中国の都市部で爆発的な広がりを見せるシェア自転車。
その数は実に2,000万台に迫る勢いといわれています。
スマホで簡単にカギを開け、どこにでも乗り捨てられる手軽さから生活の足として半ば定着しましたが、その裏で歪みも見えてきました。
シェア自転車ビジネスでいま何が起きているのでしょうか?
酷騎(クーチー)
北京支局の山口博之記者、
北京中心部に程近いビルの前に数百メートルに及ぶ長蛇の列が出来ています。
行列のそばには警察車両。物々しい雰囲気に包まれています。
何をする!手を出すのか!?
そっちこそ何をするんだ!
デポジット(保証金)を返さない!そっちが人を殴っているじゃないか!
警察だと知ってやっているのか?さっさと並べ!
多くの人を怒らせていたのはシェア自転車サービスを展開していた酷騎(クーチー)を運営する事業者。
利用するために必要な保証金は約5,000円。
資金繰りが厳しくなった経営者が保証金を返還しないまま行方をくらまし騒ぎになっていたのです。
利用者、
経営者はすでにここにはいない。300万元(約5,000万円)の借金があるらしい。
シェア自転車ビジネス
シェア自転車ビジネスブームの中でピーク時には中国全体で60社を越す事業者が乱立。
しかし多くは資金繰りに窮しユーザーから集めた保証金をそのまま運営資金に回したりする、まさに自転車操業の赤字経営でした。
このため中国東京は2017年8月、保証金を投資や運営に使うことを禁じ、結果的に倒産が相次いで淘汰が進みました。
勝ち残ったのは「ofo(オッフォ)」と「モバイク」の2社。市場の9割以上を占めることに成功しました。
しかし、
バス停の回りに半ば囲むように大量のシェア自転車が置かれています。
街中では至る所でシェア自転車が溢れ返り、歩行者や車の妨げになっている光景が珍しくありません。
シェア自転車サービスが本格化してから1年余り、早くも大きな社会問題として政府は新たに投入できる自転車の数に制限をかけるなど規制を強めています。
これに伴い、激しい浮き沈みを経験した人たちもいます。
中国自転車産業基地
天津郊外の街に行くと、「中国自転車産業基地」と示された大きな看板が…。
ここは自転車王国、中国を支える最大級の生産拠点です。
しかし平日にも関わらずひっそりとしています。
「職員はいるか?」
警備員は、
私以外に誰一人ここにはいないよ。
「工場には何か残っているか?」
何もない。
別の工場の一室には破綻した事業者のシェア自転車が置かれています。
この青い自転車は倒産した事業者のものだな。
シェア自転車を中心に製造していた工場はみんな潰れた。すべてキャンセルになってしまい生きるのが大変だ。
加熱する自転車ブームによって一時は何十万台という自転車や部品を製造したものの発注した事業者が次々に倒産してしまったのです。
専門会の意見
急速な淘汰によって一気に冷え込んだように思えるシェア自転車ビジネス。
中国事情に詳しい専門家はひとつの事業が成熟するまでのスピードを指摘します。
丸紅(中国)経済調査チームの鈴木貴元総監は、
シェア自転車が中国に登場したのが2016年、急拡大したのは2017年の春からだが、新しい産業が生まれて淘汰の局面に立つまで1年しか経っていない。ものすごい早いスピードでイノベーションが進んでいる。
オッフォとモバイクというシェア自転車の勝ち組は両社揃って世界に進出し、日本ではモバイクがLINEとの提携を果たしました。
鈴木氏は巨大な中国市場で実践を積んだ企業が中国発のビジネスとして日本市場に続々と乗り込んでくると強調します。
海外進出に向けて想定できる問題をすでに蓄積している。1年間で10億人の中でビジネスをやったというのは大きな強みだ。