ソニーグループとホンダによるEV(電気自動車)の新会社「ソニー・ホンダモビリティ」は第1弾のEVを北米で生産し、2025年前半に受注を始めると発表しました。EV普及に弾みをつける存在となるのでしょうか。
ソニー&ホンダの新型EV
2025年から受注開始
先月誕生した新会社「ソニー・ホンダモビリティ」が開催した初めての戦略発表会。
ソニー・ホンダモビリティ
水野泰秀会長

リアルとデジタルを融合させた新しいサービスを提供していきたい。
ソフトウエア技術を中心とした新しい会社、モビリティーテックカンパニーになる。
新型EVはホンダの北米工場で生産します。
2025年前半に受注を開始し、オンラインを中心に販売。2026年春以降にアメリカと日本で納車する計画です。
2年前にEVの試作車を公開し、世界を驚かせたソニー。
今回、ホンダとタッグを組んで作る新たなEVは一体どんな車なのか。
発表会で披露された動画では来年1月の発表が示唆されただけで詳細は明らかにされませんでした。
しかし、そのヒントになりそうな人物がいます。ソニー出身の川西泉社長です。
ソニー・ホンダモビリティ
川西泉社長

提供したい価値観について話す。
ソニー時代、プレイステーション2などのゲーム機開発に携わったほか、交通系ICカードなどに使われる「フェリカ」の事業を担当。そして、2018年に復活した犬型ロボット「aibo」の開発責任者を務めました。
ソニー・ホンダモビリティ
川西泉社長

キーワードは「自律」だと思っていて、自動的に動いて目的地に移動できることが一つの要素だと思う。
これまで担当してきたアイボやドローン、自律的に動けるもの、ロボティクスの技術を使ったものが一つの根幹にある。
新型EVはソニーが試作車を通して公開してきた技術の活用。自動運転機能を搭載し、車内で動画やゲームなどを楽しめる車を目指しています。
ソニー・ホンダモビリティ
川西泉社長

バッテリーの時間を持たせるように走る。運転性能をその人に合わせて調整する。
そういうことをAIを使ってやっていけるだろう。
世界のEVメーカーでは最大手のテスラがすでに年間90万台以上を販売し、大きくリードしています。
ソニーのエンターテインメント性で差別化を図る新たなEVに勝算はあるのでしょうか。
ソニー・ホンダモビリティ
水野泰秀会長

どういう空間価値を提供できるかが今後大きな勝負の分かれ目で、その基本を握っているのはソフトウエアだと思う。
突き抜ける技術で勝負しなければいけない。
EVの販売台数が3倍に
三菱は異例の"再販売"へ
世界で初めて量産のEVを開発した日本。しかし、EVの去年の販売は1%に満たず、国内でも低迷してきました。
そうした中、今年度の上半期は去年の3倍に急増するなど異変が起きています。
日産のサクラなど新たな軽のEVが登場したことに加え、国と自治体の分を合わせると100万円近くなることもある補助金の存在も販売を後押ししています。
市場が好調の中、異例の決断を行ったのが三菱自動車です。
10月13日に発表したのは新たなEVではありません。
三菱自動車
軽EV推進室
五島賢司室長

ミニキャブ・ミーブは一時期、生産・販売を注視することを決定したが、再販するということに方針を変えた。
2011年に国内唯一の商用軽EVとして登場したミニキャブ・ミーブです。
しかし、充電インフラや走行距離に課題を抱える中、販売は低迷。2020年度で販売は終了しましたが、一転した来月から販売を再開することに。
一体なぜなのでしょうか。
三菱自動車
軽EV推進室
五島賢司室長

脱炭素を目指している会社、表明している企業から非常に関心が高く、問い合わせをいただいている状況。
新しい波が来たなという手応えは非常に感じている。
補助金を使えば価格は150万円ほどになる見込みです。
今後は航続距離を伸ばすなど、利用者にニーズに合わせた開発を継続し、新たに投入する計画です。
三菱自動車
軽EV推進室
五島賢司室長

このタイプ(商用軽)の車を使う業態は非常に多いので、このカテゴリーのEVは非常に待望されていると感じているので需要は多いと思っている。
EV普及のカギ インフラ
"走りながら充電"技術も
じわりと進むEVの普及。今後のカギを握るのが充電インフラです。
需要が多い都市部では用地の確保が難しいといわれています。
一方で1回の走行距離を伸ばそうとすると搭載するバッテリーが大きくなり、高価になってしまうことが課題です。
そうした課題を解決しようと今、新たな充電方法を開発する動きが相次いでいます。
東京大学の敷地にあったのは手作りの車。
東京大学
大学院新領域創成科学研究科
清水修特任講師

ここでは車を車を走りながら充電する「走行中給電」の研究をしている。
非接触で電気を送るという技術を使い、道路から車に直接電気を送る。
地面にはピンク色の装置が置かれ、車にはモニターが。電気を受け取ると緑色のバーが表示されます。
実際に車を走らせてもらいました。車がピンク色の装置の上を通過すると一瞬、緑のバーが大きく反応。電気を受け取りました。
一体どうなっているのでしょうか。
東京大学
大学院新領域創成科学研究科
清水修特任講師

こちらが道路に置く「送電コイル」で、こちらが車に付ける「受電コイル」。
「受電コイル」はピンク色の部分。
走りながら充電できるカギとなるのが道路側と車側の2種類のコイルです。道路に置かれたコイルに電気を流し、その上に車に搭載したコイルが来た時、電気を道路側から車側に送るという仕組みです。
東京大学
大学院新領域創成科学研究科
清水修特任講師

これをいっぱい埋めていくことになるが、交差点の前に置くのが効果的。
全国の交差点の前30メートルにこのコイルを敷き詰めれば、日本中の自動車がいくらでも走れる計算。
来年度には千葉県の柏市で実際の公道を使って実証実験を行う予定です。
東京大学
大学院新領域創成科学研究科
清水修特任講師

要素技術は日本はすごく強くリードしているが、実証実験ができず海外に遅れを取っている。
実証実験をなるべく早く進めて、次のステップに進むことが何よりも大事。