ソフトバンクグループは去年4-12月までの決算を発表し、純利益は3,926億円と1年前と比べ87%の大幅な減益となりました。
ベンチャー企業への投資で大きな利益を稼いできた孫正義会長兼社長ですが、半導体の設計を手掛けるイギリスのアームの売却や中国政府の規制といった暗雲が垂れこめています。
2月8日にの会見で孫社長はなにを語ったのでしょうか。
孫正義氏 決算「冬の嵐」!イギリス アーム売却断念
2月8日、孫社長が一番時間を割いて説明をしたのが…
先ほどアームの売却を中止することをエヌビディアと合意に至った。
イギリスの半導体設計子会社アームのアメリカの半導体大手エヌビディアへ売却する計画を断念したと発表しました。
GAFAに代表されるような主要なIT業界の会社がこぞって猛反対。
アメリカ・イギリス・EUの国々の政府もこれに猛反対。
半導体業界の大手2社が一緒になることについて各国が競争上の問題があると反発したことが背景にありました。
売却による資金調達ができなくなったためソフトバンクグループは2022年度中にアームをハイテク株中心のアメリカのナスダック市場へ上場させる方針に転換しました。
さらに…
去年の決算期が良すぎたのかもしれないが、その反動も含め大幅な減益。
去年4-12月期の純利益が3,926億円と1年前と比べて87.1%も減少したと発表。
去年3月には1万円を超えていた株価も2月8日の終値は5,302円。50%近く下がっています。
1年前…
私の投資法のイメージを見せる。
音楽に合わせて出てくるかのようにリズム感を持って。
投資事業の絶好調ぶりを表現してみせた孫社長。
なぜ業績は悪化したのか。
特にわれわれが投資しているような高成長企業の株価は今やられている。
世界の新興企業に投資するソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資成績が悪化。
なかでも投資した中国企業の不振が最大の要因です。
下がっている最大の理由は中国銘柄ということになる。
中国銘柄でビジョン・ファンドの利益をいためている。
ソフトバンクグループ 大幅減益!最大の要因は"中国"
ソフトバンクグループはこれまで中国のIT企業に対して重点的に出資してきました。
その中国では巨大IT企業に対する規制が強まっています。
出資先のひとつ、配車サービス大手の「摘摘(ディディ)」。一時世界で5億人ほどのユーザーを抱えていました。
去年6月にニューヨーク市場に上場。
しかし、直後に違法な個人情報収集を理由にアプリの新規ダウンロード停止を中国当局から命じられました。
上海支局の菅野洋平記者。
中国のアプリストアで「摘摘」と入れて検索してみると同業他社のアプリがたくさん出てきますが摘摘のアプリはいまだにダウンロードが停止されたままです。
新たなユーザーを増やせないまま半年以上が経過。
摘摘の総収入は規制前に比べて10%以上も減少しました。
米中対立のあおりを受けアメリカへの情報流出の懸念を解消すべく去年12月にニューヨーク市場での上場廃止手続きを始めると発表。株価は低迷しています。
出資するIT大手アリババグループも株価は下落傾向です。
おととし、電子決済アリペイの運営企業が香港・上海で計画していた上場を突然延期する異例の事態に。去年4月、中国当局は市場で独占的な地位を濫用したとして27億5,000万ドルの罰金を科しました。これらの影響で株価はおととし秋からおよそ65%安い水準に低迷しています。
時価純資産に占める割合として6割くらいがアリババだった。現在は24%。
直近の3ヵ月で言えば一番その価値を減らした原因はアリババの株価だった。
ソフトバンクグループ 国内にも投資!
スニーカーアプリでAI活用
そんな中、ソフトバンクが新たな投資先として目をつけたのが日本です。
いよいよ日本からも素晴らしいAIを活用した会社が生まれつつある。
日本の投資専門のチームも結成中だ。
世界中のIT企業などへの投資を進めるソフトバンク・ビジョン・ファンドが目をつけたのはこちらのスニーカーです。
加納康祥記者。
お店の壁一面にスニーカーが並んでいます。例えばこちらのスニーカー、一足なんと150万円ほどです。
いまや高値で取引されるスニーカー。多くの人々が使っているのが…
30代の男性。
普段からアプリでスニーカーダンクを使っているので。
スニーカーなどを個人で売買できるアプリ「スニーカーダンク」です。
1ヵ月に400万人が利用しているといいます。
このアプリを運営するSODAが去年12月にビジョン・ファンドから出資を受けました。
スニーカーなどの偽造品を見分ける鑑定は現在スタッフが実際見て行っていますが、今後はAIの活用を目指すとしています。
アジア市場への進出も視野に入れます。
SODAの内山雄太代表。
ソフトバンクグループの経済圏と連携できるのでゲームチェンジできるレベルの秘策がいろいろ打てる。
睡眠障害の薬 デジタル連携も
ビジョン・ファンドは医薬品ベンチャーにも投資しています。
去年1月に創業したアキュリスファーマ。社長の綱場一成さんです。
海外からすでに承認されていて日本では使えない医薬品を探してきて日本に導入する。
アキュリスはすでに欧米で承認されている睡眠障害の治療薬「ピトリサント」を日本で独占的に販売する権利を取得。
その治験などにかかる費用として68億円の出資をビジョン・ファンドなどから受けました。
またアキュリスは睡眠障害の診断に関わるデジタル技術を持つ企業との提携を考えていて、ソフトバンクグループのネットワークに期待しています。
ウェアラブル端末かもしれない。もしくはAI問診かもしれない。
デジタル戦略についてビジョン・ファンドに相談している。
投資事業の復調は?「AIの民主化」も壁
逆風の中、企業への目利き力がさらに問われていくことになるソフトバンクグループ。
企業戦略に詳しい専門家はAI関連企業への投資に特化してきたことも重荷になると指摘します。
立教大学ビジネススクールの田中道昭教授。
ソフトバンクグループはファンドの立ち上げ以降、「ビッグデータ×AIでビジネスに最適化」と非常にいろいろな投資をしてきた。
一方、AIの一般への普及がかなり本格化してきている。
「AIの民主化」がソフトバンクグループの競争優位性を低下させる方向性にある。
また、かつてシェアオフィス「ウィーワーク」への投資で失敗したことも響いているといいます。
投資ファンド市場の投資家からまだ信用が毀損している状況でなかなか外部から資金調達ができない。
ソフトバンクグループの株価が抜本的に上昇基調になっていくのは非常に困難。