差点です。国葬に賛成する人たちと反対する人たちが激しく意見を対立しあっています。
国葬会場である日本武道館の周辺でデモを行う反対派に対し、賛成派が「帰れ」と怒号を浴びせる場面も。
警視庁によると都内で国葬関連で届け出のあるデモは4団体。会場を中心に2万人に上る警察官が警備にあたっていて、武道館の前では反対派と小競り合いも見られました。
菅氏「いつも正しかった」
経済界からの参加者も
そして午後2時すぎ、国葬が始まりました。
岸田総理
安倍さん、あなたはまだまだ長く生きていてもらわなければならない人でした。
残念でなりません。痛恨の極みであります。
そして友人代表として言葉を送ったのが菅前総理。
菅前総理
あなたという人がいないのに時は過ぎる。無情でも過ぎていくことに、私はいまだに許せないものを覚えます。
体調不良を理由に一度総理の座を退いた安部元総理。渋っていた再登板を後押ししたのも菅氏でした。
官房長官と総理という関係で7年以上にわたり二人三脚で政権運営にあたりました。
菅前総理
交渉などでは一歩後退すると勢いを失う。前進してこそ活路が開けると思っていたのでしょう。
総理、あなたの判断はいつも正しかった。
そんな覚悟と決断の毎日が続く中にあっても総理、あなたは常に笑顔を絶やさなかった。
いつも周りの人たちに心を配り、優しさを降り注いだ。
総理大臣官邸で共に過ごし、あらゆる苦楽を共にした7年8ヵ月、私は本当に幸せでした。
海外からも多くの要人が参加。インドのモディ首相やシンガポールのリー・シェンロン首相、オーストラリアのアルバニージー首相など安部元総理が関係を重視していたアジア太平洋地域の現役の首脳に加え、イギリスのメイ元首相、フランスのサルコジ元大統領、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長の姿などもありました。
また、アメリカからはハリス副大統領やキャロライン・ケネディ氏など歴代の駐日大使が献花。
一時、出席するとの情報もあったトランプ前大統領の姿はありませんでした。
また国葬には楽天の三木谷浩史会長など経済界からの参列者の姿も多くありました。
そして午後6時すぎ、安部元総理の遺骨は昭恵夫人に抱えられて会場をあとにし、国葬は終わりました。
弔問外交で"対中国"強化
岸田政権「経済政策」へ舵?
国葬に合わせ岸田総理は各国首脳との会談を重ねています。9月27日はインドのモディ首相とオーストラリアのアルバニージー首相と会談を行いました。国会記者会館の篠原記者に聞きます。岸田総理がこの2ヵ国の首脳と会談を行ったその狙いはどこにあるのでしょうか。
官邸キャップ
篠原裕明記者
インドとオーストラリアは安部元総理が外交政策で重要視していた国で、台頭する中国を念頭に置いた戦略的枠組み「クアッド」、日米豪印4ヵ国の構成する国との友好関係を今後とも維持していくための狙いがありました。
安部元総理は対中戦略の中で特にインドを日本側に引き入れることに力を入れ、国際政治の場で「自由で開かれたインド太平洋」という外交構想を提唱しました。
9月27日の2ヵ国との会談は安部元総理の外交遺産を引き継ぐ上で重要なものだったといえます。
田中瞳キャスター
国葬も終わり、弔問外交も明日で一段落となります。
いま支持率が下落している岸田政権ですが今後はどのような道筋を描くのか?
官邸キャップ
篠原裕明記者
まず総理周辺は「参院選後、国葬や旧統一協会問題のせいで政策やメッセージが国民に届かなかった。国葬が終われば政策で勝負できるのではないか」という見通しを示していて、議論が分かれる経済政策についても今後はあえて取り組んでいく姿勢を示しています。
例えばカナダが9月で入国規制を撤廃すると発表したことを受けて総理側近の一人は「日本もいつ入国規制を全廃するか検討する時期が来た」と話すなど、円安に対応するため、さらなる外国人受け入れに向けた政治判断を行う可能性も出てきました。
また官邸内では経済・社会活動の正常化に向けて「必要のない所ではマスクを外していい」と岸田総理が国会演説などで呼びかける案も検討されています。
この他、岸田総理がニューヨーク証券取引所の演説で言及した年功型の賃金システムを見直すといった労働移動を円滑化させる労働市場改革なども優先的な課題として検討されています。
官邸キャップ
篠原裕明記者
これまでの岸田政権の安全運転とは違う、一歩先を読んだ経済政策を掲げることができるかどうかが、まさに政権の命運を左右しそうです。