今回の「ケーザイのナゼ」はシャインマスカットに注目します。シャインマスカットは日本で開発されましたが、中国へ無断で持ち出され、農林水産省はその損失が年間で100億円以上に上るという試算をまとめました。ただ、日本のブドウの輸出額は伸びていて、この10年で10倍以上増加しています。いまではその多くをシャインマスカットが占めているといいますが、なぜ輸出が伸びているのでしょうか。
「シャイン」"中国流出"も輸出増
都内のスーパー「ベニースーパー佐野店」。入口近くに並べられているのはシャインマスカットです。1房1,300円で販売されています。
お客さん
そのまま食べられておいしい。1,300円は安い方ではないか。
一方、中国の果物店を覗いてみると、ありました、シャインマスカット。ずらりと並んでいます。
上海支局
菅野洋平記者
袋の横にはカタカナで「シャインマスカット」と書いています。
「指先の上でおいしい味『シャインマスカット』」と書かれていますが、実はこれ中国産。価格は1房19.3元、日本円でおよそ380円です。
その味は…
上海支局
菅野洋平記者
シャインマスカットはタネが無いはずですが、普通にタネがあります。
皮が分厚いせいか、かなり口の中に皮が残ります。
中国のブドウ畑の映像。マスカットを頬張る女性の姿も。
ただこのシャインマスカットはもともとは日本の品種で中国へ種か苗が無断で持ち出されたものです。
現在、中国の栽培面積は日本のおよそ30倍。日本は年間100億円以上の許諾料を損失しているとの試算があります。
そんな中でも日本のシャインマスカットの輸出は増えています。
東京青果から輸出されるシャインマスカットは去年に比べ6割増化しています。
日本産シャインマスカット輸出増
なぜそこまで増えているのでしょうか。
東京青果
堀内知之さん
もげない、粒が。
他のブドウは日にちが経つともげてしまうが、そこが無いので安心して輸出できる。
ほかに品種にはない輸送に耐えられる強さが特徴です。
さらに輸出を増やす取り組みが…
アグベルという農業法人、取り扱うブドウの6割を海外に輸出しています。
アグベル
丸山桂佑社長
富裕層はもちろんだが、具体的には香港・台湾・シンガポール・タイ。
日本産は富裕層に人気で、彼らが求めているのは品質の高さです。
こちらでは生産から販売、流通までを自社で手がけることで輸送の時間を短縮。最短で収穫したその日にブドウが現地に届くといいます。
アグベルは今年、去年の2倍以上になる4億円の売り上げを見込んでいます。
アグベル
丸山桂佑社長
お客様まで届く時間を最大限短くできる。そうすることで利益率がどんどん上がる。
さらにこんな取り組みも。
スマート農業の実現に向けたプロジェクトに自治体や企業が参加。開発しているのが…
YSK e-com
根本陽平さん
スマートグラスでシャインマスカットの育成を手助けするシステム。
このスマートグラスで行うのは粒を間引く作業です。
AIが画像を解析することで間引く粒を判断。糖度が高く、形の良いブドウが育つといいます。
YSK e-com
根本陽平さん
海外の安いシャインマスカットよりもより大きくて糖度が高い。
山梨毛のシャインマスカットということで勝負はできる。
世界で戦うためにいま競争力を高めることが求められています。